第206話 捕虜どうする?
侯爵軍が降伏して、これ以上犠牲者を出さなくて済んだのは良かったのだが、俺は捕虜の扱いに困ってしまった。
侯爵領に帰れば彼らにも家族がいるだろう。
出来る事ならこのまま帰してしまいたいところだし、侯爵軍の副官に、こちらに全滅させられたことを報告してもらえば、俺たちと魔物の脅威が侯爵軍に伝わり攻撃を躊躇ってもらえるなんて甘い考えでいた。
だが、あの若い指揮官の無謀な行動、魔物に蹂躙され撤退するべき場面で退かない態度。
あれでは捕虜を帰しても、残り2千の侯爵軍に合流させられるだけで、こちらの情報まで渡すことになるだろう。
かと言って、ここに留め置けば、見張りなどの人的資源に加えて食料などが消費される。
【洗脳】でこちらの兵とすることも考えたが、そんな人道に反する行為を大量にするには俺の心が耐えられない。
闇魔法は、そのような行為を蓄積して俺にフィードバックするようなのだ。
暗黒面に引きずり込まれると表現すれば良いのだろうか?
そんなことをやっていたら、俺は魔王と呼ばれるようになるだろう。
魔物を操り、人を洗脳して使役する。なんだか、今でも魔王っぽいぞ。
結局、捕虜を武装解除させて囲って次の攻撃に備えるしかなかった。
囲う場所は南門の二重扉広場の外側脇で良いだろう。
そこに高い塀で囲まれた刑務所のような施設を作ってしまえば良い。
そして、副官を【洗脳】し、こちらのメッセンジャーとなってもらおう。
この保養地は危険、侯爵軍2千が攻めても返り討ちに合うと。
魔の森が危険なのは事実だ。
俺たちが強いことは伝えてもらうが、T-REXや戦闘奴隷たちのことは話さないようにしてもらう。
青Tや約200の兵が生きていることも口外させない。
勇者と
彼に侯爵軍の進軍を止めてもらうのだ。
問題は看守と食料だった。
約200人からなる人を毎日監視し食料を供給しなければならない。
加えて騎馬隊の馬や歩兵を積んで来た馬車もある。
馬を管理する人や厩と飼葉も必要だった。
うちも戦闘奴隷150人に、使用人が50人に増えている。
ハルルンと青Tの食料もいる。
つまり、この保養地は、約400人を生活させなければならなくなったのだ。
211人の時は、カドハチ便に食料を持って来てもらって備蓄すればなんとかなると思っていた。
それが捕虜を受け入れたことで、養う人数が倍になってしまったのだ。
つまり備蓄が倍の速さで消費されるということだ。
「ケール、カドハチ便は運行できるか?」
「今の道は、いつ侯爵軍に止められるかわかりません。
侯爵軍相手に無理やり通り、物資を運ぶことは、我らには出来ません」
やはりそうか。
この保養地は侯爵軍に兵糧攻めにあったら危ういという事だな。
もしもの時は捕虜の食事を絶つ決断をしなければならなくなるだろう。
そんなことを悩んでいると、森の街道脇入口を見張っていたホーホーから念話が入った。
『森』『入口』『カドハチ』『来た』
何やらカドハチがやって来たようだ。
「チョコ丸、連れて来てくれ」
チョコ丸の脚ならば、あそこまで半日で行ける。
GKの配下に道から魔物を排除してもらえば、往復1日で戻ってくるはずだ。
俺はカドハチが持ってくる情報に期待して、待つことにした。
「とりあえず、捕虜には畑を耕し、自分たちの馬の世話もやってもらおう。
ケール、荷馬車に道具はあるか?」
「はい、鍬と鋤、鎌がございます」
なんでそんなものを持って来ているのかと思ったが、そこはカドハチ商会、奴隷が増えれば食料生産を自力でやる必要があると考えて、野菜の種や種芋まで持って来ていた。
「畑は捕虜と奴隷、2つ作る必要があるか」
捕虜には、その畑の食料が自分たちの食い扶持だと伝えて励んでもらおう。
自分たちが将来食べる分だと思えば真面目にやるだろう。
だが、そうする前に、俺とゴラムたちで、捕虜収容所と壁を建てなければならなかった。
カドハチが来るという事は、まだ侯爵軍は来ていないという事だから、その前に終わらせないとならないな。
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