第六十九話「警告」
アークドミニオン地下秘密基地は
これらの
そんな秘密基地の
アスファルトで
「俺たちゃ怪人
『俺たちゃ怪人海兵隊ッ♪』
「無敵の怪人戦闘員ッ♪」
『無敵の怪人戦闘員ッ♪』
「イッイーッ!」
『イッイーッ!』
「ウィッウィーッ!!」
『ウィッウィーッ!!』
先頭を走るのは“
それもそのはず、もうかれこれ十八時間ぶっ通しで走りっぱなしであった。
「はぁっ……はぁっ……もう無理オラァン……」
「貴様ァ! 誰が勝手に死んでいいと言ったァ!!」
「キャインッ!!!」
少しでも休もうとすると、
一緒に走っているはずなのに、ウサニー
「マッマがパッパに言ってたよッ♪」
『マッマがパッパに言ってたよッ♪』
「毎日お仕事大変ねッ♪」
『毎日お仕事大変ねッ♪』
「マッマァ!」
『マッマァ!』
「マンマァーッ!!」
『マンマァーッ!!』
ウサニー大佐ちゃんが歌うと、団員たちも続いて歌う。
でたらめな
そんな教導軍団演習場に、ひとりの男が現れた。
カミキリムシのような顔をした男、
ウサニー大佐ちゃんは彼の顔を見ると、団員にあと一周だと
「ミカリッキーか、見ての通り私は
「ええ、ゆっくりお茶を飲んでいる
ミカリッキーはその大きなウサミミに、もしょもしょと
ウサニー大佐ちゃんは
「なるほど
「そうでございましょう、そうでございましょうとも!」
「それで
「ほほほ。このミカリッキー、
ミカリッキーが去ると、ウサニー大佐ちゃんはすぐに団員たちに向き直った。
「よぉし貴様ら、よく走った! “第一
クリアという言葉に、団員たちから
「
しかし
漏らせばどうなるか、みんなこのわずか数日で文字通り
「すべての工程をクリアしたとき、貴様らは
地下演習場に、
…………。
いっぽうそのころ、林太郎は地下とは
東京で最も高いビル、タガデンタワーの最上階にいた。
「うげっ、また着信がきてる……!」
スマホの画面には“まゆずみ”と表示されていた。
最後に会ってからもう数日経ったが、このところ毎日である。
林太郎は黙ってスマホの電源を切った。
桐華と顔を合わせれば、前回のように
ちょうど同じタイミングで、部屋の
「いやー、待たせちゃったのう。わしのかわいさに
「かわいさに免じなければ許していたところです、タガラック将軍」
タガラックに呼び出されこうして待たされるのも、もはや
彼女も“
「それで今日はなんのご
「おうそれよ。おぬしには話しておいたほうがよいと思うてな」
タガラックは会長の席に座る“
そして大きな机の引き出しから、手のひらサイズの機械を取り出す。
「林太郎、おぬしに取ってきてもらったギアじゃがな。これヤバいぞ」
タガラックが手にしたのは、
現在アークドミニオンには三つのギアが存在する。
林太郎が持つ、
そしてこのタガラックが研究のために入手した、ブラックのギアである。
「ヤバい……というのは?」
「おぬしのギアと
そう言うと、タガラックは黒いギアを林太郎に投げて
林太郎は言われた通り自分のギアと黒いギアを見比べてみるも、色以外はまるで違いがわからない。
「とくに違いはないみたいですけど?」
「おぬしアホじゃのぅ。違いが
タガラックの言葉に、林太郎はハッとした。
林太郎のギアはタガラックが魔改造を
いうなれば人間の肉体に
林太郎は思わず何度も自分のギアと見比べた。
しかしどれほど見直しても、ビクトブラックのギアにはリミッターが設けられていなかった。
「言っておくが、わしはやっとらんからの。この黒いギアには、最初からリミッターなんてもんは存在しとらん。おぬしのものと同じ、人を
「じゃあ
「その名を聞いたときにピンとくるべきじゃったのう。いやあ
しかしすぐに真剣な顔で林太郎に
「おぬし最近、黛桐華と会っとるじゃろ」
「知ってたんですか!? まさかまたカメラを!?」
「はっ、おぬしの行動なんか
タガラックが指を鳴らすと
画面には桐華に押し倒され、悲鳴を上げる林太郎の姿が映っていた。
というか男子トイレの映像である、プライバシーもデリカシーもあったものではない。
「もう黛桐華に会ってはならん。これは警告じゃ」
…………。
部屋に戻り、林太郎はスマホの画面をぼんやり
タガラックに言われずとも、もう桐華と会うつもりはない。
林太郎自身はそう心に決めていたのだが、いざ
一年とはいえ同じ
林太郎
「そもそも
桐華にとってはきっと、林太郎は今も昔も敵であることに変わりはないのだ。
スマホの電話帳から
だが林太郎の指は、どうしてもそのたった
――そんな
ムーンムーンムーン!
「おわぁーーっ!!」
手の中でいきなりスマホが震え、林太郎は思わず取り落としかけた。
ディスプレイに
林太郎は自分の気持ちとは
『もしもし……』
消え入るような声が、林太郎の耳に
林太郎は跳ね上がる己の心臓に、
言わねば、もう会えませんと。
「あの、もしもし?」
『とても大事なお
聞こえてくる声は、これまでの桐華からは想像もつかないほど
まるで今にも
『あなたと会って、話がしたいです……場所は……』
…………。
二時間後、東京
かつて
ケーブルカーもリフトも動いていなかったため、林太郎は夜の
すでに
そんな
「ああ、ちくしょう
小さな雪の
天気予報では、
だが林太郎とて、もう雪ではしゃぐような
しかし来てしまったものはしょうがない。
これで最後にしなければならない。
重くなった
白い
「あのさあ、もうちょっとアクセスのいいところにしようよ」
林太郎が
色とりどりの夜景を
「ごめんなさい。どうしてもひとつだけ、お
ふたりの間に強い風が吹き、
少女のブルーの瞳が、林太郎の
言葉がその
「あなた、本当は誰なんですか?」
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