最終話 "学年一の美少女で自慢の幼馴染が親友に寝取られたので復讐します!"

 あれから、六年が過ぎていった……。

 

 俺は無事に大学を卒業してサラリーマンになったわけだが……。

 

「優斗、産まれたよ……」


 そう、俺は夜空との子供を授かったのだ。


「パパ」と俺にしがみついてきた少女……いや、翔悟と夜空の子供。

「玲、お前の弟になるんだよ……」と俺は玲の頭を揺すった。



 あれは、全てが終わってからニ日後のことだった……。

 

 あの日、俺は夜空に呼ばれ家にやって来た。


「話って……」

「私、翔悟くんに無理やり犯されて子供できちゃった……」

 

 彼女はそう泣きながら言った。


「そっか……」


 あいつとの子供か……。

 いつの間にあいつは夜空と……。


 でも、まぁ、良かったんだと思う。

 だって、自慢の親友が好きだった人とヤれたんだもん。


 今思うとあの日の俺は壊れかけていた。

 そのせいか、このことに対して別に怒りなどなかった。


「おろす……」


 たしかにそれが一番良い。

 でも……。


「おろさなくて良いよ。俺たちで育てよ……」


 あいつの子供なんだ、俺が育てる責任がある。


「でも……」

「いいじゃん、きっとなんとかなるよ」



「なぁ、翔悟?」と俺は翔悟の墓に言った。


 もちろん、反応なんて返ってくることなんて無い。


 俺は赤ちゃんを見せつけて。


「これ、お前と夜空の子だよ。まさか、お前が夜空としたなんてな……でもさ、別に怒ったりしない。だって、今更怒ったってなんも変わらないもんな……」


 そうだ、過去は変えられない。

 だから……俺は……。


「この子の名前は【玲】。可愛いだろ?」


 だったら、俺の初恋相手の幼馴染の名前にすれば良い。

 その子が玲じゃなくても俺の中の玲になるから……。


「翔悟、お前の子はお前みたいな奴には絶対にさせない!! 何があってもだ!!」

「(優斗らしいな……)」

「え?」


 幻聴かもしれないでも、そんな声が聞こえた。


 そっか……。


「翔悟、俺はお前と出会えて全部が最悪だったけどよ、それでも楽しい時は楽しかったよ」


 俺はそう言うと翔悟の墓に背中を向けて去っていった。


 今でもこの判断が間違っていた。

 そんなことは思っていない。

 だって、殺したかった人の子供だ。

 変な愛着が湧いてしまったからだ──。

 


 ハァ……俺はため息を吐きながら一人、病院を出てある公園のベンチに座った。


 たしか……六年前にここで俺が初めて人を殴ったところだったな……。


 懐かしい。

 まさか、あの時に俺が夜空と結婚することになるなんて思っていなかっただろう。

 そして、俺が翔悟と玲二人を失うなんて考えていなかっただろう。


 そう思うと少し、胸が痛い。


 もし、あの時俺がもっと早くに気づいていれば何かが変わったのかな……。

 過ぎた話だ。

 そんなこと考えるな……。


 そんなことを考えながら一人下を向いていた。


 すると、そこに──。


「優斗く、ん……」


 聞いたことのある声。


「え? ……」


 俺は大きく目を開いた。


 昔の感じを残しつつ、モデルと疑いたくなるほどの女性。


 そこに居たのは……玲だった。


 俺たちはお互いに目から涙が溢れ出した。


「なんで、なんで、もう二度と会いたくなかったのに……」と両手で顔隠して両膝をつけ泣く玲。

「ほんとだよ、なんでいるんだよ」


 俺も両手で顔を隠して泣いた。



「ほんとに優斗くんだったんだ……」

「ほんとだね」


 俺たちは場所を変えてファミレスに来たわけだが……。


 とっても、気まずい。

 なんせ、元カノだ。 

 しかも、別れた理由が【親友に寝取られたから】。

 そんな彼女と二人とか……正直終わってる。


「優斗く……んは、私に怒らないんだね」

「え?」

「普通さ殴ったりするじゃん、だって、私、優斗くんにひどいことを……」


 なんだ、そんなことか。


「いや、むしろ感謝してる」

「え?」

「だって、あの時俺さ、玲と別れていなかったらほんとに好きだった人と付き合えなかったし、まさか結婚するなんてさ……」


 そっか……と下を向く玲。


「手紙……読んだ?」

「読んだよ。お前もあいつと出来てたなんてな……」


 四年前に突如、うちに来た手紙のことだ。

 何故、うちの住所がわかったのか分からないが……。


「ふふふ、そう♪」


 そう玲は笑顔で言った。


 なんだろ……このモヤモヤは。

 この懐かしいモヤモヤは……。


「玲……俺さ、もしあの時お前と付き合ってままだったら、もっと良い人生歩めたのかな?」

「何言ってんの? さっき……」


 俺は玲にキスした。


「え?」

「これで終わりにする……」


 そうだ、もうこれ以上はダメだ。

 ほんとに終わりだ。

 あの時、最後にしたかったこと──キスをした。

 でも、心は何故か満たされなかった。


「最後にさ、俺、こんな小説書いてみたんだ……」

「なになに……」


 俺はカバンから作文用紙を出した。


【学年一の美少女で自慢の幼馴染が親友に寝取られたので復讐します!】


「何その、やばそうな小説」と小馬鹿にする玲。

「もしさ、あの時、俺がもっと早くにお前とあいつの関係に気づけてたら……って考えて書いた妄想だけどさ……」

「変わらないよ、それでも私たちの運命は……」

「だよな……」と俺は笑顔で言った。


 きっと、俺と玲は結ばれないんだろう。

 それは、どんな世界でも……。


 だったら、ほんとの最後に……全て忘れるために。


「玲はこの後暇?」

「うん……」


 そっか……なら。


「ホテルでしない?」


 あの時、玲と別れる時に一番したかったこと。

 それは、ヤることだった。


「うん!」と玲は泣き目で笑顔で言った。


 もし、あの時、俺が玲を救うことができた方法は無かったのか今でも偶に考えてしまう。



『優斗くんへ。

 久しぶりだね、こうやって手紙越しだけど許してね。突然だけど、私、翔悟との子供がいるの。名前は【優斗】。ふふ、可愛いでしょ? 私のだーいすきな人の名前なんだ!! ……私ね、ずっーと後悔してる。なんで、快楽に負けたんだろって……。そして、もっと優斗といたかったって。だから、またいつか会うことがあったらその時は声をかけるね。』


         ーendー


【元学年一の美少女で自慢の幼馴染は元カレ(俺)を寝取り復讐します!】へ続く──。


───────────────────────


【後書き】


 本作を最後まで読んでくださった皆様、ほんとにありがとうございます。

 ちょうど三ヶ月前ぐらいからこの作品を書き始めた訳ですが、ここまでやってこれたのは皆様のおかげです。

 ほんとにありがとうございました!!

 最後にお願いです。


【⭐︎⭐︎⭐︎をお願いします!!】

 

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