第14話 使い魔との連携

 使い魔を得たことによって、使い魔との連携が可能となり、戦術の幅が広がった。

 遥の使い魔クーにより空からの広範囲の索敵が可能になった。

 クーは索敵だけじゃなく、戦闘時も僕らの周囲の情報を随時取得し、遥とのパスを通じてリアルタイムに情報提供が受けられる。使い魔との間に繋がっているパスを使って相互に情報交換意思疎通が可能なのだ。更にクーの空からの急降下突撃は僕らの戦闘時の大きな一助となった。

 僕の使い魔ウルは空こそ飛べないものの、地を駆ける能力は高く、嗅覚や聴覚も秀でており、索敵能力も高い。クーとの連携による2面索敵は敵の接近を的確かつ事前に把握できるようになったほか、こちらからの迎撃の戦術が広がり、戦闘で苦戦することがなくなった。

 ウルは戦闘面でもその能力は高く戦闘時に相手方に突撃を仕掛け、敵を撹乱させ、その後の戦闘が有利な展開へ運ぶのに大きく貢献するなど役に立った。


 使い魔と連携を密にすることにより、全体的な戦闘時間が短くなっただけでなく、獲物の量も格段に増えた。増えた分は異空間倉庫でストックし、城へ持ち帰る量は今までと同じに成る様に調整した。


 僕らはこの森の奥まで行けるようになり、この森に住むどの魔物とも引けは取らないようになっていたと思っていた…


「ウル」

 おかしい、ウルが帰ってこない。


「遥、ウルが帰ってこない。クーに辺りの様子を探らして」

「分かった。クーお願い」

 クーが飛び立ち周囲を旋回する。


「ピュー、ピュー、ピュー」

 クーのカン高い鳴き声が響き渡る。危険を知らせる鳴き声だ。

 僕らは武器を掲げ身構える。

 突如として、前方に殺気が膨れ上がる。

 大きな狼が突如現れ、咆哮を上げる。


『う、身体が動かない』

 遥が心配になり、振り向こうとするも身体が動かない。

『遥』

 声も発することができず、頭の中で遥に呼び掛けるだけ…

 突如現れた大きな黒い狼はダンプカー程の大きさがあり、威圧感と恐怖感で意識が染められる。


『ウル』


 突然、ウルが僕らと漆黒の狼の間に入り込み、大きな黒い狼に向かって吠えた。


 急に、身体中に感じていた威圧感と恐怖感が弱まり、身体が動けるようになる。

「遥」

 と呼び掛ければ、

「ヨースケ」と言葉が帰り、遥が僕の後ろに移動してくるのを気配で感じる。

 遥の姿を目でとらえたいが、大きな黒い狼から視線を外す事ができない。

 正に格の違いというものを感じる。僕らではこの黒い狼にどうあがいても勝てないだろう。


「ウル、こっちへ来い」

 取り敢えず、黒い狼の目の前にいるウルを呼び寄せる。黒い狼に対峙するウルの姿は、ダンプカーの前に置かれた幼児用の三輪車のような図柄だ。黒い狼からの軽い一撃でウルは弾き飛ばされ、その命を落としてしまうように思える。


 ウルが此方に近付く前に、黒い狼がウルのまえに移動し、鋭いキバを備えた大きな口を近付ける。

 そして、ウルを舐め上げた。

「ウ、ウー」

 ウルの威嚇は停まらない。

 大きな狼はウルの機嫌をとるかのようにウルを舐め続ける。


「人の子よ。我が名はフェリル」

「えっ、喋った…」

 突然、黒い狼が話し掛けてきた。思わぬ展開に、言葉を失う。


「驚かせてすまない。我が子を救ってくれたそうだな」

 黒い狼は愛おしそうにウルを舐めあやす。

「ウー」

 ウルは怒っているんですよという雰囲気をかもし出しながらも、母親からの愛情表現に満更でも無さそうな態度を示している。


「そなた達には感謝する」


 この黒い狼はウルの母親だった。

 ウルがなかなか戻って来なかったのは母親と会っていたためで、どうも僕らの事を母親に伝えていたらしい。

 僕らはウルと直接会話できないが互いに意思の疎通は出来ていると感じている。日頃のウルやクーの反応を見ていても僕らの言葉を理解しているようにしか思えなかった。

 ウルの母親は人語を解するだけでなく、喋ることも出来たため僕らとの会話も成立した。


 ウルの母親によると友達の子が襲われ行方不明になったため、友達の子を探すべく住処を離れた隙に 自分の子も行方不明に成り、途方にくれていたらしい。

 そんな中、我が子が生きていることが分かり歓喜しているところに僕らの気配を感じ、自分の縄張りに侵入した邪魔者を排除するため、僕らのもとに現れ、先ずは、僕らを威嚇したものの、どう対処しようかと思っているところへ、我が子が追い掛けて来て僕らとの間に入り、僕らを害するなと怒られ、現在に至るといった状況だった。


 更に、ウルの母親はクーの姿を見ると驚愕したかのような様子を見せた。

「クー、クーン」

「ウー、ウー」


クーと二言三言会話した後、

「我の子だけでなく、友の子も救ってくれたのか。改めて感謝する。歓迎するぞ、我に着いてこい」


 ウルの母親に連れていかれた場所は綺麗な泉の畔の緑豊かな広場だった。周りには美味しそうな実をつけた木々が垣間見得る。まさに森の中の楽園といった雰囲気だった。


 ウルの母親は美味しそうな果物を僕らに振る舞ってくれた。

 別れ間際には、炎の剣を僕に、そして氷の剣を遥に贈ってくれた。

 ウルとクーには守護の輪という防御に特化したアイテムを贈ってくれた。このアイテムは突発的な魔法や物理的な攻撃を防ぐ効果があるそうだ。そして、30分程ではあるものの防御結界を展開できるアイテムで、魔力を補充すれば再利用できる優れもののアイテムであった。これでウルとクーの安全性が大きく上がった

 別れ際、ここより南方にある山にクーの母親がいるのでクーを連れて一度会いに行って欲しいと頼まれたので、僕達は快諾した。


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