第261話 黄金騎士

『誰だ!』


 赤Tが叫ぶ。どうやら赤Tも相手の正体を把握出来ていないようだ。

その相手の声も冑のせいか、こもって聞こえている。

台詞内容から知り合いのようだが、赤Tも誰なのか聞き分けられないようだ。


『私ですよ、エドワルド卿赤T

そして、エルモンド卿青T


 土埃が晴れて現れたその姿は黄金色の甲冑姿だった。

その黄金騎士が面覆いを上げて敬礼のポーズになった。

誰だ? ヤンキーチームに黄金Tなんていたか?

そういや金髪のやつがいたな。


『お前、ロンゲか!』


 赤Tが、その顔を認識した。

どうやら金髪ではなくロンゲらしい。


『そのあだ名で呼ぶな! 私はローランドだ!

ローランド卿と呼びたまえ!』


 その正体は赤髪のロンゲが特徴だったヤンキー5こと通称ロンゲだった。

それにしても、何だ? あの轟音と土埃は?

いったいロンゲは何をしたんだ?

それにしてもなんで黄金色の甲冑?

魔戒〇士じゃあるまいし。


ローランドロンゲ、なぜおまえがここにいやがる!?』


 赤Tが腰の剣に手をやり警戒しつつ問いかける。


エドワルド卿赤T、当然、あなたの始末のためですよ。

そのためにわざわざ王都からこんな辺境までやって来たのです』


 ロンゲが何を当たり前なというような態度で言う。

ロンゲは、王国を裏切った赤Tを始末するために遥々ここまでやって来たのだ。


『まさかエルモンド卿青Tまで生きているとは……。

お二人とも裏切ったということで、よろしいのですね?』


 赤の勇者と青の勇者を前にして、なぜロンゲは余裕の表情なのだろうか?

あれでもあの二人はチート持ちの勇者なのだ。

2対1では分が悪いだろうに。


ローランドロンゲ卿、王国は同級生たちに酷いことをしています。

ブービーは死に、さゆゆとハルルンは奴隷として売られました。

それを疑問に思わないのは、あなたが王国に洗脳されているからです。

目を覚ましなさい!』


 青Tがロンゲを説得する。

同級生が争っている場合ではないからだ。

全ては俺たちを無理やり召喚し、奴隷のように使おうとしている王国が悪いのだ。


『残念でした。

あなた方と違って私の洗脳は緩いものです。

知らないでしょう?

王国に協力的ならば優遇されるということを。

あなた方は反抗し暴れるなどしたからきつく洗脳されたのです。

私は自ら王国に協力することで、あなた方とは違う待遇を受けているのですよ』


 どうやらロンゲは自らの意志で王国についたようだ。

洗脳といっても、それは礼儀作法などに関して知識を植え付けたといった感じなのだろうか。

それがヤンキーだった時と口調が違っている原因なのだろう。


『はん! だからと言って、俺たち二人に勝てるとでも思ってんのか?』


『当たり前でしょう?

私はあなた方と違って特別にパワーレベリングされ、特別な加護を持っているのですから』


『気を付けて、赤T。

ローランドロンゲ卿は雷神の加護持ちです。

彼は雷魔法やスキルを使います!』


 そうか、あの轟音、そして王都から派遣されたにしては素早い移動速度、全ては雷のスキルか!

まずいぞ、雷を纏うスキル持ちならば、電気の流れる早さで動くことが可能だ。

だから雷のイメージで黄金の鎧なのか!


 赤Tは赤の勇者と呼ばれ火魔法を得意とする剣神の加護持ちだ。

青Tは青の勇者と呼ばれ水魔法を得意とする槍神の加護持ちだ。

武の技ではロンゲに勝るが、雷の魔法やスキルを使われたら、その速度に対応できないだろう。


エルモンド卿青Tは、わかっているようですね?

私が同級生最強なのですよ』


『それで、おまえ黄金の鎧なのか?

だっせーな。

金はパツキンヤンキー3のやつのパーソナルカラーだろうが、なんでお前が使ってんだよ!』


 赤Tが挑発し、剣を抜きロンゲの懐に飛び込んだ。

先制攻撃で虚を突こうというつもりなのだろう。

ついに戦端が開かれてしまった。


 青Tもアイテムボックスから槍を出して援護に入る。

後方からロンゲを牽制する位置だ。

それにより、ロンゲの行動範囲が狭まる。

そして、赤Tの剣がロンゲに届こうかという時に、また轟音がした。


ドーーーーーーーーーーーーーーン!!!


 それは雷の落ちる音だった。

赤Tの剣が空を切る。

赤Tが必殺の間合いで斬り付けた先にはロンゲの姿は無かった。


「雷纏の高速移動か!」


 それは赤Tと青Tにとって絶望的なアドバンテージだった。

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