第27話「学園祭はハラハラドキドキ?第4夜。」

文化祭まで残り4日となった。時間が迫るばかりで一日たりとも会議が行われることは無かった。有希子は我慢の限界を超え教育委員会へ直談判をしに行った。

「で、用は?」

教育委員会の富世志太郎ふせい したろうはスマホをいじりながら問う。

「この文化祭に昂大君をもう一度実行委員長として任命してください。」

「ふぁ〜。任命って言っても遥ちゃんがいるじゃないか。」

「彼女は任命されてから1日も顔を出さなかったので任務を放棄したという事になりました。」

「もしかしたら今日来るかもしれないだろ?決めつけは良くないぞ。」

「文化祭まで残り4日です。時間が無いんです。お願いします。」

「はぁ。今日と明日もし来なかったら彼を元の役に戻そう。それなら文句ないな?」

「今日明日待っても無意味です。今すぐに実行委員長に戻してください。」

「今は無理だと言ってるだろう。」

「なぜですか?」

「君が知る必要はない。帰ってくれ。」

「帰りません。」

「はぁ、分かった。今すぐ戻すからちょっと待ってろ。」

志太郎はこれ以上は無理だと判断し、ゲームを中断し学校に電話をかけ始めた。

「校長先生。彼を元の役に戻すよう指示します。」

電話を切ると志太郎は背伸びをし有希子を見た。

「これでいいのか?」

「ありがとうございます。」

有希子は深々と頭を下げた。

「有希子と言ったかね。なんで君はそこまでして彼にこだわるのかね?」

志太郎は有希子に問うた。

「実績があるからです。」

「それだけか?」

「え?」

「まぁいい。結局俺らは収入が得られれば誰でもよかったんだ。」

「なんで昂大だったんですか?」

「上からの指示だ。」

志太郎はため息混じりに言う。

「そうですか。私はこれで失礼します。」

「高校生活は短い。君なりの青春を過ごしたまえ。」

志太郎は有希子の肩を軽く叩くと喫煙室に向かって行った。有希子は息を切らしながら学校に戻ると急いで生徒会室へと向かった。部屋に入ると昂大と一花が待っていた。

「有希子。君のおかげで無事に戻ることが出来た。ありがとう。」

「これでやっとできるわね。」

有希子は席に着くと早速大量の仕事に取り掛かった。

「なんで昂大を役から外したのかしら?それに彼女が任命されてから1度も来ていないというのは何か変よね?」

一花が書類に判を押しながら問う。

「そんな事は今はどうでもいい。なるべく今日中に終わらせるぞ。」

口では言ったものの書類が減る気配もなくただ時間が過ぎていくだけだった。書類が少し減った気がした時チャイムがなり下校の音楽が流れだした。

「今日中に終わらなかった。明日もここで今日と同じ作業をしてもらう。解散。」

昂大達は生徒会室から出ようとすると聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「ねぇ、霧矢君。今からどっか遊びに来ない?」

遥の声だった。

「別にいいぞ。それより遥、本当に大丈夫なのか?あの件バレてないだろうな。」

「安心してバレてないわ。それとも私がそんなヘマをするとでも?」

「他人にも影響が出かねない。やっぱ止めた方が。」

「なに臆病風になってるの。この件は互いにメリットがある。これこそウィン・ウィンの関係。成功したら約束通りあの子はあなたの物よ。」

2人の声が次第に聞こえなくなった。

「あの件って気になるわね。それにあの子って誰のことかしら?」

一花は表情が少し強ばった。

「一花。少し疑いすぎなんじゃないか?彼女がそんなことをするわけが無いだろ。」

《これも彼女の復讐の一部なのか?それとも他の何か?》

口ではそう言ったものの昂大も内心遥を疑っていた。一花はそれを見抜き耳元で囁いた。

「結局あなたも疑ってるのね。」

第27話「学園祭はハラハラドキドキ?第4夜。」~完~

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