第342話 アーケランド軍動く3
これは金属バットが指揮して通した魔の森を抜ける道が使われていた。
その道は偶然にも赤Tが調べて
つまり
「本隊は明らかに正面の軍だが、北の分隊を放っておくわけにもいかない」
金属バットが苦慮したのは、そのまま
かといって、北に対等な戦力を回せば、正面戦力が弱体化する。
兵が少ない
「あのルートは魔の森の中だ。
俺の眷属を配置して兵を削ろう。
少なくとも兵の行軍の足止めにはなるはずだ」
「良いのか?
なるべく使役している魔物は見せたくなかったのではないのか?」
俺の提案に金属バットは、俺の立場に配慮してくれた。
以前のヤンキーバリバリの頃と比べたら、完全に好青年となっている。
俺は金属バットにそうさせている俺の洗脳に後ろめたさを感じた。
俺と
だが、ヤンキーのままでは、金属バットがどう動くのか予想がつかない。
素の金属バットに戻していたならば、冷静に
結果オーライということで、大目に見てもらおう。
もし日本に帰ることが出来るのならば、その時に完全体に戻そう。
「魔物に襲われたとしても、魔の森の中だからこそ、野良なのか使役されているのかは判断が付かないだろう」
「そうか。では頼めるか」
この金属バットの安定感。一時のモラル意識で手放すわけにはいかないな。
さて、北にまわった
となるとモドキンあたりを配置するのが正解か。
モドキンならば広範囲を立ち入り禁止に出来る。
いや、立ち入った者を殲滅してしまう。
これ以上の適任はないだろう。
「遠隔眷属召喚、モドキン、ロンゲを倒した空地へ」
続けて
『GK、北へと迂回した分隊を削れ!』
これで北は良いだろう。
ああ、そうだ。
モドキンの巻き添えを食うぞ。
「北の東進路にいる守備隊に撤退命令を出してくれ。
うちの眷属が巻き込みかねない」
「わかった。伝令を送る」
間に合ってくれれば良いが。
一応、モドキンの出現位置は魔の森の深い場所だから、大丈夫だと思うが……。
「これで北の防衛に割くはずだった2千の兵を正面に使える」
国境砦の
攻めて来る
その後ろに予備兵力が同じく4千いる。
倍の兵で攻めるのはセオリーだが、それを陽動で削られるところだった。
勇者が加勢することを見込んでも
その時、
どうやら総攻撃の開始のようだ。
「防衛戦開始だ!」
金属バットが命じると赤Tとせっちんによる火魔法攻撃が始まった。
だが、
魔法の応酬となる。
そこに弓や攻城戦用のバリスタ、そして投石機が動員された。
明らかに攻城戦に特化した部隊がいる。
「金属バット、バリスタと投石機だ」
「おう」
そう言うと金属バットは手に野球のボール大の岩を出現させた。
どうやら土魔法で創っているようだ。
それをひょいと放ると手にした金属バットで打った。
岩石ノックだ。キンという打撃音が心地よい。
それが固定式のバリスタや投石機を破壊していく。
これが逆の立場だったならば、城壁など簡単に破壊されたかもしれない。
だが、さすがに手数が足りない。
人海戦術でとうとう城門に人が辿り着いてしまった。
城門の上から石を落とすなどという攻撃も行なわれるが、既に石は尽き、城門に破城槌が打ち付けられ始めた。
「まずいな。
遠隔眷属召喚、ゴラム、城門の裏。
ゴラム、土魔法で城門を固めろ!」
ゴラムが召喚魔法陣から現れると、城門の裏を土魔法で出来た壁で補強した。
これで暫くはもつだろう。
まあ、こちらも出入り出来なくなったが、籠城戦だから問題ない。
「うわ、昇って来た」
さちぽよが剣で梯子で昇って来た兵を斬る。
自主的に俺を護衛してくれているようだ。
やはり人数の脅威は侮れない。
手が回らない所から次第に綻びが出始めている。
「仕方ない。ここはに人型の援軍を呼ぼうか。
眷属召喚、不二子さん」
「やっと出番が来たー-------!!!」
不二子さんが目の前に召喚されたと同時に叫びをあげる。
よっぽど活躍できなかったことが悔しかったようだ。
「不二子さん、広範囲魔法でやっちゃって」
「任せて! エクスプロージョン!!」
そう言うと不二子さんは広範囲爆裂魔法を
「おお、素晴らしい。しかも美しい!」
金属バットが不二子さんに見惚れている。
残念、その
俺は密かに金属バットの恋心に合掌した。
「不二子さん、壁に取り着いた敵を排除出来ないか?」
「簡単よ~。レインフォールにサンダーブレイク!」
雨に濡れた上に雷が落ちる。
壁を必死に登っていた兵が感電してバタバタと落ちていく。
「よし、一息ついたな」
「美しい人、我らの危機を救っていただき感謝します」
「あらやだ、好青年ね。
食べちゃいたいわ♡」
金属バットよ、本当に食べられちゃうから――精力的な意味で――近付かない方が良いぞ。
俺はそれを声に出さずに心の中で呟いた。
戦いはまだ半分も終わっていなかった。
このままお互いに消耗戦をしても意味がない。
いや数の多い
「それには、指揮官を叩くしかないか」
俺と金属バットは城壁の上で自らの目で戦況を把握し指示を出している。
しかし、
安全な場所で戦況報告を聞き、対処しているのだろう。
それを叩くには国境砦ごと潰すしかない。
俺はオトコスキーが2千の兵を倒したことで、基本レベルもアップし、魔力も増え、土魔法のレベルも上がった。
そして使えることが出来るようになった土魔法上位魔法。
まずは
それを見せつけてから降伏勧告をする。
従わなければ仕方ない。次は国境砦に落す。
「土魔法、メテオストライク!」
巨大な岩が
その衝撃は、
その直撃を受けた野営広場には巨大なクレーターが出来ていた。
「よし、降伏勧告だ。
次は国境砦に直接落とす!」
最初からこれを落せばよかっただろうと思われるかもしれない。
だが、俺たちはあくまでも援軍であり、
「金属バット、いや、せっちんに降伏勧告をさせてくれ」
金属バットも正式に
正式な
その中でも一番上に立っているのがせっちんだろう。
「アーケランド軍に告ぐ。降伏せよ。
降伏しなければ次は国境砦に、その次は軍団の上に落す。
降伏に応じるのならば兵を引き、赤旗を掲げよ」
せっちんがエール王国勇者として降伏勧告を行なった。
さて
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お知らせ
実験小説『魔力0の魔導士』の1話を公開しました。
https://kakuyomu.jp/works/16816927860684562418
良かったら読んでみて続きが読みたいかの感想をください。
そんなのより〇〇の続きを書けといったご意見でも構いません。
あ、豆腐メンタルなのであまり厳しいのは無しで。
宜しくお願いします。
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