第118話
出発すること2時間弱。
みんなでお菓子を食べたりダベっていたり仮眠を取っていたりすると。
「みんなー、着いたぜーぃ」
寧夏の声で車が止まってるのに気付いた。
順番に車を下り、2時間ぶりの外の空気と潮風を感じた。
む、眩しい。太陽光がバシバシに降り注いでる。
太陽光に眩んだ目を慣らし、ゆっくり目を開ける。
と、そこには──。
「お……おおっ、豪邸!?」
「と言うより、別荘だねぃ。ここで着替えしたりご飯食べたりするよん」
別荘……これが、別荘?
20人でも、30人でも余裕でパーティーができるほどの庭。
拠点としてではなく、全員が寝泊まりできる内装。
テラスからビーチへ降りられる階段。
リビングからは勿論、オーシャンビュー。
「これは……凄いわね」
「あア、こんな別荘は初めて見タ」
璃音とリーザさんもさすがに驚いてるのか、キョロキョロと見渡している。
十文寺家、改めてとんでもない家だ。
「それじゃー、男子と女子で分かれて着替えよっかー。まだ9時過ぎだから、これからめいっぱい遊ぶぜぃ!」
「へいへーい! 海が俺を呼んでいるぜぇ! フゥーーーーーーーーーーー!!」
龍也と寧夏が、テンション高く別々の部屋に入っていった。
移動中に仮眠を取って疲れもないし、俺も着替えるか。
「じゃ、暁斗。また後でね」
「ああ」
男女分かれて部屋に入ると、先に中にいた龍也は既に着替えていた。
「おま、それ……」
「どーよ! このイカす海パンは!」
イカすというか、なんというか……。
「ブーメランパンツじゃねーか」
「おうよ! 男と言ったらこれだろう!」
どこの世界線の男デスカ。
あと変なポーズするな。
けど、長身で程よく筋肉が付いてるから、妙に似合ってやがる。
ただ、恥ずかしくないのかこいつは。
開幕、男のブーメランパンツ姿にげんなりするが……とりあえず着替えよう。
カバンから海パンを取り出し、全裸になって海パンを履く。
シンプルに黒のサーフパンツだ。特徴もないシンプルなものだが、もう何年も愛用している。
「相変わらずマッチョだなぁ。よっ、肩にちっちゃいジープ乗ってんのかい!」
「やめろ、恥ずいわ。まあ、鍛えてるから、これくらいはな」
部屋の鏡を見る。
全身満遍なく筋肉が付き、無駄な脂肪は一切ない。かと言ってボディービルダーみたいに絞り切ってるわけでもない。
普通に筋肉があって、薄ら脂肪が乗ってる感じだ。
「高校生の体じゃないよな、どう見ても。よっ、その剛腕で久遠寺を組み伏せてるのかい!」
「テメェさすがにキレるぞ」
「すまそ」
謝ってないだろ。
まあ、龍也がこういう奴だってのは、昔からだから今更気にしないけど。
「それに、俺は梨蘭を守るって決めてんの。梨蘭を傷付けることなんて絶対しない」
「暁斗、ナチュラルにそういうこと言うのはカッコイイと思うけど、恥ずかしくねーの?」
「好きな女を守ることのどこが恥ずかしいんだ」
今どき、男が女がって言うのは時代遅れかもしれないけど。
それでも好きな女を守りたいってのは、男として当然の欲求だ。そうだろう?
「あーあー。わかった、わかった。お前がどんだけ久遠寺のことが好きなのかはよーくわかった」
「わかりゃいいんだ」
「ったく……少し前の暁斗に見せてやりたいぜ。天敵の女に、こうも惚れちまってる姿をよ」
前の俺に見せても、鼻で笑われて終わりそうだけどな。
「んじゃ、俺らだけでも先にビーチに乗り込もうや。海が俺らを呼んでるぜ! へいへいへーい!」
龍也はいつの間にか膨らませた浮き輪とシュノーケルを手に、部屋に備え付けられている外階段から外に飛び出ていった。
俺も準備はできたし。
いざ行かん。水着美女の待つ、真夏のビーチへ!
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