第45話 発見
まえがき
グロ注意。
不快に思われるかもしれない描写があります。
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「こうしてはいられないわ。皆にも【クリーン】を使ってあげて!」
マドンナは腰かけていた倒木から立ち上がると拠点に向けて引き返そうとしていた。
それだけ【クリーン】の存在は衝撃的だったのだろう。
だが、忘れてもらっては困る。
俺たちは無駄とは思っていても委員長の捜索に来ているのだ。
「ちょっと待って。僕たちは委員長の捜索に来たんだぞ?」
拠点に向けて先行していたマドンナの足がピタリと止まった。
そのままギギギと回れ右をすると、こっちに戻って来た。
「さあ、早く捜索に行くわよ!」
マドンナは誤魔化すようにそう言った。
顔が耳まで真っ赤になっている。
何この可愛い生物。
俺は笑いを堪えながら、先に進むことにした。
◇
暫く進むと、旧キャンプ地を遠目で望むことが出来る場所に辿り着いた。
そこは丘のようになっており、旧キャンプ地を見下ろせるようになっていた。
ここは、俺が
「ああ、やばいな……」
そう口にしたはいいものの、その残酷な結果に俺はマドンナにそれを伝えて良いものか、思わず口籠ってしまった。
「覚悟は出来てるよ?」
その俺の様子を察したのか、マドンナはその先を促した。
俺はその決意を尊重し、悲しい現実を伝えることにした。
「あそこ、学ランだと思う」
そこには委員長のものらしい学ランがボロボロに引き裂かれて落ちていた。
その破かれた黒い袖からは赤い肉の纏わり付いた白い骨が見えている。
その黒と白のコントラストが骨であることを強調していた。
それを目にしたのだろう、隣からマドンナのものと思われるヒッと息をのむ音がした。
覚悟は出来ていると言っても、現実は想像以上にスプラッタすぎたか。
「キツイものを見せてごめん。
でも、二人で確認しないと、皆へ報告しても信じてもらえないかもしれないから……」
「そうよね……」
俺たちはそれを委員長だろうと断定した。
なぜならば、学ランを紛失した同級生は拠点には一人も居らず、ヤンキーたちのものは改造学ランのため、あそこの学ランとは見分けがついたからだ。
どうやら他の部位は見当たらないようだ。
ウルフに蹂躙され、持ち去られてしまったのだろう。
「やはり彼は命がけで囮になってノブちんたちを助けたのね……」
マドンナがそう言うと絶句した。
俺の見立てでは、ラキの威圧にビビったウルフが戻った先に、たまたま委員長が居て被害にあったという感じだったが、それは言わないでおこう。
しかし、どうして委員長は危険な旧キャンプ地に来てしまったのだろうか?
まさか、本気で俺たちを囮に出来たと思って、むしろ魔物不在のここが一番安全だとでも思ったのだろうか?
その真実を語る彼はもう居なかった。
「待て!」
急に丘を下ろうとしたマドンナの肩を思わず俺は掴んでいた。
女性の身体に触れるなど、セクハラと言われても仕方ないのにだ。
「どこに行く。あれを見ろ!」
俺が示した先にはグレーウルフがうろついていた。
どうやら、この地を定期的に巡回して狩場としているようだ。
「!」
それに気づいていなかったのだろう、マドンナの身体が固まる。
自分が何をしようとして、その結果どうなってしまうところだったのか気付いたのだろう。
「ごめんなさい。委員長を埋めてあげたくて……」
「残念だが、委員長を埋めてやることは出来ない」
「転校生くんでも無理なの?」
「無理だ。奴らは1匹に見えて群で暮らす生き物だ。
見つかったら、直ぐにでも仲間が来る。
ここは諦めて、改めて回収のチャンスを伺おう」
「わかった。仕方ないよね」
グレーウルフに怯えたマドンナは、もう委員長を埋めてあげようなどと言うことはなかった。
こうして、俺たちは残念な結果を拠点に持ち帰ることとなった。
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あとがき
委員長は逃げる際に囮としてゴブリンの死骸に自分の学ランを着せて放置していました。
委員長の臭いに誘われて、その学ランを蹂躙した灰色狼ですが、委員長本人は既に逃げた後で、うまい具合に時間稼ぎとなったのでした。
その結果を転校生とマドンナが遠目でみつけて彼の死を確信したということです。
この時遺体を回収し確認できなかったため、囮のゴブリンだったということを転校生たちは知らずに、委員長の死を受け入れることとなります。
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