第422話 魔族勇者襲撃5

お知らせ

第419から421話に加筆をしました。

温泉拠点の女子たちが弱いのは、魔族勇者が強すぎることが理由なのですが、魔族勇者の強さが際立つ描写が不足しているために、より弱く見えていたようです。

女子たちは、そこらの魔物や育成前勇者よりは強い感じです。

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Side:温泉拠点 屋敷前


「コンコン、ヒロキくんに連絡して!

このままじゃ、誰かがやられちゃう!」


「おっけー!」


 コンコンが慌ててヒロキに念話を繋げる。

それはノックなしのルール違反の念話だった。

よっぽど慌てていたのだろう。


『ご主人様、たいへんなのー。

勇者の格好をした魔族が攻めて来たの』


 コンコンが念話でヒロキに連絡を入れる。

ルール違反だったが、ヒロキは気にせず答えた。

内容が緊急事態だったからだ。


『人数は!?』


『10人は居ると思う』


 コンコンが、瞳美が先程探知した人数を伝える。

1人倒しているから正確には9人だ。


『全員が魔族なのか?』


「ご主人さまが、全員が魔族なのか聞いてる」


「【詳細探知】で探ったら全員そうみたい。

今は外塀の外に3、水堀に2、内塀の中にバラバラで4だよ!」


 コンコンがヒロキの質問を声に出して問うと、瞳美がスキルを使って調べて答えた。


『うん。瞳美ちゃんがそう言ってる』


 コンコンが内容を端折って伝える。

そこが残念キツネと呼ばれる所以だろう。

だが、それが功を奏する。

そう連絡して直ぐに、温泉拠点の上空にヒロキが飛竜纏で転移して来たのだ。

無駄な時間を使わなかったということで、コンコンを褒めるべきだろう。

そして、眷属を次々に召喚していった。


Side:ヒロキ 時間は戻る。(1人称に戻る)


 結衣チームの戦力は結衣+水トカゲ2+ラキ、瞳美+チョコシルバーウルフ、麗+チクチクアースタイガー裁縫女子ヌイヌイアースタイガー、コンコン、薔薇咲メグ先生、シモーヌ喜多川さん、パン屋さん1・2・4号、そして俺が呼んだハッチGハニービーになる。


