2話


歩いた。

歩いた。

めっちゃくちゃ歩いた。


末息子が王都のギルドに行くと言ったとして、どれだけ愛していなくても銅貨十枚か馬くらいは用意するよね? それが人道っていう物だと思うんだ。

でも、うちは異常で馬車さえも用意してもらえなかったので、僕はひたすら歩いた。

あの異常な家で育ったために強靭になった僕の精神力と根性によって、

無事歩きで王都へと辿り着いた。


王都に着く頃には、僕の少ないお小遣いから買った、一番安くて新品だった靴の底は擦り切れ、与えられた三着の服の中で一番綺麗な服はよれてぼろぼろになっていた。


僕は思った。服装の替え一式持ってきててよかった~、と。




えっと……まずはギルドを探す前に、この靴をなんとかしないとな。

あと、めっちゃ貴重なお小遣いとか母さんから……

いや、今になってあの人のことを母さんって呼ぶほどの義理もないな。


今まで生まれた時から集めていた貴重なお小遣いの銀貨十五枚と、

あの人があつめてた裏の汚い金も頂戴して、

僕の今の全財産は金貨三枚と、銀貨十五枚と銅貨三枚。



まぁ、これくらいあれば一年は金に困らないだろうけど、

でも一年間ここで食い繋ぐのが僕の最終目標じゃないので、今は服装をちゃんとしてギルドに向かおう。


そう僕は頭の中で呟き、服の仕立て屋さんに行った。





『ふぅ……銀貨二枚で済むって、意外と物価安くなってきているのかな。

 あ、もしかして、さっきの仕立て屋さんが安かったとか……?


 いや、それはないよねぇ~……』

新品になって綺麗になった僕の姿を鏡で見た。

あいにく、あの美形でエリートな家系で、兄弟で一番顔が整ってたからなぁ……

なんか、どっかの良い家系のお坊ちゃまみたいだ。



『さぁ、ギルドに向かおうかな……』

あの憎い奴らが一緒に住んでいた家から静かに拝借させていただいた魔法盤プレートをタッチして地図を見た。


『意外と近いな……って』

僕は後ろを向いてそこの看板を確認する。


『ここがギルドじゃん! なんで後ろにあったの!?

 ってかなんで僕普通にギルドの前にいたのっ!?』


頭が混乱している。

まぁでも、無事にギルドに着く事が出来たって事でよかった。


ふぅ、と安堵のため息をついた所で、

身長の低い僕のところに大きな影がかかる。


「おぉ~、坊ちゃん何大声だしてんだ?

 もしかして、貴族なのに此処ギルドに来たのか?」

急に話しかけられて慌てて後ろを振り向くと、

そこにはいかにも冒険者っていう感じの筋肉ムキムキの男の人がいた。



『あ、僕農民です。ユサ・アリグールです。

 アリグール家の末っ子ですよ』

僕がそう言うと、一瞬考え込んだ後に「あぁ!」と大きな声を出した。


「あぁ。

 近所で末の男の子を愛してないっていう噂がある、

 アルグール家の末っ子……末っ子!? 君が!? でもまだ十歳のはずじゃ……」

『えへへ……まぁ、まだ十歳なんですけど、出て行けって言われまして……』


男の人は、

驚いたような顔で固まった。

そして、すぐに眉間に皺を寄せて怪訝そうにギルドの扉を開けた。

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