第487話 支配の限界

 サザランド伯爵が王城から戻りタルコット侯爵邸に報告にやって来た。

ブローチの宝石の色は青。委員長の支配は受けていない。


 その報告はカメレオン5を通したものよりも、その場にいたからこそ感じ取れる生の情報だった。


「つまり、【支配】は長期指示と短期指示1つずつしか使えないと?」


「はい。私に対しては、長期指示だと断ったうえで王都の守りを固めろと言いました。

それ以外はその場だけの短期指示らしく、他の者もその場限りで従っているようです」


 【支配】は、長期の大まかな指示とその場限りの指示が必要なのか。

だから、その組織のトップだけを支配して指示しているというわけか。

確かに、いちいち短期指示で大人数を動かすのは面倒だろう。


 そこらへんは、支配を受けていたリュウヤの証言と一致する。

あの当時リュウヤが受けていた長期指示は、アレックスの命令に従えだった。

そしてサンボーと共に出撃した時には、サンボーに従うようにという長期指示に変更されていたのだ。

リュウヤが言うには、委員長の支配下にあると基礎能力が上がるらしい。

それはステータス数値にして1.5倍ぐらいだそうだ。


「その話には納得できるものがあります」


 王城には委員長の支配を受けていない貴族もいたそうだ。

それら貴族は、自ら恭順の意を示した者たちで、ともすれば委員長にとっては危険分子だった。


「ある貴族がアーサー王委員長襲撃を画策したようなのですが、あっさり近衛騎士に制圧されていました。

違法行為を告発されて、アーサー王委員長から叱責を受けたらしいです。

どこが怪しかったのか判らないほどの早業でした。

明らかに能力が上がっている様子でした」


 委員長アーサー王が【支配】スキルを過信して、実は支配出来ていないサザランド伯爵に油断していたとしても、いざサザランド伯爵が襲撃に及べば、長期指示で能力のブーストされた近衛騎士に阻まれるということか。

支配されていると、委員長アーサー王の指示に最大限報いようとする感じか。


 貴族たちへの登城命令が出ているから、その時に支配を免れた者たちでサクっと委員長アーサー王を暗殺するという手も使えそうにないな。

勇者としての技能を持つ委員長アーサー王に能力をブーストされた召喚勇者なみの近衛騎士、その強さは侮れない。


 失敗すれば、タルコット侯爵やサザランド伯爵、ボーデン伯爵などのこちらに友好的な貴族を失いかねない。

さすがに捨て駒に出来るような人材は持ち合わせていないし、居たとしても捨て駒にする気は無い。


「参考になった」


 やはり、タルコット侯爵たちが登城するまでに、俺たちが個人の能力を上げて王城に侵入し、委員長を討つ必要がありそうだ。

そのためには訓練迷宮に入るしかない。

間に合わなければ計画延期だ。

タルコット侯爵たちが上手く切り抜けられれば良いのだが、そこは何が起きるか判らない。

現場に味方が多いうちに委員長アーサー王襲撃を行ないたいところだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る