第364話 サダヒサに話をする
朝市から宿に戻ると、
綾が布地などを大量買い付けするために、アイテムボックス持ちが必要だったのだが、同じ服飾チームである麗がそのスキル保持者だったため、2人で行っても問題ないという判断に至ったようだ。
「遅い! 待ってたわよ」
クロエが俺たちに詰め寄って来た。
どうやら俺と結衣のアイテムボックス持ち2人が出掛けたため、買い物に行けなくてイライラしていたようだ。
ちょっと女子たちのストレス値が高いな。
もしかして、昨夜のアレの声が聞こえちゃったか?
「食糧調達は温泉拠点の皆のためだからね?
そっちの買い物は昼からでも大丈夫じゃないか。
どっちにしろ、こっちはまだ朝食も食べてないんだからね!」
ストレスがあるにしても、まだ買い物に行くには早すぎるよね?
少しは余裕を持っても良いと思うのだが。
「朝食なら、屋台で買い食いでも良いでしょう?
さあ、今直ぐ行くわよ!」
クロエさん、目が怖いわ。女子のストレスによる物欲は邪魔しちゃいけないようだ。
ベルばらコンビを置いて来たから、こんなことにはならないと思っていたのにな。
「はい、
どうやら、
クロエと不二子さんに結衣、瞳美と紗希に俺が割り振られていた。
そして俺の方にサダヒサが自動的に付いて来る。
「それがし、観戦武官としてこの国に参ったが、既に戦闘が終わっていて何も見るものがなかったのだ。
買い物の合間で良いので、是非とも戦闘の話を聞かせてくだされ」
瞳美の用事は本屋回りで、1軒ごとに本を見繕う時間がかかる。
その時間を待ってられないと、紗希は馬具などの店に勝手に行ってしまった。
後で合流して商品の回収をすれば良いということだった。
そして、俺はサダヒサにアーケランドとの戦いの推移を説明することとなった。
「まず発端は、アーケランドの勇者(赤T)がエール王国に亡命したことだった」
「そこは報告を聞いておる。
勇者の返還をアーケランドが求め、エール王国が拒否したことで国境での緊張が高まったのであったな」
「その国境に配備されたアーケランドの勇者が暴走して、エール王国の勇者に単独で攻撃をしかけて来てな。
たまたまエール王国と交渉中だったうちの使者(青T)が巻き込まれてな。
俺が(飛竜で)緊急救助に向かって命からがらアーケランドの勇者を討った」
「ほう。あの名高い黄金騎士を討ったのは、ヒロキ殿であったか」
サダヒサは結衣が俺の事をヒロキと呼ぶもんだから、自分もそう呼んで良いかと言って来た。
なんだかんだ言ってサダヒサは人好きのする性格なため、俺も許可してサダヒサ、ヒロキの間柄となったのだが、彼にとって俺は自らが仕える主君の親戚筋(遠いけどな)なので、さすがにヒロキ殿と呼ぶようになったのだ。
「まあな。(ロンゲは生きてたんだけどな。再起不能だったから討ったで良いだろう)
それによりアーケランドは国境の軍を増強し、その進撃ルートの我が領地(温泉拠点)を襲うに至った。
その、うちの領地を脅かしたアーケランド軍を魔法で(オトコスキーが)ことごとく吹き飛ばして守ったのが第一次攻撃部隊の結末かな」
「なんと、第一次攻撃部隊は、ヒロキ殿の領地でほぼ壊滅したのであるか。
それにしても
ああ、俺がそんな魔法を使うようには見えないよな。
当たり前だが、アーケランド軍を魔法で殲滅したのはオトコスキーだからな。
言えないけどさ。
「アーケランドに洗脳されて手下にされていた召喚勇者も襲って来たので直接戦って(洗脳を解いたりして)倒しもしたな」
「元同窓の勉学を共にした仲間を倒さなければならなかった心中、察しますぞ」
いや、同窓と言ってもたった1日で、後のサバイバル生活の中での印象も悪く、後に
それに倒したのは、こちらを明確に殺そうとして来た相手で、救えなかっただけだしな。
洗脳を解いてというか再洗脳して仲間にしてることも言えないんだよな。
「そこにアーケランドは第二次攻撃部隊の増援を送り込んで来た。
その時点で、アーケランドの勇者が洗脳下にあることが明確になった」
「洗脳は、昔からそうであったようである。
我が主家に嫁いだ召喚勇者や、我が祖先も意志の力で洗脳から脱し逃げたのだと伝わっている」
なるほど、赤Tのように自我が強くて洗脳から逃れた者たちが昔から居たのか。
「なので、殺すに忍びなくて、なるべく降伏や撤退しやすいように促す作戦に変更したのだ。
その第一弾として行なったのがアーケランド軍への補給の断絶だった。
アーケランド軍の輜重隊をエール王国の特殊部隊に襲わせるのを(たまご召喚を使って)手助けして、補給を絶つために(翼竜が)橋を落として撤退を促したのだ」
「ほう、補給がままならなくなれば、賢明な指揮官ならば兵を守るために撤退を選ぶであろうな」
「だけど、思惑とは逆にアーケランドが総攻撃に出たのだ」
「愚かな。短期決戦で勝ち、物資はエール王国から現地調達という思惑であろうな。
人的被害を顧みない愚策であろう」
「そこで、魔法(メテオストライク)を国境砦の後方の無人地帯に撃って、その威力で脅して降伏を迫った。
その結果、(指揮官の勇者が殺されたり無事に差し出され)降伏に至ったというところかな」
ちょっと口に出来ないことが多かったけど概ね合っているはずだ。
「なるほど。アーケランドの鬼畜さが良く分かる内容であった。
勇者召喚を行ない手駒とし、他国に戦争をしかける。
昔と何も変わっていないのであろうな」
「いま、アーケランドにはうちの同期の勇者は1人しか残っていない。
それに加えて先代勇者が何人か残っているようだ」
「ちょっと待ってくだされ、我が皇国が把握している勇者の数とあまりに違うぞ」
「アーケランドは俺たちの勇者召喚を失敗したんだよ。
そのせいで、召還した全員を手にすることが出来なかった。
俺たちは魔の森に放り出されて分裂し、その中の1チーム15人と、後で判った単独の1人がアーケランドに渡り、もう1チーム6人がエール王国に渡った。
俺たちは残りの9人で魔の森に拠点を作って生き延びていたんだ」
「それだけで半減しておったのか。
それに加えて先の戦闘でアーケランドの勇者は倒されたということだな?」
「そうだ。この戦いで、アーケランドに所属する召喚勇者の数が激減し、アーケランドは侵略戦争どころではなくなったのだ。
それにより、アーケランドは次の勇者召喚を画策していた。
それを阻止して来たのだが……」
「待て待て、勇者召喚を画策していたのを阻止しただと?」
「ああ、アーケランドの王城に侵入して召還の儀をぶち壊して来たぞ」
「まさかそこまでされておったとはな。
それで気の抜けた行動をしておったのであるな。
それがしは、のんびり買い物などにうつつを抜かしていてハラハラしておったのだぞ」
「それ、結構ひどいこと言ってるぞ」
買い物にうつつを抜かすって、うるさいわ。
これでも女子たちがキレないように頑張ってるんだぞ。
女子が理不尽にキレだすと大変なんだからね!
女子たちだって、急にこの世界に放り出されて異常な体験をして来て辛いんだぞ。
え? そんなの見捨てて何処かへ逃げれば良いって?
それこそクソおやじが俺と母親にやったことじゃないか。
俺に出来るわけがないだろう。
そんなの俺が頑張って笑顔にしてあげれば良いだけではないか。
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