第309話 戦闘開始
兵の同行を諦めた金属バットたちは速かった。
その速度は異常で、走竜で移動している赤Tたちに迫る勢いだった。
「俺たちよりも先に接触しそうだな」
「たぶん地走りって魔物に乗ってるんだよ」
さちぽよが言うには、スケボーのように乗る『地走り』という魔物がいるらしい。
ダンゴムシを平らにしたような形状の多脚の魔物で、その速度は走鳥や走竜を凌駕するのだそうだ。
森の中では密な木々を避けるため、その体躯の大きさから走鳥や走竜は迂回せざるを得ない。
だが、地走りは上に乗っている人の幅があれば木々の間をすり抜けて移動できる。
走る速度も速い上にコース取りでも有利なのだそうだ。
「森の中を移動するためにいるような魔物だな」
うちでも欲しいぐらい便利だ。
虫卵で出るかな?
金属バットたちは、そろそろ赤Tたちと接触しそうだった。
俺は翼竜と視覚共有し金属バットたちの後方を飛ばし、その様子を伺う。
翼竜の欺瞞工作が見破られたため、その任務を解き、金属バットの攻撃を受けない程度に後をつけさせているのだ。
「あれは、気付いてないのか?
まずい、奇襲されるぞ!」
赤Tと腐ーちゃんの走竜は前を走っているため狙われていないが、後方の騎士の走竜に金属バットが迫っていた。
離れた位置からアマコーも何やら魔法を準備しているようだ。
「翼竜、火炎弾!
空中で爆発させて注意を促せ!」
俺の命令で翼竜が口から火炎弾を吐く。
見た目は古代生物の翼竜だが、そこはファンタジー世界の魔物、なぜか火炎弾という攻撃手段を持っているのだ。
『航空攻撃ができるかもしれない』はまさにこの火炎弾のことだったのだ。
ドーーーン!
赤Tたちに迫る金属バットの後方上空で火炎弾が弾けて爆発する。
と同時に俺はキバシさんでメッセージを送る。
視覚共有はラキに切り替えている。
「テキセッキン」
「キンゾクバットニアマコー」
『なんだと! 散開しろ!』
俺の警告にすかさず赤Tが部下に命令を出す。
そこにアマコーの爆裂魔法が飛んで来る。
『対魔法防御だ!』
騎士たちが散った真ん中で爆裂魔法が弾ける。
金属バットたちを先になんとかしようと思っていたが、間に合わなかった。
ついに同級生同士の戦いが始まってしまったのだ。
「フーチャンイノチダイジニ」
『仕方ないでござる。
また足止めをして洗脳でござろう?』
腐ーちゃんが言うのは、青Tを倒した時の戦術だろう。
あの時は腐ーちゃんの腐食魔法で脚を1本溶かしてもらった。
俺がやりたいと思っていることを良く解かってくれている。
「ムリョクカシテ」
「トウチャクヲマテ」
『こころえた』
金属バットは騎士たちには目もくれず、直接赤Tを狙って来ていた。
金属バットの棍棒と赤Tの剣が交差する。
アマコーは金属バットが接近戦をしかけたせいか、広範囲攻撃の爆裂魔法を諦め、ファイアボールで騎士たちを1人、また1人と倒していっていた。
そこへ腐ーちゃんの闇魔法が降り注ぐ。
暗黒弾という攻撃魔法だ。
それを回避するためにアマコーの魔法攻撃が止まる。
その足元に腐ーちゃんの腐食魔法が発動する。
だが、地走りに乗ったアマコーは速く、その毒霧の効果が利くより早く移動してしまう。
両者の実力は拮抗しており、膠着状態となっていた。
その均衡が破れたのは、赤Tと金属バットの戦いの方からだった。
金属バットの棍棒が、赤Tの剣をボッキリと折ってしまったのだ。
その様子が目に入ってしまった腐ーちゃんに隙が生まれる。
ドー------ン!
腐ーちゃんの至近距離でアマコーの爆裂魔法が弾ける。
『くっ!』
倒れ込む腐ーちゃん。
アマコーは地走りで高速移動し、腐ーちゃんの死角から攻撃して来たのだ。
しかも避けにくい広範囲攻撃の爆裂魔法を使って来ていた。
さらに腐ーちゃんに爆裂魔法が迫る。
いや、それが見えているということは、ラキの視線が向いているということだ。
『ラキ、腐ーちゃんを守れ!』
俺の命令にラキはドラゴンブレスを放出した。
ドラゴンブレスは爆裂魔法を消し去り、その先に到達する。
それは勝利を確信してほくそ笑むアマコーの真正面だった。
「まずい、直撃だ!」
そのドラゴンブレスはアマコーに致命的な被害を与えるのだった。
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