異世界ダンサー、始めました。(更新停止中)

新城ナル

chapter 1

特技は自分で開発した『舞踊』を踊ること。

1話

『僕、戦えないけど踊れますっ!』

「え?」

ギルドのど真ん中で、僕は叫んだ。





僕は、ずっと代々貧しい農民の家に生まれた。

上には三人の姉と六人の兄、いとこは二十人以上。

全員僕よりも年上で、みんなそれぞれに得意分野を持っていた。


僕と一番近い歳……(といっても二十歳上だが……)の人は僕が生まれたころには当たり前にもう成人済み。

それより上の人は当たり前にみな役職についていた。

僕のいる国は、あまり血筋は重要視されない。

差別も少なく、みんな公平だ。


そこらへんが、他の国とは違うと思う。農民でも暮らしやすい環境は常に存在していた。市役所や王家、国家に就く人もいれば、商人や行商人、冒険家や医者などもいた。

僕の家は数々の高い地位を獲得する農民の中でもエリート、貴族や国にもその名を知らしめた家だ。



僕の家系の人たちはみんな国などの国家機密機関に入っていた。

でも、あいにく僕は農家としての素質も、国に入るまでの学力も、騎士隊に入るほどの教養も戦闘能力もなかった。


あるのはただ一つ。

独学で勉強して開発した『舞踊スキュネ』と(自分で呼んでいるのだが)いう踊りだけだった。



そのおかげで、親からも兄弟からも見下されていたわけだが。

別に気にしない。

だって、みんながみんなこれを踊れるわけじゃないし、

幼いころ(大体僕は五、六歳くらい)から鍛えてきた筋肉や柔軟性がないとこれを踊るのは無理だ。



小さい頃から言われてきた。

「アンタってばどうせ出来損ないなんだから、十歳になったらギルドにでも行って金を稼ぎなさい。そうしたら、もうここには帰ってこなくてもいいから。

 逆にここに帰ってきてもらった方が迷惑だし。


 ギャハハハハハ!!」

と、母にも、父にも姉にも、兄にも。



だから、今日十歳になる僕はここの家を出ることにする。

逆にこんな家、こっちから願い下げだ!



『行きますね。

 今まで(毎日うっすいスープと一切れのパンを飽きずに与えてくれて)ありがとうございました。


 (もうこれで永遠に)さようなら』

「おぉ~、もうユサも卒業かぁ~餓死とかするといいな。そしたら土の中に埋めて上から唾吐いてやるからよ。

 ギャハハハハハ!」


僕は、顔に唾をかけられたまま一礼をして歩き出した。

ここから歩きでギルドのある王都までいったら本当に餓死してしまうが、

これからの将来に必要な書物や、困ったときには売って金になるような財宝も黙って持ってきたから行商人にでも売って食べつなごう。



そう思って、

まずはすぐ近くに流れている川の水で顔を洗って汚いものを洗い流した。



『さ、行こうか』

そう呟き、俺は歩き出した。

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