第380話 赤T、説得

「なるほど、旦那探しで前のめりの娼婦にまで相手にされなくてこうなったと」


 赤Tの無謀な行動の理由をリュウヤたちから聞いて、俺は呆れると同時に赤Tの魔族化が危険域にあると判断した。

このまま侵略行為を許し、無垢の民を傷付けでもしたならば、赤Tは闇落ちして魔族化の危険が増してしまうだろう。

赤Tには、どうにかして思い留まらせなければならない。


「わかった。赤T。

隣にあるディンチェスターの街の娼館に行ってモテれば良いのだろう?

それならば、手段が無い訳でもない」


「本当か!

いや、お前のいう事なんて信じねーぞ」


 俺にマドンナ陽菜ガングロを取られたと思っているのか、赤Tは俺の言う事を疑いの目で見て来る。

ここは強引にでも話を聞かせるしかない。


「俺が5人も妻のいるモテモテだと知ってるだろう?

モテる秘訣を教えてあげても良いんだぞ?」


 俺のその言葉に、赤Tも一瞬考え込む。

そして、興味はありつつも反発して来た。


「ふん、それは教えてもらってもかまわねーけどよ。

だいたいどうやって敵国の娼館に行くっつーんだよ。

占領するしかねーべ」


 赤Tは、ここエール王国の従軍娼婦にモテようとは一切考えていないようだ。

まあ、ここでの悪評さえ知られなければ、ディンチェスターの街の娼婦にモテる自信はあるのだろう。

赤Tも見た目はそこそこのイケメンだからな。バカだけどな。

仕方ない。俺がカドハチと接触するための切り札を教えてやろう。


「ここに変装の魔導具がある。

これを使うと」


「おお!」


 俺が変装の魔導具を使い姿を変えると、やっと赤Tが食いついて来た。


「このように別人になれる。

ディンチェスターの街は身分証が無くても保証金さえ払えば入れてもらえる。

どうだ? 簡単に街に入れるだろう?」


「あー、俺はいまエール王国の金しか持ってねー。

保証金がそれじゃ入れねーだろ」


 おお、赤Tのくせに、そこに気付いたか。

うっかりさんでやられないように気を付けようと思っていたところだというのに。


「安心しろ。

保証金も娼館も俺のオゴリだ。

存分に楽しんで来い」


「おまえ、ーやつだったんだな」


 赤Tが単純で良かった。

金なんかよりも赤Tの魔族化を止められれば良いんだからな。


「最高級娼館で遊べる金を用意してやるよ」


「それがしも行ってよいか?」


「俺も行くぞ」


 どうやらリュウヤとサダヒサも敵情視察じゃないが、なんらかの用事があってディンチェスターの街に行きたいようだ。


「女子たちも連れていかなければ怒られるが、後でも良いか。

先行偵察の安全確認ということで4人で行って来るか」


 女子たちを同行して、赤Tを娼館に連れて行くなんて言ったら、女子たちに何を言われるかわからない。

嫁たちに浮気を疑われるのも困る。

ここは男だけで行っておくべきだろう。


「「「決まりだな」」」


 こうして男4人で変装してディンチェスターの街まで行くことになった。

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