第81話 日常
翌日、いつの間にか、騎獣たちに名前がついていた。
女子たちが命名していたのだ。そこには俺の意見の入る余地はなかった。
カバのような四つ足の草食恐竜は『ひっぽくん』で、おそらくカバの英名ヒポポタマスから付けたのだろう。
だからあれは草食恐竜でカバじゃないんだってば。
ステータスでは地走竜というんだぞ。
鳥型の騎獣は『チョコ丸』、あの有名RPGのチョコ〇ではない。
絶対に違うからな!
こいつもステータスでは
恐ろしいことに一晩経ったら、大きくなっていた。
体長40cmが1.6mになっていた。
可愛いからと拠点の中に入れさせなくて正解だった。
人が乗るにはもう一段階大きくなりそうだ。
おそらく、卵の大きさの制限で、小さく孵って大きくなるということのようだ。
確かに、鶏もヒヨコで孵って1日で鶏になっていた。
それと同じ不思議仕様なんだろう。
昆虫系のクモクモたちは大きくなっていないが、それは外骨格のせいだろうか?
外骨格には大きさ制限があるというが、巨大カマキリは人間大――170cmぐらいあった。
なので、あのサイズまでならば大きくなれる余地があるはずだ。
そのうち脱皮でもして大きくなるのかもしれない。
「おはよう」
「おはー」「おはよ」「ぐっも」
それぞれ朝の挨拶を交わす。
俺は生活魔法で水を出し顔を洗う。
いつもは水魔法を使っていたのだが、どうやらスキル数制限があったようで、水魔法を失ってしまった。
だが、生活魔法が残ったので少量の水は出せている。
これも失ったら、女子に水トカゲを借りなければならない。
なんだか背徳的な気分になるのは、その使用用途を知っているからだろうか?
朝食の調理は三つ編み女子だ。
火トカゲで竈に火を入れ、土トカゲの作った土器のフライパンで焼く。
今朝は鶏が産んだ卵と残り少ない猪の
人数が減ったので、全員に卵2つだ。
この卵、なんらかの魔法的な滋養成分があるらしく、1食のカロリーとしては満足いくものとなっている。
ギリ我慢すれば1日これだけで賄えるほどだ。
「ごちそうさまー」
「お腹は満たされるけど、ご飯やパンが恋しい」
「だめ、それ言っちゃ!」
「そうそう、妄想でお腹が空く!」
全員が朝食を終え、思い思いに寛いでいる。
たしかに主食が欲しいところだ。
街へと行けば魔物素材を売って小麦粉ぐらいは買えるだろう。
ただ、街へ行けるならば、勇者召喚をしただろう国に保護を求めようという意見が出るはずだ。
だけど、ラノベに良くあるような私利私欲で勇者召喚されていたら、俺らは搾取される側になってしまうだろう。
最初はそこに考えが及ばなかったが、少し慎重になる必要性を感じている。
ノブちんたちが迎えに来た時の様子を見てからでも遅くはないと思う。
それをどのように女子たちに説明すればよいのだろうか。
風呂と家、そして満足な食べ物さえ確保すれば、ノブちんたちを待つという方向に持って行けるかもしれない。
「今日は、また温泉で塀作りと、狩場でレベル上げをしようと思う。
相手は巨大カマキリなので、希望者のみとする。
巨大カマキリはクモクモの糸で作った罠にかかっているはずだ。
慎重にやれば、怪我することなくレベル上げが可能だろう。
希望者はいるかな?」
「やるー」「たのむ」「安全ならば」「はいはーい」「僕も」「じゃあ私も」
希望者は、腐ーちゃん、バスケ部女子、バレー部女子、裁縫女子、サッカー部女子、マドンナの6人だ。
さすがにメガネ女子と三つ編み女子は、巨大カマキリに怪我をさせられたトラウマがあるから不参加も仕方ない。
ホーンラビットでも持って帰って、サクッとやってもらおうかな?
それにしてもサッカー部女子は強いな、巨大カマキリに一番の重傷を負わされたのは彼女なのに。
メガネ女子を守り続けただけのことはある。
「じゃあ、今日も全員行動ね。
拠点はカブトンが守ってくれる。
そうだ、ひっぽくんとチョコ丸は、荷運びに使えるかもしれないから連れて行くよ」
そう俺が号令を出すと、ホーちゃんは俺の肩に止まり、ラキは三つ編み女子の胸に収まった。
そしてクモクモは罠が気になるのか先行して行った。
キャピコは黙々と草を食べて糸を生産している。
ハッチはハチミツを採取しに行ったまままだ戻らない。
そしてGKは皆の見えないところで拠点を守ってくれている。
新しい1日がまた始まる。
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