第33話 応援
僕らが、移動してきた東地区は、商業区域だった。
ここでは、自警団が機能しており、火災の
僕らは、主に、人手が足りず救助が難攻している倒壊家屋からの被害者の救出と、現場で助け出された怪我人の治療を中心に救助活動を行っていった。
「お兄ちゃん、お父さんを助けて」
声のする方を見れば、そこにいた小さな女の子は、顔に
ふと、その女の子の指し示す方を見てみれば一人の男性が柱の下敷きになり動けなくなっていた。
ここでも、火が隣の家までせまっており、このままでは、柱の下敷きになっている男性は生きたまま火に焼かれ、そのまま焼け死ぬ運命を迎えるのを只、
そんな父親の状態を
そんな少女ではあったが、僕らが近づくと小さな女の子は泣きながら僕に
「私の所為で、お父さんが、お父さんが…、お願い、お父さんを助けて」
女の子から聞いた話では、倒れてきた柱から女の子を
倒れている男性は意識が
僕は水球を連発し、隣の家まで迫っていた火を鎮火させた。続いて、柱の下敷きに成っている男性の上に倒れ掛かっている柱を両手で持ち上げると、遥に倒れている男性を引っ張りださせた。
遥は倒れていた男性にすかさず
男性は意識が戻ると、盛んにお礼の言葉を述べていたが、僕はその男
性の言葉より、嬉しそうに僕にお礼を言う少女の笑顔が心に残った。
「僕達は、他にも多くの人も救わなければならない。僕達は聖女シルビアの指示で動いている。お礼は聖女シルビアへ行ってくれ」
とだけ言い残し、立ち去った。
「お兄ちゃんたち、ありがとう。お父さんを助けてくれて」
幼女のその言葉に僕の胸は温かくなったた。
ここでも、僕らは消火活動と
「ヨースケ殿、ハルカ殿」
聖女シルビアが東地区へ移動してきた。
「北地区は大丈夫そうでしたか」
僕は先ほどの北地区の状況を尋ねた。
「ゴーリキ男爵の助力のお陰で、取り敢えず北地区救援活動の人手が足りました。『街の平民をどれだけ助けるかで貴殿の進退が左右されるかもしれません。くれぐれも他の救助活動者の行動を阻害したと言われることのないことを願っております』と強く釘を刺しておいたので大丈夫でしょう。人手が足りない中でのゴーリキ男爵の助力は大きな力と成りました。これもきっと神の導きでしょう」
聖女シルビアのしたたかさに思わず、引いてしまう部分はあるものの、『災い転じて福となす』強引な手腕は、ただ聖女様と祭り上げられているだけの存在ではないのだなと、改めて、感心してしまった。
「シルビア様、マグダレナ司教の命で、聖女シルビア様の偉業のお手伝いを
命じられました。どうか、シルビア様と行動を共にすることをお許しください」
「キース司祭、よく来てくれました。ご助力感謝します」
「シルビア様、既に東地区の教会は避難所として、門戸を開き、負傷者の治癒を行っていると聞き及んでおります。どうか、我らにも神の
「キース司祭、有難う御座います。治癒術師が不足しておりました。また、治癒術師達を護衛する者も必要としていたところでした。これも神のお導きなのかも知れません。あなた方の深い信仰に感謝申し上げます。ご活躍を期待しております」
こうして、ミッシェルクラン教会の治癒術師と神殿騎士が聖女シルビアの一行に加わった。
「お嬢様、遅れてもうしわけありません。我らも、お嬢様のお手伝いをさせてください」
「セザンヌ、お父様はご存じなの」
「
「感謝いたします。お父様にも事が治まりましたら、お礼に伺いましょう。では、セザンヌ頼みますよ」
こうして、シルビアの実家であるクレスタ伯爵家の家臣団が聖女シルビアの臣民救済団一行に加わった。
僕らは、東地区もシルビア達一行に任せ、次は南地区へと移動して行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます