11 彼女とその後

「送ってくださり有難うございました」


大きなマンションの玄関の前で、立花はぺこりと頭を下げる。


「ああ、どういたしまして。またな」


俺は手を振って、来た道を帰った。


立花の家はとても大きなマンションで、俺が住んでいる近くのマンションで一番大きいのかもしれない。


立花には聞かなかったが、あのマンションには立花の両親がいるのだろうか。


色々と気になるが、もう自ら地雷を踏みに行かない。


もうあんな顔をさせるわけにはいかないのだ。


一緒に歩いている途中だって、話すことが無くて無言だったけどしょうがない。


今日は色々と疲れたし、立花の料理を食べて、勉強してさっさと寝ることにしよう。




家に帰った俺は、冷えてしまったがとても美味しかった立花の料理に満足した。


俺はそのあと勉強をして、風呂に入りそのままソファーで 一回休むか と思い目を瞑ったら寝落ちした。


ちょっと休憩、と思って目を瞑って気づいたら朝だった、ってよくあるよね。





それから四、五日は大した変化はなかった。


一つ挙げるとすれば、立花を家まで送るせいで料理が冷えることくらいか。


別にそれで立花を守れるなら大したことではないのだが。


立花の料理は冷えても美味しいしな。


俺は立花が持ってきてくれるタッパーを、何時ものように洗っていた。


なんだか最近サイズが大きくなってる気がする。


まあ食べ盛りの高校生だし、多いに越したことはないのだが、なんだか無理をさせているようで悪い。


今度なんかお礼しなきゃな。


そう思いタッパーを水切りかごの上に置いた。


さて、勉強をするか。


そう思い床に座布団を敷いて、机をこちらに寄せる。


鞄から教科書とノートを出し、明日の内容を予習する。


何時もは国語から勉強するのだが、なぜか文章が頭に入ってこない。


それになんだか眠たい。


なんだかやる気も出ないし、今日は早めに寝るか。


俺は勉強道具をそのままにし、布団に入った。


布団に入ると意識はすごい勢いで遠のいていった。





朝、目覚まし時計が鳴る。


何時もは寝起きは良い方なので、誰もいないのに おはよう と言って勢いよく起き上がる。


だが今日はなぜか体が動かなかった。


学校に行かなければならないため、無理やり起こそうと意識を覚醒させる。


敷布団のあたりが水っぽいのに気が付いた。


不思議に思い、布団の上で手を動かし感触を確かめる。


俺は全身汗びっしょりなのに気が付いた。


なんだか喉も痛い。


体も熱いし…。


「もしかして…」



俺は風邪を引いたらしい。



俺は無理やり体を起き上がらせ、実家から持ってきた体温計で熱を測った。


その体温計には、三十八度八分と書いてあった。


俺は学校に電話をすることにした。


学校に電話をすると、担任の先生が出てきた。


自分が風邪であり、学校を休むと伝えた。


先生も心配してくれて、また後日放課後に授業の内容を教えてくれるらしい。


固定電話をもとの位置に戻し、濡れたままの布団にまた入る。


また意識が遠のいていった。





気が付けば外も暗くなっていた。


一度昼に起きたが、何も食べず水をたくさん飲み、また布団に入った。


時間的には立花が来る頃。


今日立花来るかなあ。


でも来たら風邪を移してしまうし、困ったな。


そんなことを考えていたら、いつも通りインターフォンが鳴った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る