第81話 兄貴たちからの報告
家の門を入ると、もうバカ騒ぎしてる声が聞こえる……どんだけ大声出してんだ、あいつら!
玄関扉を開けると、ワイワイ言ってる中
「あ――! 孝寿下手過ぎ! お前と同じチームになった時点で負け決定じゃねーかよ!」
「うっせーな! 俺の分まで悠真兄ちゃんが倒せよ!」
って声がハッキリ聞き取れた。ゲームでもしてんのか。へー、孝寿ゲーム下手なんだ。孝寿にも苦手なもんがあるんだな。
「ただいまー」
「あ! おかえり!」
「おかえり、統基!」
兄貴達と廉でゲームをしてたみたいだ。かなり白熱してたみたいでみんなテレビの前に立っている。コイツら全員来てくれたんだな。ありがとう!
「あ、そう言えば孝寿兄ちゃん来れないんじゃなかったの?」
「子供と奥さんが寝たから来た。俺もさっき来た所なんだよ。報告があってさー、統基が帰って来るの待ってたんだよね」
孝寿が一際嬉しそうに笑ってる。何だろ、いい報告みたいだな。
「何だよ、報告って」
孝寿の隣に立つ慶斗が孝寿の肩に肘をついて尋ねる。いつもの孝寿ならデカいからって舐めた態度してんじゃねーよって綺麗な顔でドSに睨みつける所だがニコニコしてる。
「2人目の子供ができたの! まだ妊娠が分かったばっかだから安定期入るまでパパには言うなって奥さんから言われてるんだけどさ、お前らには早く言いたくて!」
「おー! おめでとう!」
わっとみんなが拍手で祝う。孝寿、それでこんなに嬉しそうなのか! 奥さんと子供大好きだもんな。
「安定期って?」
「流産しにくくなる時期だよ。1人目の時、パパに妊娠報告したらすぐに祝いだって色々くれたから、万が一があった時に気まずいんだって」
へー、流産は聞いたことあるけど安定期なんて初めて聞いた。
「おめでとう、孝寿! 俺の子供と同級生になるな。俺も報告あるんだけどさ、バツ3決定した」
「は?!」
慶斗が笑顔でサラッと日本語のおかしなことを言う。
「お前……バツ3決定で俺の子供って、まさかお前また子供できて離婚して結婚する気じゃねーだろうな」
亮河が顔をしかめている。え? 離婚して結婚?! 慶斗は爽やかに微笑みながら汚く伸びた金髪をかき上げる。
「これが最後の離婚と結婚だよ。俺ついに真実の愛にたどり着いたんだ」
「信用ならねーわ! だったら子供できる前に離婚しろ!」
「何だよ、ユウまでー。俺にはおめでとう言ってくれねーのかよ」
慶斗が不満げな顔をしてるけど……
「え、奥さんじゃない女に子供ができたから奥さんと離婚して子供できた女と結婚するってこと?」
「平たく言うとそういうことだな」
「でこぼこに言うとどうなるってんだ! いい加減にしろ、お前は!」
「ケイ慰謝料と養育費で城建つぞ、マジで!」
うわー、このクズひでえ……。
「孝寿兄ちゃんの子供、あのクズの子供と同級生だって」
「本来めでたい話のはずなのに、慶斗がクズなせいで俺の子供のめでたさにまで泥を塗られた気分だわ。慶斗、蹴りたい」
「蹴って来いよ」
「孝寿お兄ちゃん! 赤ちゃんいつ生まれるの? 僕赤ちゃん抱っこしたい!」
廉が孝寿に抱きついた。孝寿が笑顔で廉の頭をなでる。
「気が早いなー、廉。まあ上の子もまだ赤ちゃんなんだけどな。離乳食終わったら俺1人でも面倒見られるだろうから連れて来よーか」
「人見知り終わったの?」
正月くらいの頃から会う度子供の人見知りで泣いた話してたけど。
「終わったのー。めげずに構い続けて正解だったよ。ママより先にパパって言ったんだぜ!」
「え? しゃべんの?」
「しゃべるって程でもねーんだけど、俺の方に来ながらパパーって言うの。動画見てよ!」
孝寿がスマホを出す。動画を見ると、パパってか、パパパパパパって単にパを連呼してるだけに見えるんだけど、孝寿そっくりの赤ちゃんが高速ハイハイしながら笑顔で近付いて来る。
「かわい!」
思わず叫んでしまった! めちゃくちゃかわいい! いいなー孝寿! 俺も赤ちゃん欲しい!
「かわいいー! この子連れて来てよ! 僕この赤ちゃん抱っこしたい!」
「おっしゃ、分かったー! 約束するよ、廉。俺1人でも面倒見られるようになったら絶対連れて来るよ」
「てか、嫁さんと一緒に明日連れて来りゃいいじゃん」
「へー。統基が比嘉さん連れて来たら俺も連れて来るよ」
げっ、やり返された! 嫌だよ、自分の兄貴達をこう言うのは何だけど、コイツら全員揃いも揃って顔だけはイケメンだ。ホストだから会わせたくないだけじゃなく、万が一心変わりされたら嫌すぎる! 普通の大学生の孝寿ですら叶に会わせたくない!
「嫌だ! お前らが先だ! お前ら全員嫁さん連れて来たら俺も叶を連れて来ることを考える!」
「叶?」
孝寿がキョトンとした。……へ? あ、そっか。孝寿は叶を比嘉としか知らんのか。そういやそうだ。俺ずーっと比嘉って呼んでたから。
「比嘉 叶か、統基!」
孝寿がすごい食い付きっぷりで俺の顔面に至近距離で迫って来る。お前の顔も急に近付かれると一瞬ドキッとするんだけど。
「そ、そうそう。比嘉 叶」
「お前……いよいよ二股か」
すっごく冷めた蔑むような目で今度は突き放してきた。いきなり痛い所突きやがるな、おい!
「いや、今度こそ絶対、終わらせる! 俺もう叶以外の女に指1本たりとも触れない覚悟!」
「へー、俺の予想が外れるかねえ。俺はお前からは終わらせられないって断言するけどな」
「やめてよ、孝寿兄ちゃんに断言されるとそうなりそうな気がしてくるんだから」
マジでやめてほしい。でも、孝寿の予想をも覆してみせる! 叶を裏切るような真似はもう2度とできない。俺の心情的にできない。どれだけ挑発されても絶対にできない。明日、早々に決着つけてやるぜ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます