第13話 ムニムニのモミモミの結果

彩夢はねえねえとのやり取りを思い出していた。


『いい?彩夢はバカ斉人のせいで色々歪められたわ。まあ正直今のあんたはあたしにとっても好物だから変われなんて言う気はない。でも女としてのチャンスを見逃すんじゃないわよ』


『チャンスですか?』


『ええ、もしあんたがほんの少しであっても誰かを好きになりたいと思ったらきっとその男も……いや、女かもしれないわね。まあとにかくその人もどうせヤバい人なんだから正攻法は賢い選択じゃないわ。距離をつめられると踏んだら思いっきり大胆なことをしなさい。そして興奮するのよ!!!』


『ふーん……つまりセックスすればいいんですか?それは少々はしたないような』


 ねえねえは強く彩夢を抱きしめた。二人の柔肌が互いを押し合う。


『そこまではしないでね!!!!!!絶対にしないでね!!!!!!彩夢は清い彩夢でいてちょうだい!!!!』


 彩夢はこの時久しぶりに姉の気持ちが分からなかったが取りあえず頷いた。

『はい。お任せくださいねえねえ』



(多分いまこそがねえねえの言っていたチャンスです。セックスはやめといた方がいいらしいですが胸を揉ませるくらいなら許容範囲でしょう)




 奇しくも雅也の方も姉とのやり取りを思い出していた。


『女の子が自分の意志であんたにおっぱいを見せられたら思いっきりしゃぶりつくしなさい』


『欲求不満で脳内回路が性欲世界(リビドーワールド)につながったの?』


 この時わりと真面目に雅也は姉のことが心配になっていた。


『んなわけないでしょう。これでも結構お姉様として弟のことを心配してるのよ。あんたときたら私の下着を見ても私が覆いかぶさっても、挙句の果てには混浴しても眉一つ動かさないですーんとしてるんだもの』


『実の姉が何言ってんだ?』


『未来ちゃんから聞いたわよ、あんた学校でもそうらしいじゃないのよ。修学旅行で未来ちゃんの生尻に圧迫されたのにピクリともたたなかったそうね。未来ちゃんが可哀そうだと思わないのかしら?たたせなさいよ!!!男でしょう!!!!』


『セクハラで訴えるぞ』


『まあとにかく、あんたは昔っから性欲とは無縁の絶食系を超えた絶食系男子だったわね。そしてあんたも今や14歳、普通の野郎ならまだ見込みはあるけどあんた一人の力じゃ肉食になるのは不可能だわ。というわけでおっぱいを揉めるチャンスがあったら思いっきりしゃぶりなさい!!!!!ボーイズビーマン!!!少年よ男になれ!!!!』


『知るか』




 姉の戯言を思い出した雅也はフッと笑った。


(お前の好きなようには動かんぞ馬鹿姉貴!!!!!!!!)


「さ、どうぞ雅也さん」


「OK」


 そう言って雅也は姉の教えに逆らって至って普通に彩夢の白くたわわな胸を揉んだ。


 ムニムニムニムニ


 指に入れた力をそのまま反映するように押しつぶされ緩ませると元の形に戻る。指の腹を使ってくすぐってみると「ふゆぅ」と力の抜けた嬌声が彩夢の口からこぼれてきた。彩夢の胸はプールの水にぬれているせいなのかほわわんとした柔らかな暖かさを雅也の手のひらに感じさせる。


 が


(う……来ない)


 全然興奮しなかった。



 そして


(うーん。来ませんね)


 全然興奮していなかった。


 雅也は生で行った方が良いのかと思い立ち、するりと水着の中に手を入れた力強く揉んでみる。




 ムニュリムニュリ


 モミモミモミモミモミモミモミ



(うーーん……)


 これまで感じたことがないほどの多幸感、全身に走る甘い刺激、耽美で優雅な生乳の感触である。

 だがそれでも雅也の期待していたような興奮がやってこない、下半身にまで響いてこないのだ。



(むぅ……)


 ビクビクと優しく甘い電流が雅也の手から全身に流れてきている。自分の中にある性を司る何かの動きがこれまでの人生で一番把握できるようになっている。

だが想像していた綿あめのようにフワフワとしているものではない。女性ホルモンがろくに分泌されていないように感じるのだ。



「「はぁ」です」


 二人は同時に溜息を出して顔を合わせた。どちらも微妙な顔をしている。


「どうですか?」


「うん……いいよ」


「そうですか……じゃあキスでもします?」


「いやもういいや、それにさ」


 雅也は微妙な顔のまま続けた。


「キスならとうにしただろ」


「確かにです」


 改めて自分たちの困難を自覚した二人なのであった。

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