4話

数分経って、落ち着いたジョーさんは挨拶をしてくれた。

よだれが垂れてるのはそのままなんだけど……



ジョーさんは、

ここ、ギルド本社の所長をしているらしくて、裏で情報屋さんをやっている人らしい。ジョーで良いよと言われて、ジョーと呼ぶ事になった。



「で、ユサって言ったけど、家はどこ?

 引き取りたいから教えてくれない?」

ジョーが、受付のテーブルに腕をかけながら訊いて来る。

「いやお前さん、それは……」


ミリーが止めようと入ったところで、僕は本当の事を告げた。

『いないです』


一瞬にして、二人の動きが止まる。

もう一度、こんどはゆっくりはっきり、堂々と言った。

『いないんです、僕の家族。

 十歳になったら、ギルドでミッションをやって金を稼げ、そして帰ってくるなって小さい頃から言われてて。

 僕、今日で十歳になるんですよ。


 もしかしたら、捨てられた、って言った方が正しいのかもしれないですけどね』


ジョーが、心配そうに訊いて来る。

「お金とかは……大丈夫なの?

 なかったらいっぱいあげるけど……」


僕は、答えた。

それについてなら心配ない。僕は親の財宝を少し拝借してきたから。


『あ、それは大丈夫です。

 

 僕を生んでくれた憎いやつの貯金からお金もたんまりと拝借したし、

 あいつらの財宝から、一番高価で希少な物たちを寝ている間にそっと拝借してきたので、困った時には売ってお金にします。


 それに、生活用品もメイド達にこっそり頼んで生きていくために必要不可欠な物を揃えてもらいました。

 なのでそこらへんは心配いりません。

 お気遣いいただきありがとうございます』


そう言うと、ジョーは「良かったぁ~」と言って本当に安心した顔を見せた。

僕は気付かなかったが、僕の隣でミリーがこう呟いていたらしい。


「こいつ……強ぇ……」

その後に、自分が言った事が聞こえていないかと僕の顔色を窺ったらしいが、

あいにく僕は全然気づいていなかった。





「じゃ、ギルド登録をするね~。

 名前と、年齢と出身地、そしてジョブと能力だけがあればいいよ~。


 えぇ~っと……名前はユサっと……

 ユサ、名字はどうする? 今までのは使いたくないよね」

『確かに……』

「あ、これとかどう? ロレリアっていうのは」

ミリーが言う。

ジョーと僕は、同じ瞬間に顔を見合わせて言った。

「『いいじゃんロレリア』」

「そうしよう、そうしよう。それでもいい?」

『はいっ! 大歓迎ですっ!』


そう言って、キャッキャといいながら進めていく僕たちを見て、

ミリーは言った。


「え、俺には感謝ないの?」




「最後に能力だけど……

 今測定器が故障していて、ここになくて……


 ユサ、作物の栽培は出来る?」

『出来損ないって言われて教えてもらってません』


「じゃあ、裁縫とか料理とかは?」

『毎日うすいスープとパン一切れでした』


「じゃあ……魔術とか、鍛錬とかは?」

『無理です。栽培も教えてもらってないのに……』

「だよね……」


そう何かに納得したような顔でジョーは言った。

「はぁ……アンタを育てた親たちがクズすぎて呆れるわ」

『僕、一応あの人達と血の繋がりありますけど、

 あの人達が溺れて助けを求めてたとしても冗談抜きで助けないような気がします』


「やっぱそうだよねぇ……」

そう言って、ジョーは肩をがくんと下した。



「戦闘も出来ないよな……当たり前に……」

ミリーもジョーと同じようにそう言って肩をがくんと下げた。

「じゃあさ、何か得意な事とかないの?

 自分に出来て、他の人には出来ない……とか」


ジョーが訊いて来る。

僕の知る限り、そんなものは……



『あっ!』

「あったの!?」

「本当か!?」


ジョーとミリーが一緒に顔を覗いてくる。




僕……

僕は……っ


『僕、戦えないけど踊れますっ!』

「え?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る