第285話 戦争の足音1

Side:赤T


 俺が意識を取り戻した時、俺は部下たちに担がれて運ばれていた。

ロンゲのやつと戦ったのは覚えちゃいるが、その後が思い出せねぇ。

俺は負けたのか? ならば何故生きている?

青Tのやつはどうなったんだ? 何か話した気もするが……。


「お目覚めですか? 良かった」


 部下の騎士たちが俺が目覚めたことに気付いて脚を止めた。

どうやら魔の森の危険地帯は脱しているみてーだな。

何か訝し気な表情だが、そういや青Tともう1人、そうだ竜人と話した気がするぞ。

頭がボーッとする。記憶がおかしい。

意識を失ったことでの記憶の混濁っつーやつか?


「申し訳ありません。馬車はマウロの搬送に使ってしまいまして」


 マウロはオオトカゲの毒にやられた部下だ。


「俺が速く後方に送れと言ったからそうなってんだ、気にする必要はねー」


 こいつらも俺を担いで必死にここまで来たんだろう。

感謝しか無いわ。

とりあえず休憩となり、俺は降ろされ草の上に寝かされた。


「俺が倒れた後でどうなった?」


 俺は状況を把握するために何があったのかを訊いた。


「私たちは、マウロを後方に送ってから、こちらへと助力しようとやって来ました」


「ふん、おまえらの力なんて黄金騎士ロンゲには通用しねーだろうが」


「はい、私たちは遠目で見ているしかありませんでした。

赤の勇者様が黄金鎧の騎士に雷魔法で倒され、これまでかという時に人が助けに現れました。

その方が黄金鎧の騎士を倒し、上級回復薬も分けてくださいました(覚えてらっしゃらないのか?)」


「まさに命の恩人じゃねーか。

名前は訊いたんだろうな?」


「もちろんです。

その方は竜人テンコーセイ様です」


「はあ? 転校生? なんで竜人なんだ?」


 ああ、竜人いたわ。あの竜人が転校生だったのか。

そうだ。竜人に助けられて話しをしてるんだったわ!

あの後、気を失ったせいで、すっかり忘れてたわ。

これは転校生に借りが出来ちまったな。

それにしても竜人とは、たしか魔王軍の幹部じゃねーか?

王国でそう教えられた気がするぞ。


 どっちだ。転校生が魔王軍に入ったのか、竜人が転校生に化けているのか。

どっちもやべーな。だが、俺を助けたのだから、味方なのか?

頭が痛くなって来た。あんまり俺に考えさせるんじゃねーよ。


「それも含めて王都に報告だな」


 俺は面倒事を丸投げすることにした。

青Tも竜人に助けられたようだからな。

ああ、ロンゲに襲われる前に青Tから親書を預かったんだった。

あの親書とやらを王様に渡せばいーんだよな?


「あれ? 俺は手紙を持ってなかったか?」


「いいえ、何も持ってませんでしたよ?」


 まずい。青Tから預かった親書を何処かで失くしちまったようだ。

えーと、内容は……。渡せばわかるってやつだった気がするぜ。

米がどうとか、ノブちんに話が通ってるとか言ってたっけ?

つまりノブちん側から報告が上がれば問題ねーな。


 だが、ロンゲがここまで来ていたということは、王国がエール王国に対して勇者をぶつけて来たっつーことだろ。

来るならば1人とは思えねーな。

まずいな。国境に兵を集めねーとならねーかもな。


 ◇


 俺の報告により、エール王国の中枢は大慌てだった。

戦争突入の可能性が高まったんだからそりゃそーか。

王国との国境砦にも増援の兵が集まって来た。

雅やんたちもやって来たが、一番戦力となるせっちんのやつがいねー。


「はあ? 農業国に行ってまだ帰って来てない?」


 農業国にはノブちんが行ってんだろーが。

何やってんだよ。


 そして王国側の砦には、サンボーのやつがいやがった。

どうやら王国も複数の勇者を持ち出してきたようだ。

竜人がロンゲのやつを倒してくれていて良かったぜ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る