六章(後半):組織編➁
第40話 作戦無し
花見町、街はずれの人形屋――
「そろそろ準備するよ、菊。今度こそは絶対だ」
カタカタ、カタカタ、カタカタ……………………
「ああ、大切な約束だ。今日はこの
◇
花見町の山の上にある花見中央病院――
天音純が目を覚ましたことを病院から聞いた水と燈火は飛ぶように病院へ向かった。
「純!!」
病室のドアを勢い良く開けると意外にも元気に食事を取っていた天音純が笑顔で二人を出迎えてくれた。
「おう、水! 燈火! 俺がいなくても元気だったか~?」
「水ちゃんは結構落ち込んでいたみたいだよ~?」
端の小椅子に腰かけた燈火は水を少しからかって天音にそう伝えた。
「そんなことなかったし!」
「はは~ん、推理しなくても簡単に想像がつくぜ~」
天音は食事を終えた後に体を楽な体勢にしてから話を再開した。
「えぇとそれで、俺がいない間に駄菓子屋はうまく回ってたか? 何もでかい事件は無かったよな? ま、事件に大きいもの小さいも無いんだけどよ」
沈黙が流れた後に一気に病室の空気が重くなった。当然何も知らない天音はきょとんとした顔をしていた。
「事件というか、かなりヤバいかもね。組織の方が」
黙っていても何も進まないと思った燈火がついに話し出した。
「組織ぃ~!? このタイミングでなのかっ!」
燈火は天音が居なかった数日間に起きたこととこれから起こりうることを丁寧に話した。
…………………………
「へぇそんなことが……。塾の一件は組織と何か関係あるのか?」
「分からない……千賀さんの言う通りにそれ以降は関わらないことにしたから……」
水はいつもより自信なさげに天音の質問に答えた。
「そうかぁ。千賀は今は遠くにいるのか、そして大神先生の状況はよくわからず、俺はこの通りまだ万全じゃない……と」
「うん……」
「いやヤベえじゃん! ピンチじゃん水~!」
「だからそう言ってるでしょっ、さっきから! ずっと! こんな時にふざけないでくれますかねぇ……」
「ははは、わりぃわりぃって」
「で、どうすればいいのよ、このままじゃ……」
「そうだな~諦めよう!! スッキリスパッと!!」
天音は手のひらを合わせて吹っ切れた表情でそう言った。
「「は!?」」
驚きの声をあげて今まで下を向いていた顔を天音の方に向けた。
「難しい作戦とか、相手を捕まえるとか、そーゆーのは諦めようって言ってんだ。前みたいに力み過ぎてもうまくいかねーしな。ホントに頭の回る連中ばっかだし、状況が状況だしな、」
「そ、それはそうだけど……でも!」
「ただ受け身で流すんだ。追われているなら隠れる。見つかったなら走って逃げる。いいな? ただあの駄菓子屋はもう危ないから燈火は俺の退院までここに泊まるんだ。水はあ自分のマンションだ。そして学校は大神先生が居るから安全だろう」
「分かったわ」
駄菓子屋から自分の荷物をマンションに戻すために水は病院を出た。
「悪かったな燈火。あの時、いろいろと自分勝手なことして」
「感謝しかないよ、私はすっかり純と水が居る駄菓子屋探偵が気にいったよ」
「……そうか、そりゃよかった」
……………………
「よかったの? あんなテキトーなこと言って。正直私だけじゃあの子を守れない」
「仲良くなったんだなホントに。友達ってやつだ」
「…………」
優しい声で燈火の目を見ながらそっと伝えた。
「いざって時に守ってくれるのが頼れる友達ってやつだ。初めて会った時は心配したが、今はもう大丈夫さ! 積み上げてきたものってのが必ず守ってくれるはずさ……」
冬にしては眩しい日差しを手で押さえて窓の外を眺めた。
◇
『ロベリア。予定通りお前は地方ロケの裏で交通機関をよく監視しておけ』
『了~解~。花見町の時のように貴方が慎重すぎなければ何も問題ないわ~。それとまだ花見町での借りを返されてないんだけど? 私が代わりにボスに怒られたようなものよ?』
『今回は俺が任務のメインだ。こちらが与えた計算式の通り動けばいい』
……………………
『ストレリチア。そちらはそちらで手を抜くな。お前の本気度で引き寄せられる人数も変わる。千賀警部だけだと引き寄せれば良いと思ってると足をすくわれる』
『俺は自分の
『無論だ。それがお前の言う
『それはまた時間がかかりそうだな、マリーゴールド。あの
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