第378話 新国境砦建設3

お知らせ


 作者急病に付き、更新が止まってしまい申し訳ありませんでした。

なんと更新が止まった日が連載1周年でした。

そんな記念の日から止まってしまうとは、作者一生の不覚です。

まだ本調子ではありませんが、なんとか再開させていただきます。

これからも本作を宜しくお願い致します。

――――――――――――――――――――――――――――――


「橋を作ったが、どうすれば良い?」


 工兵隊長のダイアーが橋が完成したと報告して来た。

その橋は丸太を束ねて上に板を貼ったもののようだ。

見たところサイズも一般的な強度も申し分ないようだ。

あとは跳ね橋としての追加部品の取り付けと設置だけだ。


「とりあえず川に渡してしまおう」


 ここの川は切り立った渓谷に流れていて、両岸の崖に橋を渡す形になる。

この巨大構造物の端を持って向こう側にかけるなどといった作業は、普通の人力では不可能だろう。

だが、俺には【アイテムボックス】のスキルがある。

一度アイテムボックスに収納して、適当な位置で出せば、崖に橋を渡すなど雑作も無い。


 俺は一瞬のうちに丸太で出来た橋を川にかけた。


「次は跳ね橋の機構部分を設置する」


 跳ね橋は橋根元の固定部分が90度動くように鉄製のウケを作ってある。

そこに丸太で出来た橋をはめる。

ゴラムたちが橋を引っ張って根元をはめていく。

力仕事はゴラムたちに任せれば問題ない。


「次は橋の補強と引き上げるための鎖の取り付けだ」


 一般的な使用方法ならば充分な強度の橋だが、跳ね橋として上げ下げする衝撃が加わるので、橋が折れないように補強で鉄の板を打ち付けておく。

そして橋の先端には引き上げるための鎖を取り付ける輪を固定する。

その輪に鎖をはめて城門の上まで引いておく。


「こんな重い物、どうやって持ち上げるんだ?」


 ダイアーが俺の作業に疑問を呈する。

たしかに、鉄で補強した分、ただの丸太橋よりも重くなっている。

だが、そこは温泉拠点でも使った重りによる開閉システムを流用する。


「鎖の反対側に重りを繋げて、その重さで開閉するんだよ」


「なるほどな。

だが、その重りが繋がっている鎖が切られたら橋の自重で開いてしまうぞ」


「そこは問題ない」


 俺はその重りをゴラムたちに作ってもらう。

それは門の裏を塞ぐ形で鎮座していた。


「鎖が切れれば、この重りが入り口を封鎖して蓋になるんだよ」


 つまり、橋が降りている間は、重りが空中にぶら下がることになって、入口が開くのだ。


「ゴラム、橋の鎖を引き上げろ」


 次に跳ね橋の鎖を引いて橋を跳ね上げる。


「そこに接続だ」


 その鎖を上部の滑車に引っ掛けて、その先を重り上部の輪に取り付ける。

そして滑車から橋に繋がる鎖に巻き上げ機の魔導具を設置する。


「橋を下げるぞ」


 巻き上げ機の魔導具を作動させると橋が降りていく。

これは重りの方が若干重く設定されているため、重りを持ち上げる動力を必要とするのだ。

そして橋がゆっくりと接地する。


「よし、重りを固定しろ」


 重りには穴が開いていて、その穴に鉄の棒を両側から刺すことで固定する仕組みだ。

これで魔導具を止めても重りが落ちることはない。

この固定具がある限り、入口の城門は安全に通行が可能だ。


「よし、問題ないな。次は緊急閉鎖実験だ。

魔導具作動。重りの固定解除。

いくぞ、魔導具停止!」


 すると、重りが重い分、橋を引っ張りながら重りが落ちていく。

橋が上がり、そして重りが入口を封鎖した。


「おお!」


「門番や兵士に使い方を指導してくれ。

重りが落ちて来るから、そこは事故の無いように徹底させてくれよ」


「了解した」


 これで跳ね橋は完成だ。

橋と重りが引き合うので、魔導具がなくても最悪人力でも橋は降ろせるだろう。

緊急時は重りの固定解除で橋が上がる。

鎖が切れれば橋は上がらないが入口が重りで封鎖される。



 訓練により跳ね橋はエール王国の兵士の操作で上げ下げが可能になり、今は東門の跳ね橋が降ろされた状態になっていた。

そこへ模擬戦を終えた赤Tたちがやって来る。


「なんだよ。砦が出来てるじゃねーか!

それに橋があるぞ」


 赤Tがなぜかスッキリした顔で帰って来た。


「まだ内装は完成してないがな」


 完成予定の1週間は、内装工事込みの話だ。

石垣や跳ね橋ぐらいならば、1日で終わる。


「充分だろ。

よし、隣の街を征服しに行くか」


「赤の勇者様、おやめください!

本国から停戦命令が出てますから!」


 赤Tは、やはりバカだった。

これだからエール王国も囲い込みで姫と結婚させようなどと思わなかったのだろう。

婿をとるならば、他の勇者の方が良いというところだろう。

ノブちんが生きていればおそらく……。


「赤T、なんで街を攻める気なんだよ?」


「おまえには言いたくない!」


 俺だとだめとはどういうことだ?

ふと視線を赤Tから外すと、リュウヤとサダヒサが目を逸らしていた。

まさか、本当に娼婦を宛がおうとしたのか?

どうやらそこで何かあったな。

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