10話

思いもしなかった事実に僕の低レベルな脳が理解するまでに時間がかかる、というよりも理解できていなくて、フリーズしてしまった僕にジョーは言う。


「まぁ結局のところ、ユサが神だったから何かっていう事じゃなくて、

 ただ単純に私が予想していたよりも、ユサが果てしなく有能で伝説のものを創り出せるくらいの能力を持った子だっていう事。


 今すぐになにかっていう事でもないし、何かを出来るような事でもないから、ただユサは、自分の好きな事をして、そして周りの人を幸せにすればいい。

 ただそれだけ」


ジョーはそう言って、僕の頭を撫でた。

「ユサ、多分だけどこれから先

 色々君を苦しめるものに出会うと思うし、その都度君は苦しい世界で起き上がり、踏み倒され、また起き上がるっていう途方もなく辛い作業に突入していくだろう。


 でも、安心しな。これからは、私とミリーで守っていくから。

 誰がなんと言おうと、国に攻め込まれたって、私たちはユサを守るから。ね?」


「だから心配しないでね」

そう言って柔らかく笑ったジョーが、自分の本当のお母さんのように見えた。

こんなお母さんに生まれて来たかった。

こんな、温かい人に育てられたかった。


「え、ちょっ! なんで泣くの!??」

『ごめんなさいぃ~……ごまらせるっ、つもり、なくて~……』

「ちょっと待ちなさいっ? まずははい、涙拭いて、鼻かんで」

そう言って、俯いてテーブルの木目しか見えなくなった僕の視界に、綺麗で高そうな薄いピンク色のハンカチが差し出される。


『いいんですかぁ~? こんな高そうなやつぅ……』

「泣くな、泣くなら喋るな。早く拭きなさい」

『ごめんなさい……』


ジョーから貸された高そうなハンカチで鼻をかむ。


「もう大丈夫?」

『はい……あ、あと心配しないでください。僕ヒステリック入ってないので』

「いやそんな事心配してないわ」

『え? あ、心配してたのは、僕の精神状態じゃないの?』

「いや、もう涙は出てこないのかって事を聞いてる大丈夫だよ」


「どんな酷い家庭で育ったんだよ、本当」

ジョーの独り言は無視していると、ジョーがもう一度僕に向き直る。


「次はあなたにしかない魔力回路を操れるようになろうか?」


あなたにしかない

という言葉を不思議に思って、ジョーに訊くとまぁいつか分かるから。

そう言われて流された。



「ユサ、君は知らかったかもしれないけど、実はこの世界にいる人間で、魔力回路を操れる人間はそうそういないわ。

 だから治療師が重宝されるのよ。あの人達は簡易的な魔力回路を操れるからね」


『でも、さっきジョーは簡単に出来てたんじゃ……?』

「まぁそれは、私が魔力回路を解明した研究者だからね、簡単な事よ」

『へ……?』



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