第228話 魚卵って1粒で1個じゃないの?

 食卵のサブスキルで烏骨鶏の玉子を出したところ、女子たちにダチョウの卵だとか他の玉子を要求されるようになった。

アロウカナの卵は殻が青白くて綺麗で、黄身が大きく美味しかった。

しばらく、ちょっとしたアロウカナブームが起きた。

そこでついに、女子にあの秘密が気付かれてしまった。


「もしかして食用の魚卵も出せるの?

たとえばタラコとか」


 裁縫女子、なんて鋭いんだ。

たぶん出せるはずなのだが、それには1つ問題があるのだ。

だからあえて秘密にしていたというのに。


「出せると思うけど、魚卵ってあの1粒が1個だからね。

1個にMP1使うとなると、満足の行く量にするにはMPが足りないと思う。

まだ、やってみてないけどね」


「本当にそうかしら?

たしか、鶏卵や魚卵を指定した召喚も出来るのよね?

それ以外に食卵が使えるようになった。

これの意味を考えたことがあって?」


 どうしたんだ、裁縫女子、なかなか鋭いじゃないか。

たしかに、食べられる種類の卵であれば、孵す目的の有精卵であっても、それを【クリーン】で殺菌して食べることも可能だろう。

だが、それ以外に食卵のサブスキルが備わった理由、それは殺菌の必要が無い程度ではないはずだ。


「やってみよう、駄目で元々だからな。

食卵召喚、タラコ!」


 俺がタラコの召喚を叫ぶと、そこには一腹のタラコが召喚された。


「マジか!」


 つまり食卵は、食べられるサイズの物が出て来るということだった。

孵らない分の魔力は量になったということか。


「MPは? 1減っているだけだ!」


 ステータスを確認するとMP1でタラコが一腹出て来たのだ。

これで一腹の粒分のMPが減っていたら、急激な魔力減少でぶっ倒れているところだった。


「まさか……。

食卵召喚、イクラ!」


 イクラはどうなるのかと思ったら、予想外のことが起こった。

何も出て来なかったのだ。

まさか、本命だったイクラの召喚が出来ないだなんて……。


「イクラって鮭の卵の加工品だよね?」


「それだ!」


 結衣が冷静に突っ込む。

だが、それが原因に間違いない。


「食卵召喚、鮭子!」


 今度は召喚されて来た。

所謂鮭の腹子という状態だった。

これを解して味付けをすればイクラ、そのまま塩漬けにすればスジコとなるのだ。


「数の子はにしんの卵だよね?

食卵召喚、鰊子!」


「出たね数の子」


「まだ塩漬けする前だけどね」


「もう、そんなに出してどうするの。

お昼は魚卵のパスタだからね!」


 結衣がお昼を魚卵のパスタにしてくれた。

なんだかんだ言って、最初の量じゃ足りなかったので、もっと食卵召喚することになったんだけどね。

俺たちのコミュニティは奴隷を抜いても11人いるのだ。

一腹のタラコで足りるわけがない。


 マヨとタラコを混ぜたタラコスパの美味しいこと美味しいこと。

キノコとイクラのパスタなんて塩味だけなのにマジで和じゃないか。

数の子は塩漬けにして乾燥させないといけないのね。

これはまだ食卓には上がらなかった。


「食のレパートリーが増えた!」


「食材革命だ!」


 なんか俺のたまご召喚スキルとパスタで何日もいけそうだぞ。

まだ作ってなかったけど、玉子とチーズでカルボナーラも出来るじゃん。


「これにお米があれば……」


 実は王国とお米の産地の国が緊張状態にあるらしく、お米が入って来ないのだ。

お米は少量しか手に入れてなくて、既に底をついていた。

カドハチ商会も隣国から入手しようとしたらしいが、王国の商会は規制されていて買えなかったそうだ。

イクラのおかげで、お米への欲求が跳ね上がるのだった。


「目指せイクラ丼だ!」


「「おーーー!!」」


 ああ、醤油もいるんだった。

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