第五話

 それからというもの、優斗くんとはペンギンの話を学校でも家でもするようになった。


 ダメだとはわかっている。

 でも、やはり体だけは理解してくれずについ優斗くんと喋ってしまう。

 優斗くんと話すのは何故かとても癒される。

 気づけば、学校が怖く無くなっていたというほどにだ。

 玲さんはほんとに幸せ者だと思う。

 

 そんなある日のことだったーー。


『これに一緒に行かない? (玲からは許可取ってます)』


 そう、優斗くんからLINEが来た。


 私は優斗くんから送られてきたURLを開いた。


 その内容は静浜水族館でペンギンと触れ合えるイベントというものだった。


 正直とても嬉しい。

 ペンギンと触れ合えるなんて……そして、優斗くんと2人なんて……。

 でも、このイベントに2人で行くということはもうデートのようなものだ。

 優斗くんとは友達? だとは思っている。

 でも、友達だからと言って男女2人でこんなところに行くことは玲さんに失礼な気がした。


 私は『ごめん! 流石に玲さんに失礼な気がするから遠慮するよ』と打った。


 これを送れば、いいんだ……。


 しかし、体が【送信】ボタンを押させてくれなかった。

 どうしても、押そうとしても体が動かなかった。


 やっぱり……私………そうだよね……。


 私は先程の文章を消して『え!? ちょー行きたい! ペンギンと戯れれる(*≧∀≦*)』と送る。


 やっぱり、私は悪い人だ……。

 そうやって、玲さんの彼氏とデートするなんて……。

 でも、優斗くんが誘ったから優斗くんが悪いと心の中では思っていた。

 私にはなんの罪もない……はずだ……。

 

『じゃぁ、行こ! いつまでだ……って! 今週の日曜日まで!?』


 日曜日ということは……。


「えっ!? 明日ぁ!?」と私は8時にも関わらず大声で驚く。


『明日までじゃん!! ((((;゜Д゜)))))))』

『やっば……俺は行けるけど、夜空は?』

『うーんとね……今、確認します』


 明日か……。

 どうしようかな……。

 別に明日何かあるというわけではない。

 ただ、心の準備ができていないだけだ……。

 でも、もう2度とこんな距離を縮められるチャンスなんてないはずだ……。って、私のバカぁ。

 

『行けますね!』


 どんどんと私は優斗くんを好きになっていっている気がする……。

 このデートで優斗くんとの縁も最後にしよう……。


『じゃぁ、明日駅前に10時集合でいいか?』

『わかった! 楽しみにしてるね』


 ふぅ〜とため息を吐きつつ、私はベットに横になる。


 その後、私は昔のことを思い出した。

 昔、元カレとデートに行った時のことを。

 元カレと私は好きなものが合わなかった。 

 私はペンギンが好きなのに対して元カレは猫が好き。

 私は性欲が少ないのに対して元カレは性欲が多かった。

 そのせいか、いつも私にキスを要求していたほどにだ。

 その元カレのせいで、私の中学生活は壊された。

 もし、優斗くんも元カレと同じだったらーー。

 そんなことを思うと、突如吐き気に覆われた。


「うっ……」と私は口で抑えながらトイレに行き、そこで嘔吐した。


「うぇっ、うえっ……」


 中学のトラウマが頭の中をよぎる。

 その度に気持ち悪くなった。

 

「はぁはぁ……ねぇ、優斗くん…………優斗くんは元カレみたいに私を見てないよね……」

 

 そうであってほしい。

 また、私を1人にしないでほしい……。

 私にとっての優斗くんは太陽そのものなのだから。

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