第四話

「夜空さん、その消しゴム……」と優斗くんは、私の消しゴムを指差す。

「あ、これ?」と私は優斗くんに消しゴムを見せた。

「その消しゴムって、ペンギンのぺんちゃん……」

  

 どうやら、このペンギンのことを知っているようだ。


 う、嬉しい……。


「えっ! 知ってるの?」


 ペンギンのぺんちゃんは、かなりのペンギンマニアしか知るはずがない……ペンギンの専門店のマスコットキャラだ。

 そんなのを知っているはずがない。

 きっと、SNSで知ったぐらいだろう。

 それでも、ぺんちゃんを知っているということがとても嬉しい。


「知ってる! 俺、ぺんちゃん好きなんだよ」


 彼の目は嘘をついているようには見えなかった。

 ほんとに、ぺんちゃんを知っているんだ……。

 

「え! ほんと? 私もぺんちゃんだーい好き」と私は笑顔で言った。


 ぁあー、私ってこんな顔できるんだ……。

 久しぶりなはずなのに初めて、こんなに笑顔な顔をした気がした。

 きっと、私がそう思ったのも全部、優斗くんのおかげなんだろう。


「俺さ、ペンギンの可愛い写真持ってるんだ。写真送りたいから、LINE交換しよ!」


 その言葉を聞いた瞬間に、嬉しい気持ちの反面罪悪感を感じた。

 そんな理由で、女子とLINEを交換する優斗くんを見る玲さんの気持ちになると、いけない気がした。

 でも……。


「え!? いいの!?」


 私ってほんとに悪い人だ……。

 男とLINEを交換したのは、中学2年生以だからだろうか、とても嬉しいかった。


 こうして、私は優斗くんとLINEを交換した。

 

「今送るよ」

「うん……………」


 ペンギンの写真を貰ったらブロックしよう。

 きっと、それが私にとっての善だ。


「あ〜、可愛い〜」


 優斗くんから送られてきたペンギンの写真は、氷の上で寒がっている写真だった。

 とても愛らしく、可愛かった。


 しかし、そんな幸せな時間は長くは続かず。


「でしょ? それでさ、このペンギンって……」


 そこに、「あのさ、優斗?」と玲さんが来た。


 幸せな私を憎む神様からの私への罰なのだろう。

 でも、よかった……玲さんが来てくれなかったら……。


「ん? どうしたんだ玲?」と優斗くんは少しだるそうに言った気がした。


「う、うん、なんでもないよ。放課後一緒に帰ろうね」


 近くで玲さんを見て改めて思った。

  "キレイ"だと。

 こんな、キレイな人が彼女で優斗くんは幸せなんだろうなぁ……私では玲さんには勝てない……。って、私何考えてんの……。

 最近の私は何かおかしい気がする。


「当たり前だろ?」


 その言葉を聞くと玲さんはニコッと笑い、席に戻っていった。

 

「ふぅ〜、行ったか……」と優斗くんはボソッと言う。

「ん?」

「いや、なんでもない……それでさ、このペンギン…………」

「トイレに行ってくるね……」


 そう、私は逃げるように教室を出て行った。


 これ以上はダメだ……このままでは、優斗くんのことが好きになってしまう。

 そんな気がしたからだ。

 優斗くんには玲さんがいるんだ。

 玲さんのためにも優斗くんと話すのは最低限にしよう。

 

 私はトイレに着くと、スマホを出して優斗くんをブロックしようとLINEを開いたーー。

 しかし、私にはそんなことができなかったーー。

 いや、正確に言えばできなかったんじゃない。やろうとしなかった。

 ダメだとわかっている。

 心の中では理解している。

 でも、体は理解してくれない。

 そんな私は、"おかしいのかな"……?



 

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