第312話 二正面戦
「フーチャンアブナイ」
腐ーちゃんにキバシさんを通じて危機を警告したが、反応が無い。
どうやら意識を失っているようだ。
このままだとまずい。
アマコーを倒されて怒り狂った金属バットに腐ーちゃんがやられてしまう。
『ラキ、腐ーちゃんを守れ。
ただし金属バットを殺すな!』
『クワ?』
俺の相反する命令にラキが混乱しているようだ。
戸惑いの思念が伝わって来る。
この危機的状況で金属バットを殺さずに腐ーちゃんを守るなんて、どうしたら良いのか判らないのだろう。
ラキはとりあえず腐ーちゃんの胸元から離れ、腐ーちゃんと金属バットの間に入ったようだ。
俺は状況把握のためにカメ子さんとも視覚共有をかける。
腐ーちゃんはまだアマコーからの魔法のダメージのために倒れたままだ。
金属バットは赤Tとの戦いにおいて、『地走り』から降りていた。
そのため移動速度が落ちていたのが救いだった。
移動では使えるが、近接戦闘に使うほど金属バットは『地走り』に慣れていなかったようだ。
「フーチャンオキロ」
キバシさんを使って腐ーちゃんに問いかけ続ける。
赤Tだけでは金属バットに敵わない。
2人で対するしかないのだ。
ラキはその攻撃が強すぎて、赤Tが纏わりついている金属バットを攻めあぐねている。
「ラキ、金剛化!
爪斬波と火球で金属バットを攻撃だ!」
ラキには腐ーちゃんの盾になってもらうしかない。
遠隔攻撃で時間を稼いで、その間に腐ーちゃんが復活するのを期待しよう。
『クワ?』
ラキから赤Tを心配する思念が飛んでくる。
「赤Tに当たっても良い。
そこは赤Tに対処させる!」
『クワ!』
ラキの遠隔攻撃が始まった。
『来る』『小龍』『攻撃』『避けろ』
『おわ!』
赤Tがカメ子の念話で避けたところにラキの火球が飛んで来た。
『アブねー!』
『勝手』『撃つ』『避けろ』
『丸投げかよ!』
文句を言いつつも、赤Tはラキの攻撃に合わせて金属バットを牽制し出した。
その時、金属バットの脚にラキの爪斬波が当たる。
『おわ、見えねーっつーの!』
爪斬波は赤Tにも見えていなかった。
だが、それは金属バットも同じ。
目に見える火球の攻撃を避けているうちに見えない爪斬波が脚を狙っていたのだ。
しかし、金属バットのダメージは少ない。
その歩みを止めるまでには至っていない。
『チャーンス!』
赤Tが動きの鈍った金属バットに斬りかかる。
だが、それは金属バットの誘いだった。
金属バットは赤Tに詰め寄り、赤Tをラキからの攻撃の盾としたのだ。
ザン!
『ぐわ!』
赤Tに当てても良いとは言ったが、ラキの爪斬波が本当に当たってしまった。
まずい、速く現場に着かなければ赤Tと腐ーちゃんが危ない。
そうだ。眷属を遠隔召喚して、盾としよう。
ここは硬いT-REXか
そう思って召喚しようとした時、コンコンから念話が入った。
『温泉拠点に敵接近、およそ2千です~』
『奇襲部隊の攻撃を受けた。迎撃する。追加です~』
バカな。監視網を突破したとしても、到着までまだまだ時間があったはずだ。
なぜこんなに早く拠点が攻撃を受けている?
まさか、『地走り』か!
高速移動の奇襲部隊、そういやパシリは疾風の勇者と言われる高速特化だったな。
と、そんなことを考えているところではなかった。
どうする、動きが速いヘラさんは拠点の対処に向かわせるべきか。
T-REXは高速特化には弱そうだからこっちかな。
「遠隔召喚、T-REX。ラキの真横だ!」
俺は金属バットを抑えるためにT-REXを現場に派遣した。
『T-REX、金属バットを抑えろ』
これで少しは時間が稼げるか?
『コンコン、視覚共有、念話を結衣に伝えろ』
『がってんだ!』
『結衣、状況は?』
『どうしたのコンコン? あ、
コンコンが俺の台詞を前置きもなしに伝えたため、結衣は一瞬理解が及ばなかった。
コンコンめ。なんで一言俺からだと言わないんだ。
さすが残念キツネというところか。
『そうだ。状況はどうだ?』
『東の
そっちに行っていた不二子ちゃんもキラトに言って念話して拠点に戻ってもらってる最中。
南から来た部隊がもう壁の外にいて、攻撃されてる。
戦闘奴隷たちと運動部3人組が迎撃中。
青Tにも行ってもらった』
『被害はないんだな?』
『いまは大丈夫。怪我した戦闘奴隷は
敵に1人速い人が居て、狙いが定まらなくて大変なの』
おそらく
奴の速度を殺すにはどうすれば良い?
そうだ、あの手があったか。
『クモクモたちに粘着糸を撒かせろ。
それで足止めするんだ』
『わかった。伝える』
『しばらく頑張ってくれ。
こっちが片付いたら直ぐに行く』
どうやら拠点は現有戦力で守りきれているようだ。
こちらを片付けたら助けに向かわなければ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます