第109話

【情報解禁】

 いつも当作品をお読み下さり、ありがとうございます。

 早速ですが、発売レーベルと発売日、イラストレーター様の情報解禁を解禁致します。


 発売レーベル:ファンタジア文庫

 発売日:9月18日(予定)

 イラストレーター様:ゆきうなぎ先生


 と、なっております。

 これからも、『俺の『運命の赤い糸』に繋がってたのは、天敵のような女子だった件』をよろしくお願いします!



 ──────────────



 柴犬と共に、梨蘭とゴールデン・レトリーバーを見ることしばし。


 満足したのか、ようやくこっちにやって来た。



「はふ。満足……♡」

「……よかったね」

「……ご機嫌ななめね。嫉妬?」

「ちげーよ」



 いやまあ、違くはないけど。



「何よ。アンタだって黒柴ちゃんと仲良くしてるじゃない」



 と、俺の横に座る黒柴を撫でようとしたが、その手を潜り抜けて反対側に移動した。



「あ、あら? おーい、仲良くしましょうよー」

「がるるるるっ」

「ひっ!?」



 めっちゃ威嚇されてる。

 あの子を取った元凶が憎いらしい。



「よしよし、安心しろ。こいつは俺の大切な人だからな」

「くぅん」



 俺の撫でを素直に受け入れる黒柴。

 その様子に、梨蘭はむぅっとふくれっ面になった。



「暁斗ばかりずるいわっ。私、柴犬好きなのに……!」

「俺らはチーム寝取られという固い絆で結ばれてるからな」

「は?」



 そんな怖い顔しないで。



「……よくわかんないけど、私だって諦めないわよっ」



 梨蘭はめげずに追い掛け、黒柴は逃げ。


 追い掛け、逃げ、追い掛け、逃げ、追い掛け、逃げ、追い掛け、逃げ……。



「あははっ! 待ちなさい!」

「わんわんっ!」

「いやなんで仲良くなってんだお前ら」



 おい黒柴。チーム寝取られの固い絆はどこ行った。


 楽しそうに逃げる黒柴に、それを追いかける梨蘭。

 それに感化されてか、他の犬や子供達も楽しそうに走り回る。


 結局スタッフに注意されるまで、追いかけっこは続いた。





「はぁーっ、疲れたわー。もう汗だくっ」

「そりゃ、あれだけ走り回ったらな」



 駅前から移動し、ちょっとした繁華街に来ていた。

 相当暑いのか、胸元を摘んで少しでも涼を取ろうと扇いでいる。


 扇いだ拍子に柑橘系の香りと汗が混じった淫靡な香りが、俺の鼻腔を掠めた。


 …………。


 いやいやいや梨蘭さんちょっとは俺が隣にいること意識しようよ!

 エロいんだよ! チラチラ見える胸元! 谷間! そこに溜まってる僅かな汗!

 ダメだよ! そんな……ダメだよ!(語彙力)



「ちょっと暁斗。見すぎ」

「ッ! しょ、しょうがねーだろ……! てか気付いてたのかよ」

「当たり前でしょ。見せてたんだし」



 んべ。小さく舌を出し、いたずらが成功した子供みたいに笑う。

 なんだこれ。どんだけ俺をドキドキさせれば気が済むの。



「ねえ、暁斗」

「な、なんだよ」

「暁斗は、私の体ってどう思う?」

「……どう思うとは?」

「欲情する?」

「ぶっ!?」



 お、おまっ、えっ……! 急に何を言い出すんだよッ!?


 思わず梨蘭の顔を見た。

 すると、さっきと同じようないたずら顔をしているではないか。

 こいつ……俺の反応を見て楽しんでやがるな。



「梨蘭」

「な、何よ、そんな怖い顔して……ちょ、えっ……?」



 ジリジリとにじり寄る。

 梨蘭もそれに合わせて後ずさるが、壁にぶつかりそれ以上下がることができなかった。


 と、梨蘭が逃げないように、いわゆる壁ドンをする。

 我ながら古いとは思うが、今はこれが最善だろう。梨蘭も、顔を真っ赤にして慌ててるし。



「梨蘭、あんまり男を舐めるなよ。──食うぞ」

「ひぅっ……!?」



 あ、やべっ。ちょっと怖がらせすぎたか……?



「な……なーんてな。でもあんまそういうちょっかいは出さない方がいいぞ」



 慌てて離れて、取り繕う。

 やっべぇ。なんだよ今の。全然俺のキャラじゃないって。



「さ、さあ、次はどこ行く? さすがに暑いし、家に戻るか? ……あれ、梨蘭?」



 振り返ると梨蘭は壁に寄りかかり、目をぐるぐるさせていた。


 え、大丈夫か?



「く、くくくくくう……クウ……食う……? 食うって……え、私食べられちゃう? ついに大人の階段登っちゃう……? 今日、わたし……わた、わたっ、わわわわわわ……!?」

「……おい、大丈夫か?」

「あひっ!? だっ、だいじょぶっ、でしゅっ……!」



 とてもそうは見えないけど!?



「辛いなら、どっかで休むか?」

「休む!? え、えっち! すけべ!」

「なぜ!?」

「こ、こ、こんな場所で休むとかっ、何言って……!」



 こんな場所?

 周りを見渡す。

 ……あ、ここ……ほ、ホテル街ッ!?



「ち、違っ! ただ梨蘭が辛そうだったから、そう提案しただけで……! 別に下心とか他意とか、全くないから!」

「そ……そぅ……」



 いやなんでしょぼんとしてんのさ!?



「と、とにかく暑いだろ。ここじゃないにしろ、どこか店に入ろう。なんなら、うちに来て涼んでもいいし」

「……なら、暁斗の家がいい」

「そ、そうか。わかった」



 とにかくここから移動しよう。

 ホテル街で梨蘭と2人きりとか、心臓に悪すぎる。


 なんとなく恥ずかしく、梨蘭の顔をまともに見れないまま家に向かって歩いていく。


 それがいけなかったのだろう。


 梨蘭が覚悟を決めたような顔をしているのに、気付けなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る