 人数的に2組が合流したと勘違いしたが、救護班に薔薇咲メグ先生たちが加わっただけのようだ。

おそらく食事時に襲われてマニュアル的に救護所を設置、先生たちはそのまま加勢したという感じか。


 ここで便宜上、結衣チームが対峙している魔族勇者を魔族勇者1と呼称することにする。

青Tチームが戦っているのが魔族勇者2、パツキンチームが戦っているのが魔族勇者3、さちぽよチームが戦っているのが魔族勇者4だ。

そしてモササウルスが抑えている水堀の魔族勇者が魔族勇者5・6で、不二子さんにGK・GSが戦っているのが魔族勇者7・8・9だ。


 魔族勇者1はスピード系のようで、結衣たちを翻弄していた。

結衣、瞳美、麗、綾、シモーヌ喜多川さんの5人は非戦闘系のギフトスキル持ちのため、前衛戦闘職系と思われる魔族勇者1に太刀打ちできないでいる。

撃った魔法が当たっているが、とにかく魔族勇者1の防御力が高く効いていない。

それを薔薇咲メグ先生、ラキ、コンコン、パン屋さんたち、そして彼女たちの眷属が、高威力魔法やブレス、そして物理攻撃を行ないしのいでいた。


 パン屋さんたちは屋敷の周囲に根を張っていて動けない。

そのパン屋さんたちと屋敷の間にヌイヌイとチクチクがクモ糸で防御陣地を構築、屋敷前に家具でバリケードを設置し、結衣たちはその中に籠城して魔族勇者1と対峙していた。


「結衣、皆、無事か?」


「ヒロキくん!」


 俺は飛竜纏の状態で結衣たちに合流した。

そして状況を訊ねながら、魔族勇者1を観察した。


 魔族勇者1は、剣と魔法を使う魔法剣士のようで、そのスピードとパワーで翻弄し、魔法攻撃で牽制を加えていた。

コンコンや薔薇咲メグ先生の攻撃魔法やラキの攻撃を難なく回避し、反撃を加えていた。


 物理攻撃できる戦力が、パン屋さんたちの触手とシルバーウルフのチョコしかいないため、手古摺っていたようだ。

これで魔族勇者2人と対峙して魔族勇者10を倒せたのは奇跡かもしれない。


「こいつは時間稼ぎだな。

無駄にMPを使わないようにした方が良い」


 俺はMPの消費を抑えるようにと忠告した。

魔族勇者1は、結衣チームの直接攻撃力が弱いと見て取ったのだろう。

MPを削って疲弊させて、手出し出来なくなった後でじっくり攻撃するつもりだろう。


 せっかく【魔力回復】を持っている結衣、瞳美、麗、綾の4人も、魔族に対抗できるような攻撃魔法を持っていなかった。

魔族勇者1は、彼女たちを脅威とは見做していないということだろう。

いや、結衣たちの魔法だって、そんじょそこらの魔物には有効なのだ。

魔族化がどれだけ能力向上を齎しているのかということだ。


 この世界、魔法で消費するMPは、【MP自動回復】か【魔力回復】という特別なスキルを持っていないと日中には回復しない。

通常MPを使うと、そのまま減った状態で1日を過ごしすしかなく、それが深夜に突然全回復するのだ。


 コンコンは残念キツネなので、そのスキルを持っていなかった。

薔薇咲メグ先生も、最大MPは多かったが、それを持っていなかった。

加えてスキル構成が漫画執筆出版に偏っていて、攻撃魔法も闇魔法と火魔法系しか持っていない。


 これもスキルの保持数に制限があるせいだった。

先生は、戦うよりも【アイテムボックス】と【転移】で職場ごと逃げ、執筆活動こそを優先しており、このように戦うことは近年は無かったのだそうだ。

この場も逃げても構わない状況だったが、殊の外ここ温泉拠点での食事を気に入っており、残ってくれた――いや、結衣に餌付けされていたのだ。


「先生が闇魔法で拘束してラキのブレスで1人は倒したの。

でも魔力MPが足りなくて……」


 薔薇咲メグ先生は闇魔法が使えるから、それで拘束したのか。

それもMP消費の兼ね合いで2発目が使えないと。

先生の魔法があまり冴えないのは、MPが少ないせいだったのか。


「すまんな。薄い本のコピー魔法でがっつり使った後でな」


 そっちで使ってたのかよ!

さすが先生、ブレないな。


 魔族勇者の狙いは、結衣たちの消耗。

そして仲間が合流するのを待っているのかもしれない。


「そう簡単には行かせるかよ!

【闇魔法、黒影縛り!】」


 スピードタイプには足止めが有効だ。

薔薇咲メグ先生がMP不足で使えないならば、俺が使えば良い。


 影から黒い手でが伸びて、魔族勇者1を拘束する。

結衣たちを侮り、調子に乗っていた魔族勇者1の足が止まる。


「ラキ、ブレス!」


 ラキのブレスが魔族勇者1を消し飛ばす。

竜種のブレスは、さすがに魔族化していても防げなかったようだ。


「あと8か。

ここはもう大丈夫だろう。

これから警備担当たちの援護に向かうよ。

これ、MP回復薬だ。先生に飲んでもらえ」


 この世界にもポーションというものがあった。

HP回復薬、治療薬、毒消薬、そしてMP回復薬だ。

麗には持たせていたはずなのだが?


「MP回復薬は不味いからのう」


 さすが先生、ブレない。

どうやら本当の危機的状況にならなければ飲むつもりは無いらしい。

まあ、今のところ救護所の危機は脱した。

危険がないならば、飲まなくてもいいだろう。


「じゃあ、行ってくる」


 俺は溜息交じりにオスカルたちの援護に向かった。

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