第357話 適合者
新たな勇者召喚の可能性を残してしまったが、ミニスカを助けることが出来た。
勇者召喚の鍵とも言えるアーケランド王家の第二王女もこちらの手にある。
次の召喚を行なうには、まだ召喚の儀には耐えられない第三王女を犠牲を覚悟で使うか、懐妊している第一王女の子を犠牲にして使うか、農業国に派遣されているアーサー卿こと委員長を呼び戻すしかない。
いや、もう1つあった。
俺たちが攫った第二王女を奪還するという手段だ。
「どう動くと思う?」
俺は今後の行動方針を決めるために皆に訊ねた。
「さすがに王家の人間を犠牲にするという手は使わないだろう。
生かしておけば今後何度でも召喚の儀が出来るのだ。
なんらかの事故で王族を失ってしまったら、次が無くなることになる」
リュウヤの言う通り、今は1人足りないという事態だが、王や宰相が亡くなりでもすれば、召喚の必要人数が足りなくなる。
「待って、でも召喚勇者も適合者だったはずよ。
一度召喚に成功すれば、複数の適合者を手に入れることになるのでは?」
「召喚の儀には王族が必要です」
第二王女が補足説明を入れた。
それは真実なのか、生かして欲しいための嘘なのか、判断が付かなかった。
だが、彼女は洗脳により嘘が付けなくなっているはずだ。
この言い回しだと、王族が必要なのは事実だろうが、その人数は怪しいところだ。
この王女、なかなか策士かもしれない。
「ゲスな話だが、次代の王族を増やさなければ、召喚の儀の継続に支障が出ると誰もが考えるはずだ。
王や
リュウヤが言いにくいデリケートな話を持ち出した。
俺が言わなければいけないところなので助かる。
「え? それって第三王女に子を産ませるってこと?」
「まだ年端も行かない子なんでしょ?」
さすがに女子には受け入れがたい話だろう。
「ゲスいな。しかしあり得る」
だが、そうであれば第三王女をたった1度の勇者召喚で使い捨てにはしないはずだ。
第二王女がその可能性に気付いて青くなっているが、王宮に残っていれば、次は第二王女だったということなんだぜ?
いまは勇者召喚の儀式に必要だったから手を出されなかっただけだと思うぞ。
「真の勇者こと委員長を使わなかったのは、それだけ信用されていないということか」
召喚の儀を委員長に見せたならば、あの性格ならば反発していたことだろう。
いや、いまは委員長もノブちんたちを殺すぐらいに歪んでいる。
昔の委員長ではないと思った方が良いだろう。
だが、アレックスとは反りが合わないのは間違いない。
これで第4の制御枠の該当者が全員消えた。
「議論が紆余曲折したけれども、次の勇者召喚をするために、第二王女を奪還しに来るということで間違いないかな」
俺たちはそう結論した。
そして、温泉拠点まで誰一人欠けることなく戻ることが出来たのだ。
「「「誰よ! その女!」」」
第二王女は美人すぎた。
留守番だった妻ーずに俺はあらぬ疑いを持たれ追及されるのだった。
◇
Side:アレックス
「くそ! まさか王城にまで乗り込んで来るとは!」
アレックスこと高田幸雄32歳は焦っていた。
勇者召喚には王族含めた4人の適合者が必要だった。
さらに百人単位の生贄を消費し、数十人の魔導士がこの召喚の間の外で魔法陣に魔力を注いでいた。
これらの生贄の補充に加えて、儀式に参加した魔導士が回復しなければ勇者召喚は出来なかった。
そして、一番重要な4人目の適合者。
第一王女を妊娠させてしまったため、今回からは第二王女がその任に就いていた。
その第二王女が
「このようなことになるとは想定していなかった。
これならば、あの女勇者を残しておくべきだった」
今回の勇者召喚を行なえば、新たに30人の勇者が手に入る。
役立たずの
勇者は一般人よりも生命力や魔力の格が違う。
多少生贄不足でもそれを補完して余りある。
そう思ってのことだったが完全に裏目に出ていた。
「アーサー卿を呼び戻して儀式に参加させるわけにはいかない。
奴は王族の洗脳を【支配】スキルで乗っ取りかねない。
私に取って代わろうという野心を持っている。
しかもジョブが私の天敵だ。
奴には国のために外で活躍してもらうのが妥当だ」
アーサー卿こと委員長には彼の存在は隠されていた。
だが召喚の儀に協力させるためにはその存在を公にしなければならない。
いまはレベル差で王や彼には【支配】が及ばないが、アーサー卿は農業国で行方不明だった勇者を討ちレベルを上げたようだった。
それも
「俺の子を身籠った
ここで使い潰すのは論外だ。
新たな勇者召喚が必須だろう。
となると、無害だと見逃していたあいつを呼び戻すしかないか……」
アレックスは、もう1人の適合者に当たりを付け、呼び戻すことにしたのだった。
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