第492話 登城2

お知らせ

 昨日公開の第491話「登城1」ですが、法事があった都合で未完成、中途半端な状態でした。

昨日午後に大幅加筆ならびに修正が入り「登城1(増補版)」となっています。

中身が倍ぐらいに増量されていますので、1度第491話を読んでいただいた読者の方も、2つ目の◇以降から読んでいただけると幸いです。

その前にも修正が入っていますが、カメレオン5が魔物警戒魔導具に引っ掛からなかった理由の追加と、誤字脱字の修正、文の微調整になりますので、読み飛ばしても問題ないかと。


――――――――――――――――――――――――――――――


「委員長、近衛騎士を止めろ!」


「無理だ。短期命令ならば集団に出来るけど、このような状態でスイッチが入ると、僕を守れという長期命令が優先される」


「ならば長期命令を書き換えろ!」


「無理だ。それは接触しないと出来ない」


「くそっ!」


 委員長アーサー王の【支配】スキルは、強力だが面倒なスキルのようだ。

まず【支配】の解除が全く出来ない。

短期命令は集団に出来るが、長期命令のスイッチが入るとそちらが優先されてしまう。

さらに長期命令は増幅の魔導具を使わない限り、接触しないと書き換えられない。


 優斗まさとたちは増幅の魔導具で支配され、委員長の「助けて」という意志が長期命令になってしまったようだ。

そして、魔導具が壊れたあるいは魔法陣から出てしまったために長期命令の書き換えが出来なくなった。


「1人1人【支配】を【洗脳】で上書きするしかないか」


 それか、魔法陣に誘導して委員長に……面倒すぎる。

この場で【洗脳】が使えるのは俺と腐ーちゃんだけか。


「腐ーちゃん、近衛騎士を【洗脳】で無力化して欲しい。

サダヒサと翼班は、近衛騎士の確保と腐ーちゃんを護衛して!」


 俺はリュウヤと赤Tを襲っている優斗まさと班を【洗脳】で救う。

ああ、こいつらを強化するんじゃなかった。

支配対策で優斗まさと班のレベル上げをしてしまったのだ。

まさか増幅の魔導具の破壊にしくじるなんて。

1回は機能すると思っていた、支配から逃れる魔導具が壊れるなんて、想定外すぎた。


 ああ、そうだ。魔導具といえば、もう警報を気にする必要なんて無かったんだ。


「眷属召喚キラト、オトコスキー、カミーユ、ニュー、カミラ、沙雪!」


 俺はこの狭い空間を考慮して人型の眷属だけを召喚した。

デュラさんでも大きすぎる。ましてや飛竜は呼べない。

俺が纏うに丁度良いのは……。


「眷属召喚カブトン、クモクモ!

カブトン、クモクモ、カメレオン1纏!」


 久しぶりのカブトン纏に、クモクモとカメレオン1を追加装備する。

カメレオン1の隠密能力と、クモクモの粘糸、カブトンのスピードと装甲を利用しようというのだ。


ピーピーピー


 眷属たちに反応して魔物警報装置が作動する。

それを聞いて貴族たちにパニックが広がる。


「魔物だぞ!」

「いや、化け物だ!」

「魔王じゃないのか?」


 眷属たちと俺のカブトン纏を見て委員長に支配されていない貴族たちが恐怖の声を上げる。

俺たちがまるで虫の魔王とその配下に見えるのだろう。

タルコット侯爵派閥の貴族もドン引きぎみだ。

カブトン纏はインパクトが強すぎたようだ。


 その姿は洗練された仮面〇イダーというよりも、グロイ昆虫人間だからだ。

蠅を纏ったらベルゼブブになるという感じなのだ。

まだカブトムシで良かったというところだ。


「侯爵たちは脇に避けていてくれ」


 俺は王の紋章を出して命令する。

まるでアーケランド王が魔王化したかのようだが、そこは侯爵も俺が真の勇者であることは認識している。

黙って命令に従ってくれた。


「なんと禍々しい鎧よ!」

「なぜ王の紋章があのような者から?」


 だが事情を知らない貴族からは、否定的な意見が出ている。

面倒なことだ。


 ◇


 眷属たちを呼んだことで、形勢を逆転することが出来た。

レイスのカミーユが不幸を撒き散らし近衛騎士たちにデバフ効果をかける。

キラーゴブリンのキラトと竜人のニューが、剣と槍で近衛騎士たちを圧倒する。

真祖のカミラが血剣で近衛騎士の腕を飛ばす。

鬼人の沙雪が拳と氷魔法で近衛騎士の戦闘力を奪う。

近衛騎士たちの攻撃は、オトコスキーが防御魔法で器用に防ぐ。

そして腐ーちゃんが追い込まれた近衛騎士を腐食魔法で行動不能にする。


 腐ーちゃんが一番凶悪な方法を使っているようだが、気にしないことにする。

後で治せる。それが無ければやってない。


 そして俺はというと優斗まさとたちの運動神経と勘の良さに手古摺っていた。

さすがフィジカルエリート。

迷宮で強化育成したことで立派な勇者となってしまっていた。


「おい、手加減するのは無理だぞ。

いっそリボーンで元に戻そうぜ」


「だめだ、支配のせいで構成情報に不具合が起きているはずだ。

その状態だと生き返らないはずだ」


 赤Tの意見をリュウヤが否定する。

優斗まさとたちには、いざという時のためにさゆゆのリボーンを設定していた。

だが、そのスキルの制限として、支配や洗脳など、精神の構成情報に大きく変更が加わるとリボーン出来ないというのがあった。


「くそ、無駄につえーな、こいつら」


「俺が直々に迷宮で鍛えたからな」


 彼らのギフトスキルも強力だ。

なんとか触れて洗脳で上書きするしかない。

そのためには腕や脚の1本程度は仕方ないか。

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