9話


「なるんじゃな~い? 一回魔力こめて舞ってみたら?」

無責任そうに言ったジョーの言葉を真に受けて、僕は今まで一度もやった事のなかった魔力つきの舞踊を踊ってみた。


結果から言うと、普通にできた。

それも結構上出来だと思う。

「やぁ~、坊ちゃんよ。そんな簡単だったんだけどどうしよう……みたいな顔すんなって。

 すげぇ事だと思うぞ?」

いつの間にか隣に来ていたミリーが、僕の肩を軽く叩く。赤ちゃん扱いと手加減されてる感満載だけど気にしないでおこう。

『でもさ、なんか一回もやった事なかったのに、こんなに上出来って……』


そう、僕が言うと、これまたいつの間にか隣に来ていたジョーが言った。


「まぁ、魔力とか魔力回線とかは、まだやっぱり経験値がないから荒削りではあるけど、舞踊との相性は抜群だね。


 ユサの舞踊に、剣舞とかと組み合わせたら最強だと思うよ。私が魔術とか魔力回路の使い方を教えてあげるから、ミリーからは剣の使い方を教えてもらいなさい?

 分かった?」


『はいっ! これからよろしくお願いします!』

「良い声だ。これから頑張るんだぞ坊ちゃん」




ジョー行きつけの喫茶店で、僕はジョーから授業を受けていた。

ジョーは深い青色のふちのメガネをかけて、分厚い本を何冊か持ち込んでいた。

「こう見えて、一応魔術学校主席卒業なんだからエリートなのよ?」

と言ってジョーは幼すぎて理解できないであろう僕に、分かりやすいように具体的な例や、実際に見せてくれながら話した。



「まずは、魔力回路の仕組みからね。

 魔力回路っていうのは何かの素材に魔力回路として魔力を組み込むことによって発動されるの。

 例えば、治療師とかっていう治療系の人。あの人たちは魔液ポーションと呼ばれる身体や傷に浸透しやすい液体状の素材のものに魔力回路を組み込んで回復させているのよ。まずここまでは分かる?」

『うん、分かります』


「うん、理解が早い子で助かったわ。

 今から見せてあげるのは、魔力回路の仕組みを簡易化したものよ。一応色をつけてあるけど、分かりにくいと思うからしっかり見ててね」


ジョーはそう言うと、僕の額に右手を当てて「行くわよ」と言って目を閉じた。

何かが組み込まれていく感覚がして、僕の頭の中に、何かが浮かんでくる。

目を閉じると、完全には見えないけどイメージが頭の中で回っている。


「見えている? ユサ、あなたに見えてる?」

『ジョー、見えてます。見えてるっていうのか分からないけど……』

「上出来よ! 今頭の中に電気信号みたいなものが出来ているわね?

 青い光を放っていて、線が六角形になっていてそれが無限に続いてる?」

『はい! 所々で赤とか緑とか紫が見えます!』


そう答えると、ジョーは「もういいわ」と言って目を開けた。

僕も目を開けると、ジョーは神妙な赴きでそこに腕を組んでいた。


「ユサ、あなたは私が思っていた以上に天才だわ。

 この魔力回路は、普通の人には見えないのよ。そういえば、調べたんだけど、

 舞踊は、この国での神話の伝説を書き留めた文書に書いてあった。そのまま『舞踊』としてね。

 そして、その舞踊を踊れる人は一人しかいなかったらしいわ。その名も、

 『ユサ』あなたの事よ」


『えっと……?』

「簡単に言うと、あなたの生み出した舞踊はこの世に魔術や魔力をもたらした神様の踊りだったのよ!」

『え……』


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る