第43話 理由を考えてみました
時間が止まったのは一体どうしてなのであろうか?理由さえわかれば対応策も出てくるのかもしれない、そして再びいつも通りの日常を取り戻すことが出来るかもしれない。
そんなことに気づかない雅也たちではなかった、そして定期的に話し合いが行われていたのだ。
行われてはいたのだが全く進展がなかっただけなのだ。
「という訳で今回も始めましょうか、なぜ時が止まったのかを考える会を」
「これまでさんざ話し合ってきたけど一ミリもいい案なんて一つも出てないからな」
未来は難しい顔で腕を組んでいた。
「今までどんな案が出てきたんだっけ?」
「色々ですね……あんまりにもたくさんありすぎて覚えてないくらいには色々です!!!」
何故か拳を握る彩夢に雅也は軽くため息をついた。
「僕は色々覚えてるよ。彩夢のトンチキ説の数々……ちょうどいい機会だから振り返ってみようかな」
まだ彩夢と雅也が出会ってそれほど時間が経っていなかった時の一幕には。
『私は宇宙人が時止め光線を撃ってきたんだと思いますよ!!!ビババッババって感じです!!!偶然私達だけがその光線から逃れたんです』
『薄々思ってたけど彩夢ってヤバいよね。なんで光線?』
『フフフ、光線っていうのは物の例えですよ。つまりは宇宙人の攻撃です。異常なまでに科学力の発達、いえもしかしたら科学でさえないかもしれませんが、とにかく超常的としか言えない力を使われたんです!!!』
『なるほど、まあ僕もこんな状況になったんだからオカルト的な何かを肯定するのにやぶさかじゃないけど。
でもそれならどうして僕達だけが逃れることが出来たの?』
彩夢はグッと拳を握って強い言葉で叫んだ。
『私達が宇宙人に手術をされていたからです!!!!!!!』
『ふぇ?』
そして雅也はまだ彩夢という女のことを理解したとは言えなかった。
『幼いころかそれとも記憶を消されているのかは知りませんがとにかくそう言うことで抵抗力があったんですよ!!!!!あれ?そうなるともしかすると私達の身体には何かしらのアビリティか……もしくは武器が埋め込まれているのでは……雅也さん、早速探してみましょう!!!!』
「あはは、そんなこともありましたね」
「あんときは僕も押されるがままだったからね。よーく憶えてるよ……今くらいにお前への遠慮がなくなってたらと悔やまれる」
「まあとにかく結局何も無かったんですよね……炎が出るとか天翔ける力とか腕がサイコガンになるとかあってほしかったんですけど。ま、なかったものは仕方ありません。
もっともこっそり身体の中にそんな因子があることを未だに願っているんですけどね」
「そりゃまあ大変だったねマー君」
「なーに、未来ちゃんも知ってると思うけど僕はそう言うのに慣れてるからわりと平気だったよ。
あとこんな説もあったね」
『雅也さん、私閃いちゃったかもしれませ』
『何に?』
『この世界の真実……何故止まったかですよ』
『どんな?』
この時の雅也はそれほど期待していなかった。彩夢に慣れていたというのもあるがテンションがどう考えても異次元スイッチを押したときのそれだったからである。
もしこれが真面目な顔だったなら雅也も美しい花を摘むように真摯に対応していたであろう。
『いいですか?未来人がタイムマシンを完成させてしまったせいで時空のひずみが私達の世界に影響を及ぼしているんですよ!!!』
『未来人のせい?』
『はい!!相対性理論で有名なかのアインシュタインは光速を超えればタイムマシンが作れるかも的なことを言っていたと言うことを想いだしたんですよ。まあ同時に光速を超えることは出来ないとも言ってたらしいんですけど。
とにかく!!!ついに人類は光速を超えることに成功したんです!!!しかしそれは神の創造した理と逸脱した禁忌の所業!!!世界の美しい調和を乱し時間を超えるどころか時間を止めてしまったんです。
それはドンドンドンドン広がっていき、やがて私達の時代にまでやってきた。いけてると思いませんか?』
(なるほど、まあ僕達に予想できないことなんていくらでもあるからそれは否定しないとして……どうしてもこの疑問が出てくるんだよね)
雅也は彩夢の肩に手を置いた。
『ならどうして僕達だけ動いているの?』
『………えっと…………私達が神に選ばれたからとか?』
完全に想定外だと言わんばかりの顔を見せた。やはり異次元スイッチの産物説だったようだ。
『………もう面倒だから全部神様のせいってことにしようか』
『それはダメです!!!神様のせいにするなんて簡単で伸ばしやすい答えは絶対に認めませんよ!!!』
『つい数秒前の自分の発言思い出してみろ』
『撤回します!!!とにかく私は必ず答えを見つけてみせます……そして時を止める力を使いこなすんです!!!!!』
強く魂のこもった宣言だった。
『趣旨変わってるぞおい』
『だって、だって』
不思議な涙を流しながら彩夢は雅也にしなだれかかった。
『カッコいいじゃないですか、時を止める能力。世界と統べる力と言って過言ではありません』
『それは認める』
雅也と目が合った彩夢は奇妙なテンションが沸き上がりワンワンと泣くのであった。
「あの時何で泣いたんでしょね」
「知らん」
「感極まったんでしょうね」
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