第328話 アーケランド軍壊滅3
『魔王様、敵の撤退を確認しましたわん♡』
いや、撤退というより恐怖にかられて逃げただけだろ。
「主君、我が隊が100名ほど巻き込まれました」
しかも、ゴブリン隊を巻き込んでいた。
100名といえば砦にいる守備隊の2割にあたる戦力だ。
その被害も尋常ではない。
『味方の被害が大きすぎる。
今後は味方の巻き添え禁止だ!』
『あらん、そうでしたの?
雑魚に気を遣わないとならないとは、それではわたくしの良さが出せませんわ』
『貴様! なんだと!』
配下を殺されたキラトが怒るのも無理はない。
元魔王軍幹部なためか、下々の気持ちがわかってない。
『犠牲もやむを得ない場合は、俺が指示する。
それ以外は味方に撤退命令を出し、巻き込まれない状況を作ってから攻撃しろ。
これは俺からの最上級命令だ』
もし、ここに同級生がいたら、巻き込まれていた可能性が高い。
危なすぎる。こいつを御するのは相当神経を使いそうだぞ。
あるいは、味方が居ない場所に単独で送り込むのが正解かもしれない。
モドキンと同じで劇物扱いだな。
『魔王様の御心のままに』
どうやら俺の命令には従ってもらえるようだ。
◇
オトコスキーと対峙した
そのため中央で撤退が始まっても、両翼に展開した部隊はそれに呼応できずに残っていた。
そして、慌てて逃げて来る味方に後方詰めだった部隊は混乱していた。
『バカ野郎、こっちに来るな!』
『何言ってんだ! 向こうはヤバい、撤退だ!』
『はあ? 俺たちだって後ろから攻撃されてんだからな!』
そう、後方部隊はオケラが地中から攻撃をしかけていた。
『ギャー!』
また一人、兵士が地中に引きずり込まれた。
『こっちにも化け物がいるのかよ!』
オトコスキーの攻撃に恐怖し東に撤退する部隊と、オケラに襲われ西に進もうとする部隊がここにぶつかり合って身動き出来なくなっていた。
『冗談じゃない。俺たちは
『こんなの聞いてないぞ!』
『もうこっちに逃げるしかない』
彼らはとうとう南へと進路を向けた。
馬車も放棄され、重い武装も捨て去った潰走だった。
北に迂回しようとした部隊は野良の魔物たちの攻撃を受けていた。
魔の森は、北へと向かうほどにその魔物も強力になっていく。
さらにその魔物が齎す拒絶の意志が恐怖を産み、ゴリゴリとSAN値を削っていく。
誰かが逃げれば潰走待ったなしな状況だった。
『もう嫌だー---!』
一人が後を向くと一目散に逃げだした。
するとコップの水が表面張力に耐えられなくなって一気に零れるが如く、全員が後を向いて逃げ出した。
それを魔の森の野良の魔物たちが追う。
バラバラになった
南に向かったのは走竜に乗った部隊だった。
魔の森の木々を迂回し、いよいよ壁の切れ目に到達したかと思った時、そこに奴がいた。
暴君竜T-REXだ。
グギャギギャギャー!
走竜が恐怖の悲鳴を上げ、制御が効かなくなり、次々と騎兵が落されて行った。
そこにT-REXが躍り込む。
そこには蹂躙、殺戮しか存在していなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
Side:国境砦 サンボー
「くっ、4人とも俺の指揮下から外れるとはどういうことだ?」
俺の参謀としての能力で、指揮下の勇者たちの様子を把握出来るのだが、派遣した4人の勇者が悉く指揮下から外れていた。
指揮下から外れる条件は少ない。
1つは死ぬこと。当たり前だが死んだら自動的に解除されてしまう。
1つは自らの意志で俺の指揮を拒絶すること。
これは洗脳されている勇者たちの意志では出来ないはずのこと。
つまり、洗脳が解ければ解除されてしまう。
まさか、全員が返り討ちに合ったのか?
あの
有り得なかった。
特に逃げ足だけは速い
「最低限、手薄になった方では戦果をあげられるはずだった。
両方やられるなど、あり得ない!」
勇者4人の喪失。責任問題になる。
「パーシヴァル卿の軍から早馬です!」
「報告させろ!」
「第15派遣軍壊滅! 第14派遣軍潰走しました!
魔物による攻撃を受けました。敵は魔王軍です!」
なんということだ。
いや、指揮も取れない状況だったのか。
まずいぞ。このままでは勝てない。
少なくとも魔王軍は放置せざるを得ない。
いっそ、このまま
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