第十話(夜空視点)

「俺と翔悟の事じゃない……?」とホッとする優斗くん。


 その後、私は優斗くんに昨日の出来事を全て話した。

 何故か、話していくとどんどんと心の中にあったモヤモヤが消えていき、体が楽になった。


「ちょっと、夜空さん。スマホ貸してくれ」と優斗くんは険しい顔で言った。

「な、何で?」

「その、夜空さんの元カレにひと言言いてェからさ……だからさ……」


 私はコクリと首を縦に振り優斗くんに私のスマホを渡した。


 きっと、今の私には何もできない……だから優斗くんにやってもらおう……。

 そんな甘えが出てしまった。


「別に優斗くんは私にどうこうしたところでなんのメリットもない……なら、なんで私を助けようとするの?」


 別に私なんて助けたところで何も価値がない。


「そんなのメリットだらけじゃねぇかよ……夜空さんに楽しい高校生活を送って貰えるしさ。なんだろ……やっぱり、俺おかしいんだよなぁ……自分で言うのもアレだけどさ、俺ってさ昔から自分の幸せより他人の幸せの方が好きなんだわ……」と爽やかそうな顔で話す優斗くん。


 やっぱり、優斗くんは優しいなぁ……。

 私の幸せか…………………。


『それは、今こうして優斗くんと一緒にいられる事だよ……』


「別に変でも何でもないよ……私を助けてくれてありがとね……」


 それと同時に目からは大量の涙が流れ落ちた。


 それは辛いからではなかった。 

 ただただ、嬉しいからだった。

 誰も助けてくれなかった中学時代。

 でも、今は違う。

 今の私には助けてくれる人がいる……。


「まだ、なんも俺はしてねぇぞ?」


 うんうん、優斗くんは私がここにいるだけで私を助けてる……。


「うんうん、優斗くんはもう私に色々してくれたよ……」と私はニコッと笑顔で言った。

「そ、そうか……」と照れているのか顔を赤くする優斗くん。


「でも、まだ俺が夜空さんを助けるのはこれからだぜ……」

「え?」


 すると、優斗くんは私に私のスマホの画面を向けた。


「え?」


 その画面を見た瞬間に驚きのあまりそう声が出てしまった。


 そこには……。


 夜空『9時に公園に来れる?』

 秀『うんうん、来れるよ? ちなみに、ゴムはお前が用意しておけよ』


 その一言を見た瞬間に私はその場で嘔吐した。


 なんで……どうしてこの人は私を性目当てでしか見てないの……。

 

「こいつ、ほんと気持ち悪いな。よく、夜空さんはこんなやつと付き合ってたな」と私が苦しんでる中ヘラヘラと言う優斗。


 全くだ……なんで私はこんな人と付き合ったんだろ……。

 

 そう思うと過去の自分への憎しみが湧いた。


「まぁ、そうやって居られんのも今のうちだけどな」

「え?」

「夜空さん。ようは、あいつをボコボコにして振ればいいんだろ?」

「……?」


 何を言っているのか理解できなかった。

 いや、理解をするのが怖かったーー。

 なぜなら、それをするには元カレと会わなければならない。

 その恐怖が怖かった。

 なんでそんな事を勝手にするんだ……。


「なんで……なんで勝手にそんな事をするの……私が元カレと会いたくない事をわかってて……それでも、私は元カレと会わなければならないの? なんでそんな事するの?」


 私の為だってことはわかってる。

 私がいつかは向き合わなければならないことだってことぐらいわかってる。


「そりゃぁ、いつまでもそうやって居たら成長しないからに決まってるだろ?」

「もう、いい……私は成長しなくて……」

「大丈夫だよ……俺がいるからさ……」


 そして、優斗くんは指切りげんまんを求めるかのように私に小指を向けた。

 私はその小指を私の小指で絡めた。

 

「約束だ。俺が夜空さんを守る……」



 私と優斗くんは約束の公園はやって来た。


 私たちが着いた時にはまだ元カレはいなく人気もなかった。


 何故か、あれから心臓がドクンドクンと鼓動が増すばかりだ。

 なんだろ……この気持ちは……。


 そして、元カレが来た。

 

「よぉ、何だ何だ? 夜空? しっかりゴム持って来たか?」とポッケに手を突っ込んでこちらに向かってくる元カレ。


 それと同時に恐怖のあまり震える両足。

 私は優斗くんの袖を掴んだ。


 頑張るんだ私……。


「ん? 男いんじゃっーーーー」


 次の瞬間、優斗くんは近づいて来る元カレの顔面を思いっきり殴った。


 そのまま、勢いよく地面に転ぶ元カレ。


「い、痛ぇなぁ……何すんだよ?」と鼻血を袖で拭きながら立ち上がる元カレ。


 そして、「警察にチクッたらどうなるかなぁ〜」と優斗くんに近づきながら言う元カレ。


 次の瞬間、優斗くんは元カレの襟を掴んだ。


 そして、怒鳴るように「ふざけんのも大概にしろ!! 警察にチクッたらどっちの方がどうなると思う?」と言う優斗くん。

 

 優斗くんにビビる元カレ。


「はぁ? そ、そんなの……お前に……なぁ? 夜空」


 元カレから話を振られた瞬間に身体が石のように固まった。


 言うんだ……私……「別れる」って……。


「なぁ? 夜空? お前の大好きな俺とまたできるんだぞ?」


 別に大好きなんかじゃ無い……たしかに中学の時は大好きだった……でも今は……。


 私は元カレの前まで勇気を振り絞って歩く。


「な?」


 優斗くんが元カレの襟を話した瞬間、私は元カレの襟を掴んで言った。

 

「何言ってんの? 私は貴方のことが大嫌い……もう二度と私に近づかないで」


 そして、私は元カレの襟を握るのをやめた瞬間バランスを崩して元カレは無様に転んだ。


「そういうことだ。もう二度と夜空さんの前に現れるな……次現れたら警察に言うぞ?」と元カレを睨む優斗くん。


 ひぃいぃっとその姿に恐怖のあまり驚く元カレ。


「なぁ、夜空……なぁ……」


 私はそれを無視して優斗くんと歩く。


「これで、あいつはもう夜空さんに関わらないだろ……」

「スカッとしたよありがとね……」と私は笑顔で言った。

「いや、夜空さん自身の力だよ……」

「そんなことないよ……私が、過去と向き合えたのは……」


 あれ? 自然に話せてる……。


 そして、私は気づいた。

 この心臓の速さは……"恋"だと……。


 サヨナラ、これでやっと私は解き放たれる……あの日から……。




 


 

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