第四十一話「サンタクロース殺人事件」
十二月二十四日夜、時刻は間もなく
ビンゴ大会でもらった
「……すやぁ……」
「……ッスヤァ……」
大きなキングサイズベッドには
牙の
トナカイさん、もといサメっちである。
林太郎も最初は、気づくたびにソファへ移動して寝なおしていたものだ。
しかしアークドミニオンにやってきて
――だがその夜はもうひとり、侵入者がいた――。
「……よし、よく眠っているな……!」
音を鳴らさぬよう
そして静かに林太郎たちの眠る寝室へと忍び込む。
「サンタさんがプレゼントを持ってきたぞー……まあ、いま起きられても
成人男性でも見上げるすらりとしたモデルのような
それはサンタクロースに
最近はもっぱらオペレーター
かつて林太郎とサメっちに救われた恩に
宴会場で二大幹部に
ゆえにこうしてサンタという
ただサンタといってもドラギウスのような、テンプレート的おじいちゃんサンタではない。
大型
その長身やふくよかなバストラインと
「うう……もしこんな姿を林太郎に見られでもしたら……!」
しかし、これしかなかったのだからしょうがない。
林太郎はともかく、もしサメっちが起きてしまったら取り返しのつかないことになる。
大人の都合で、子供からサンタクロースの夢を
「大丈夫、サッと置いてススッと
湊は自分にそう言い聞かせた。
そこまで気を
しかしこのアークドミニオン地下秘密基地に迎え入れられてからというもの、湊は林太郎とサメっちに感謝しきりであった。
居場所を提供され、みんなに受け入れられたことで“
このようなことで返せる恩ではないだろうが、できることはしておきたいという純粋な思いが彼女を突き動かしていた。
「形に残る物では重いだろうからな……。そこそこ
そのときベッドの上から声がした。
「うみゅん……アニキのえっちッス……」
「ドキーーーッ!」
ノミの心臓が飛び跳ね、心臓のあたりで
湊はなんとか床に転がり落ちる前にその
ここで改めて説明しておこう。
「……な、なんだ
“寝て”はいるが眠ってはいないなんてこともありえる話である。
ベッドはただ睡眠を取るための場所ではないのだ。
もし自分がそんな“
部屋の中は薄暗くてよく見えないが、林太郎もサメっちもぐっすり眠っているようだった。
危なかった……湊はその可能性を完全に
“コトをいたしていた”としてもなんら不思議はない。
湊はホッと胸をなでおろして、ギョッとした。
「はわわわわ……はうあァーーーーーッ!?」
ただでさえピチピチのサンタコスが、下着も巻き込んで
理由はただひとつ、先ほど胸から飛び出した出刃包丁であった。
「ななななな、私はなんてはしたない
その姿はサンタさんと言い張るにはあまりにも
クリスマスイブの夜、プレゼントを寝室に届けるのはお爺ちゃんサンタだから許されることなのだ。
性の六時間、あられもない姿をした年頃の乙女がひっそり寝室に忍び込むことを、世間一般では“
「ぷぷぷ、プレゼントを置いてさっさと帰ろう! そうしよう!」
湊は慌てて用意したプレゼントを取り出した。
湊のプレゼントは、バターたっぷりの手作りクッキーであった。
背が高いので似合わないと言われがちだが、実のところお菓子作りは得意なのである。
今回はクッキーのほかに、
もちろん付け合わせから包装まで、すべて湊の手作りである。
湊は林太郎たちを起こさないよう、プレゼントを枕元に置いた。
暗闇の中、ぼんやりと林太郎の寝顔が見える。
「ううん……お願いだから命ばかりは……」
その男はなんとも情けない寝言を吐いていた。
こうして見ると、最強のヒーロー・ビクトレンジャーを
だがこれでいて、その実態は
ヒーロー本部のお
自分を救ってくれたこの男が、それを
林太郎がいなければ湊自身、まだあの暗い地下収容施設で
「ありがとう林太郎……メリークリスマス」
湊はうなされる林太郎の
なぜそうしたのかは、自分でもわからない。
熱く
サンタさんの
特に出刃包丁なんて
湊も
と、そのとき。
「いい
ガブリッ!!
湊のお尻に激痛が走った。
「ーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!??」
クッキーの甘い香りに釣られて、寝ぼけたサメっちが釣り上げられた。
ソードミナスは声にならない声をあげ跳び上がった。
痛みのあまりドタバタ暴れ回るソードミナス。
刃物が飛び散り、天体望遠鏡が倒れ、スチームアイロンが
「ぴぎゃァァァーーーーーッッッ!!!」
「なっ、なんだなんだぁーーーッ!?」
その大騒動に、ぐっすり眠っていた林太郎も思わず飛び起きる。
林太郎がベッドサイドの眼鏡に手を伸ばすのと同時に、ソードミナスは食らいついていたサメっちをなんとか引き
ゴロンと床に転がされたジャムまみれのサメっちは、驚くべきことにまだ寝息を立てていた。
「いったい何がどうしたってんだ!?」
林太郎が眼鏡をかけると、そこには
薄暗い部屋の中、赤くドロリとした
ギラリと殺意をにじませる出刃包丁を片手に、
その女はほぼ
そして彼女の足元には、
誰がどう見ても
「はーっ、はーっ……林太郎、すまないが……もう少し眠っていてくれ……」
「ヒイヤアアアアアアアアアアアアァァァァァァァッッッッ!!!!!」
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