人は同時に二か所に存在することはできない。それは当たり前のことだった。
拡張現実によって現実世界とデジタル世界が重なって存在する近未来の街。
人々は仮想体「アバター」を操ることで幽体離脱のように肉体に縛られない存在となれる技術を手に入れた。
平凡な大学生「月村直紀」もデジタル世界を利用する一人だ。ある日彼は、デジタル世界の路上でバイト募集の貼り紙を目にする。そこには━
「完全歩合制、メッセンジャー募集中! 逃げ足の速い人歓迎!」
現実世界ではなくデジタル世界で、しかもメールや掲示板ではなく路上で貼り紙の告知…「どうみても怪しい」
そう思う直紀だったが、大学生である彼は時間を持て余していた。「金が稼げるなら━」と興味本位で連絡を取ってしまう。
求人主(のアバター)は以外にも怪しさは無く、若い女性だった。
「仕事の内容はゲーム内でアイテム取引の為に荷物を届けること」
そう言われて楽な仕事だと安堵した彼だったが、彼女はこう続けた。
「襲撃から守りながら逃げてほしいの」
やはり危険な仕事だったと後悔する直紀。
しかし、時すでに遅く。彼は大きな陰謀に巻き込まれるのだった!