第25話 見破られる

 なんと三つ編み女子は俺が隠し事をしていることを見抜いたらしい。

料理の時だけ鋭くて、他はボケっとしているのかと思ったが、案外目先が利くのだろうか?


「慎重な転校生君が、血の跡は魔物を寄せ付けると知りながら、どうしてこんな拠点の近くまで熊を持ってきたのよ?

それに、担いできたにしては、血の跡が見当たらないわ」


 三つ編み女子、なかなかの観察眼だ。

確かに俺は、アイテムボックスのスキルを手に入れたから、四腕熊よつうでぐまを持ってきたのだ。

血が滴らないので、俺が運んだ道筋に臭いも残らないから、拠点の安全は確保されていると思ったのだ。

それを見事に三つ編み女子に見破られてしまった。

俺はどうするか迷ったが、せっかく出来た親しい相手、しかも人払いまでの配慮をしてくれた三つ編み女子を信じて話をすることにした。


「このことは黙っていて欲しいんだけど」


 俺の真剣な様子に三つ編み女子が頷く。


「そのつもりよ。神に誓って話さないわ」


 そうまで言われたら話すしかない。


はアイテムボックスのスキルを手に入れた」


 俺がそう言うと、三つ編み女子は深く頷いた。


「それは、内緒だよね。うふふ」


 そして、なぜか三つ編み女子が笑う。


「何かおかしなことあった?」


 俺は、アイテムボックスを持っていたことを隠したことの何が面白いのか首を傾げた。


「いいえ、ずっと僕だったのに、俺になったから」


 ああ、しまった。あえて僕を使っていたのに、うっかりしてしまった。


「俺の方が似合っているわよ」


 三つ編み女子に揶揄われてしまった。

まあ、アイテムボックスの事は黙っていてくれるようだから良いけど。


「それから、アイテムボックスのことも重要だけど、その肩のトカゲは何?」


 三つ編み女子の興味はむしろ、ドラゴンのラキの方だった。


「こいつはラキ。トカゲの卵から生まれた」


「へぇ。カワイイわね」


「気をつけろよ。これでもドラゴンだからな」


「え?」


 三つ編み女子は心底驚いていた。

ドラゴンといえば巨大な魔物のイメージが強いからだ。

まさかこんなに小さなドラゴンがいるとは思わないだろう。


「こいつも、トカゲということで頼む」


「……そうね。混乱の元ね」


 そんなことを話しているうちに、拠点から熊肉を運びに同級生がやってきた。


「やったー、お肉だ!」


「三つ編みちゃんが食べられるって鑑定済みだって」


 裁縫女子以外は皆身体強化のスキル持ちなので、難なく熊肉を持ち帰ることができた。

俺は足元・・――さっきアイテムボックスから出した――から薪を拾うと拠点に向かうのだった。

秘密を共有した三つ編み女子とは、なんだか親しくなれたような気がした。

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