第29話 救出
「動くな。王女様を放せ」
闇夜の中、僕らの背後からアスタリア王国軍兵士の声が突然響く。
「
ネターニャ王女との打ち合せで、僕らがこの場所に現れることを、事前にジークハルトへ漏らし、王女の救出劇が展開されるよう策略を巡らしていた結果が今の事態となっており、更に、使い魔のクーからの索敵情報でジークハルト達の動きは、当然、把握していたのだが、取り敢えず、素知らぬ様子で驚いたふりをし問い掛ける。
「ネターニャ王女様を放せ」
僕の言葉を無視して、自分の主張だけを述べるジークハルト。王女様を前にして、余裕を無くしている様子が感じられる。
「王女の身の安全は構わないのだな」
僕は
「クッ、ネターニャ様。
悔しそうに、剣を握りしめながら声を上げるセレナ近衛隊長。
「ま、待て、ネターニャ様に傷を付けたら許さんぞ」
「『傷を付けたら許さない?』、今更、何を言っている。王女は
王女様が
「ネターニャ様に何てことを…」
驚きの声を上げるセレナ近衛隊長。
「ネターニャ様の髪が…」
「もう、何日も同じテントの中で一緒に寝たんだ。今日も、さっきまでは、王女様と遊ばせてもらったけどね。流石、高貴な方は反応が新鮮で楽しい。特に、彼女の、眼に涙を浮かべながら、悔しそうな表情を浮かべる彼女の顔は実に
僕は、トランプ遊びで、負けが込み、眼に涙を
ここで、何故か、ターニャ王女からも
『えっ、ここまで打ち合わせ通りですよね』
心の中で僕の思いを目線に混め、ネターニャ王女に向けるも、王女は口を
『トランプで、負けが込んだのがそんなに悔しかったのだろうか?』
「おのれ、ネターニャ様に何てことを」
ジークハルトの言葉に、僕は気を取り直し、次の言葉を発する。
「既に傷物の王女様だけど、どうする? もう、婚姻外交の道具としては使い物にならないじゃないかな⁉ 傷物王女など、誰もいらないでしょ! 僕がこのまま
「黙れ、王女様は私が一生お守りする。その上で、ネターニャ様のお許しが得られれば私が
「ジークハルト」
ジークハルトの熱烈な、プロポーズに近い言葉に、ネターニャ王女の眼から涙が
「ネターニャ様、ご心配には及びません。私が一生お守りします」
「ジークハルト」
ネターニャ王女から、歓喜の声が漏れた。
「賊ども、私のネターニャ様を放せ」
ジークハルトが声を張り上げる。
「分かりました。君のネターニャ様をお返し致そう」
僕はあっさりと、『君のネターニャ様』という部分を強調しながら、了解の意を示す。
「えっ、何と…」
自分の要求が通ったのに、何故か、思わず聞き返してくるジークハルト。
「分かったと行ったのだ。君の王女様はここで解放する。代わりに
「何を勝手なことを…」
「シュルシュル、シュー」
突如、僕達とネターニャ王女のいる辺りから煙幕が立ち上がる。
「ネターニャ様」
「ハルト」
煙幕から飛び出して来た王女がジークハルトに向かって、愛称で呼びかけながら、駆け込み、抱き着く。
「ターニャ様、よくご無事で」
ジークハルトも王女を愛称で呼び抱き締める。
「賊の確保を」
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