11 彼女とその後
「送ってくださり有難うございました」
大きなマンションの玄関の前で、立花はぺこりと頭を下げる。
「ああ、どういたしまして。またな」
俺は手を振って、来た道を帰った。
立花の家はとても大きなマンションで、俺が住んでいる近くのマンションで一番大きいのかもしれない。
立花には聞かなかったが、あのマンションには立花の両親がいるのだろうか。
色々と気になるが、もう自ら地雷を踏みに行かない。
もうあんな顔をさせるわけにはいかないのだ。
一緒に歩いている途中だって、話すことが無くて無言だったけどしょうがない。
今日は色々と疲れたし、立花の料理を食べて、勉強してさっさと寝ることにしよう。
家に帰った俺は、冷えてしまったがとても美味しかった立花の料理に満足した。
俺はそのあと勉強をして、風呂に入りそのままソファーで 一回休むか と思い目を瞑ったら寝落ちした。
ちょっと休憩、と思って目を瞑って気づいたら朝だった、ってよくあるよね。
☆
それから四、五日は大した変化はなかった。
一つ挙げるとすれば、立花を家まで送るせいで料理が冷えることくらいか。
別にそれで立花を守れるなら大したことではないのだが。
立花の料理は冷えても美味しいしな。
俺は立花が持ってきてくれるタッパーを、何時ものように洗っていた。
なんだか最近サイズが大きくなってる気がする。
まあ食べ盛りの高校生だし、多いに越したことはないのだが、なんだか無理をさせているようで悪い。
今度なんかお礼しなきゃな。
そう思いタッパーを水切りかごの上に置いた。
さて、勉強をするか。
そう思い床に座布団を敷いて、机をこちらに寄せる。
鞄から教科書とノートを出し、明日の内容を予習する。
何時もは国語から勉強するのだが、なぜか文章が頭に入ってこない。
それになんだか眠たい。
なんだかやる気も出ないし、今日は早めに寝るか。
俺は勉強道具をそのままにし、布団に入った。
布団に入ると意識はすごい勢いで遠のいていった。
☆
朝、目覚まし時計が鳴る。
何時もは寝起きは良い方なので、誰もいないのに おはよう と言って勢いよく起き上がる。
だが今日はなぜか体が動かなかった。
学校に行かなければならないため、無理やり起こそうと意識を覚醒させる。
敷布団のあたりが水っぽいのに気が付いた。
不思議に思い、布団の上で手を動かし感触を確かめる。
俺は全身汗びっしょりなのに気が付いた。
なんだか喉も痛い。
体も熱いし…。
「もしかして…」
俺は風邪を引いたらしい。
俺は無理やり体を起き上がらせ、実家から持ってきた体温計で熱を測った。
その体温計には、三十八度八分と書いてあった。
俺は学校に電話をすることにした。
学校に電話をすると、担任の先生が出てきた。
自分が風邪であり、学校を休むと伝えた。
先生も心配してくれて、また後日放課後に授業の内容を教えてくれるらしい。
固定電話をもとの位置に戻し、濡れたままの布団にまた入る。
また意識が遠のいていった。
☆
気が付けば外も暗くなっていた。
一度昼に起きたが、何も食べず水をたくさん飲み、また布団に入った。
時間的には立花が来る頃。
今日立花来るかなあ。
でも来たら風邪を移してしまうし、困ったな。
そんなことを考えていたら、いつも通りインターフォンが鳴った。
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