第80話 その頃男子チームは2
Side:ノブちん
「どうして……。勝手に召喚しといて、どうして俺たちを犯罪者扱いするんだ……」
「いいから来い! 暴れたら殺す!」
「わかった。抵抗はしない!」
俺たちは武器を取り上げられて、砦の牢へと入れられた。
学生服は全て脱がされ、粗末な貫頭衣を着せられた。
おそらく囚人服なのだろう。
腕には魔法枷と呼ばれる魔法の使用を阻害する枷が嵌められた。
そして、6人全員が別々の牢へと入れられて、協力して脱出することもままならなくなってしまった。
「貴坊の奴、何が予知だ! ぜんぜん出鱈目じゃないか!」
俺はこうなった原因を作った貴坊の予知を呪わずにはいられなかった。
いや、違う。力を得て調子に乗った俺のリーダーシップが間違いだったんだ。
自信無げな貴坊の様子には気付いていたのだ。
それを汲んで引き返す判断を下してあげられたのは俺だった。
元々オタクだった俺、いや拙者はこんな前に出る人間じゃなかったんだな。
オタクが一生懸命リーダーを演じることに無理があったんだな。
「拠点で大人しく、助けを待つのが相応しかったんだな」
どうしてこうなった。
召喚した国が悪者でしたなんて、散々ラノベで読んで来たテンプレだったんだな。
いや、待つんだな。
召喚した国ならば、拙者らを騙すために最初は優遇するはずなんだな。
「この国は勇者召喚をした国ではないんだな!」
勇者と聞いて殺す勢いだったのは、勇者に良い印象がないということなんだな。
この国は勇者を恐れている?
「だから、この厳重な拘束と待遇なんだな!」
ああ、神様、拙者らは無害な存在なんだな。
助けて欲しいんだな。
◇
Side:この国のトップたち
「手つかずの召喚勇者だと?」
「はい、只今国境の砦にて犯罪者に偽装して匿っております。
まずは、こちらをご覧ください」
そこにはノブちんたちが脱いだ学生服があった。
「この布質、縫製、見事なものだ」
「間違いない、過去に勇者の服として出回ったことのある服だ」
学生服はノブちんたちが召喚勇者である証拠となった。
「手つかずというのは?」
「おそらく、かの国は召喚に失敗したのです。
本来ならば召喚魔法陣に現れる勇者が森の中に現れてしまったようです」
「つまり、奴らの支配下にない勇者ということか?」
「はい。ステータスからもレベルが低く、装備もゴブリン装備でした。
これにより、国による育成前であると判断しました」
「でかした!」
「これで我が国も勇者を手に入れられるのだな?」
「くれぐれも邪教徒に悟られぬように」
「ああ、奴らに知られたら、育成前の勇者など簡単に暗殺されてしまう」
「すみやかに移送せよ。ただし勇者だと気取られぬように、そのまま犯罪者扱いを続けるのだ」
こうしてノブちんの心配を余所に彼らは保護されることとなった。
だが、待遇の悪さから、自分たちは犯罪者として処分されるのだと思い込んでいた。
そのため、彼らは女子チームの存在を口にすることは無かった。
これにより女子チームの保護は大きく遅れることとなる。
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