第二十九話(翔悟視点)

 夜空さんとの行為はあっという間だった。


「ほんとさ、俺が多分間違っていたよ……夜空さん……」

「夜空でいいよ」

「よ、夜空……」


 やっぱり、夜空は天使だな。

 ふん、これでどうだ? 優斗……夜空は俺の物になったぞ?

 今すぐでもお前が絶望に堕ちる姿を見たいよ。

 お前にはもう守るものなんてないしな……。

 それとは別に俺には葵と夜空がいる。


 そう思うと、すごくワクワクした。


「ねぇ、夜空……」

「ん?」

「俺さ夜空としているのを優斗に見せつけたいんだ……」


 そうだ、そうすれば優斗はもっと絶望するだろう。


 俺がそう言うと夜空は次の瞬間……。


「はははははは」と奇妙に笑い出した。

「え?」


 なんで笑えんだ……?

 そうか、やっぱり夜空も俺側に付いてて優斗が消える嬉しいんだ。


 夜空はしばらく笑った後……涙を手で拭いて。


「ごめん、優斗くんじゃないけど……」と夜空は俺にスマホの画面を見せた。


 そこには、泣いている葵が……。


「え? ……」


 葵はこちらの様子に気づいたか画面に近づいて。


「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す……」と俺を睨んだ。


 え? ……これってどうなってんの?


「なになに、その顔。やっぱり、翔悟ってバカだよね。こ・れ・は!! 今までのことをスマホから葵さんが見てたって事だよ? 翔悟くん『葵のより気持ちい』とかバカみたいなこと言ってた笑いかけたよ」

「え……………」


 頭が真っ白になった──。


 夜空は俺にスマホを近づけた。


「だから、あなたは私に騙されたわけ。葵さん? 翔悟くんのこと好き?」


 夜空がそう言うと葵は俺を睨んで。


「殺す」


 そう言うと葵は通話を消した。


「どう? 私として楽しかった? 私は楽しかったよ?」

 

 やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ。


「ねぇ、無視? ねぇ?」


 こいつは、悪魔だ……。


「これ以上、俺に近づくな……」

「へぇ、そんなこと言うんだ。なら、この動画をみんなに送ろーっと。音声を消せば完全に翔悟さんが私を無理矢理犯してるみたいになるからね」


 終わった……。

 俺の大切なモノを二つ一気に失った……。

 一つは葵。

 そして、もう一つは夜空……。

 まぁ、最後に好きな人とできてよかった……。


「自殺するのはダメだよ?」


 夜空は俺の心情を読み取ったかのように言った。


 俺はその場で凍りついた。


「なんで、俺の心が……」

「それは、私も一度体験したことがあるからかなー。にね」

「え? ………」


 なんでこいつが知ってるんだ……あの黒幕が俺である事を……。


「そんなの、に聞いたからね」

「そういうことか……」


 俺はその場で両膝をつけて。


「"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ」と叫んだ。


 気づけば涙が流れていた。

 喉がはち切れそうだった。


 ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう……。


「まぁ、翔悟さんは弱いし一人じゃ死なないよね?」

「お前に何がわかるんだよ!?」

「へぇー、そんなこと言うんだ。なら、今ここで死んでよ……」と俺にカッターを渡す夜空。

「え?」


 夜空は俺を見ながら笑っている。


「ほら? 早く死んでよ……」


 無理だ……。


「ねぇ?」


 俺には出来ない……。


「ほらね? やっぱり、君じゃ無理だよ」

 

 そう言うと夜空はニヤリと笑った。



「玲──ッ!! 目を覚ましたらしいな!!」

「えっーと、君は誰ですか?」と目を細くして俺をみる玲。


 やっぱり、記憶喪失なのか……。


「俺だよ、優斗……絶対に翔悟を地獄へ送ってみせる!」


 そうだ、俺が絶対にあいつを……。


「お前が堕ちろよ」とボソッと言う玲。


 今なんて……。


「だからさ、俺が──」と玲に近づくと玲は俺を睨みながら。

「お前が地獄に堕ちろって言ってんの? 私を犯しておいて……よくそんなに普通にいられるね。私が退したら、あなたに絶対に復讐する……」


 どうなっているんだ?


 理解が追いつかなかった。


「嘘だろ?」


 しかし、彼女は俺を強く睨んでいた。


 嘘じゃないのか……。

 だとすると……心当たりは……。

 翔悟あいつだ。

 あいつが、何かを吹き込んだんだ。


「そうか、絶対に救うから……」と俺はニコッと言って病室を出た。


 あいつ、俺の彼女を味方にしようとしやがって……殺してやる……。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る