混沌と開闢の剣 3
ボスのいる地点まで約半分を超えたが依然クロノは仲間の加勢に力を尽くしていた。
「また進行する。そちらも気を付けて」
おたすけNPCにあとは任せて近くのマンホールを地下へ行きゾディアンの下へ移動しようとすると爆破物により道がふさがれていた。早く駆け付けて加勢したい焦りからかクロノは塞がっている瓦礫を破壊しようとするがその音を聞きヴィランサイドのNPCたちが続々と集まりつつあったのだ。
「いったん引き返すか」
入ってきた場所から出ようとマンホールを押したがびくともせず動かすことができなかった。入る時よりも姿勢が悪く力が入らないというのもあったがそれでもマンホールの重さはだいたい40kg。プレイヤーたちはステータス的にも常人より優れておりこの程度の重さならば特別苦労せず動かせるはずだった。
「上から蓋をされてるな。壊して上がってもあまりメリットはない。ということは解決策は一つか」
地下へ戻ると通路にはヴィランNPCたちがすでに待機しておりクロノを倒すために銃やナイフを取り出して警戒する。クロノはゆっくりと二本の剣を抜き鋭い眼光を浴びせると類まれな戦闘センスから発揮される身のこなしでNPCに立ち向かった。
戦いの結果は語るまでもない。狭い場所での戦いのためノーダメージとはいかなかったがクロノが勝つことを疑うものなどプレイヤーたちの中には一人もいなかった。それはクリントも同じ。あくまでこれは時間稼ぎ。クロノはそれを知っているからこそダメージ覚悟で迅速に対処しまだ塞がれていないマンホールから道路へとでた。
すると、ゾディアンたちのいるCルートから激しい戦闘の音がこだまする。一方でBルートは静かなものだった。
「全滅かあるいは無事に先へ進んだか。いや、あまり期待をしないほうがいい。彼らには悪いけど終盤になればゾディアンがいたほうが勝ちやすい。何とか耐えてくれ」
地上に戻りゾディアンたちのほうへと急いだ。クロノは大きく後方へ戻ってしまったことで到着までには時間がかかってしまう。その最中も音は鳴りやまず戦いが激化しているのが分かった。
そんな時、大きな爆発音共に人影が空へと打ち上げられクロノ前へと落下した。それはヴィランのお助けNPC。ゾディアンがどうやってここまで飛ばしたかはわからないがその意図はわかる。爆破ダメージと落下ダメージを食らいながらもギリギリ耐えられるようにされておりボロボロでありながらもお助けNPCはまだ動いていた。
「ポイントはもらっていく」
容赦なく剣を振り落としお助けNPC撃破の500ポイントを稼ぎすぐさまゾディアンの下へと向かった。
道中はほかのヴィランに出くわすこともなく罠も仕掛けられてなかったためすんなりと移動できこれならばゾディアンのダメージを抑えて加勢できると判断した。だが、現場にたどり着くとその予想は覆されることとなる。
チェーンを利用した戦いするゾディアンと禍々しい剣で力強く戦うベルは誰も見てもわかる状態であり、ベルが優勢だった。ゾディアンはボロボロになりながらも腕にチェーンを巻き剣による攻撃を防ぎながら戦うが、先ほどのお助けNPCをクロノの下へ飛ばすために強引に策を弄したことによる隙を突かれ劣勢であった。
「加勢に来たよ」
「ありがてぇがこんな無様な姿の時に来てほしくはなかったな」
「何いってるのさ。ポイントを取るために頑張ってくれた。むしろかっこいい姿だよ」
「言葉が上手いなお前は」
クロノが加勢に入ったことにより状況は好転。同じく剣で戦うベルとクロノが戦いを始める。スピードではクロノのほうが有利だったがベルの剣を防御すると予想を遥かに超えるパワーで押され姿勢を保つことが出来ずクロノは壁へと激突した。
ベルの剣はクロノのものと比べるとかなり大きく一振りで強烈な一撃を放つことができるのは明らかだったが、想像を遥かに超えるパワーにクロノは動揺していた。
「それだけのパワーがありながら戦いが続いていたなんて信じがたいな。もっと早く終わらせられたんじゃない?」
「俺の剣は我儘でな。相手に攻撃を与えないとその真価を発揮しない。だが、あのゾディアンは貴様にポイントを渡すために攻撃を耐えてくれたおかげで着々と力を上げることができたのだ」
「一難去ってまた一難か」
状況が好転したと思ったのもつかの間。二人係ならベルを倒す可能性はあるが重要なのはベルを倒した後。まだクリントが姿を現してないことからこれ以上ダメージを受けてはボスにたどり着く前にやられてしまう。
「癪だがノアのおかげでポイント差はかなり開いている。ここでポイントを大きく得られなくてもこっちとしては何ら問題ない。この戦い、俺の手で終わらせてやる」
何をすればここを安全に突破できるかと考えを巡らせるがゾディアンの体力を考慮すると囮になってもらうことが過ってしまう。しかし、クロノはその選択をとることに躊躇した。一時の仲間と言えどポイントを稼ぐために戦ってくれたプレイヤーを切り捨てていいものかと迷いが生じる。その上、クリントとの戦いで二人で戦えるのは大きなアドバンテージとなる。罠があることも考えればゾディアンをなんとか守り切り二人で進む方が後の戦いを有利に動かせる可能性もあると考えていると、ゾディアンが動いた。
「確かにお前の剣は強力だが俺がただ耐えていたと思ったら大間違いだ。リバイバルチェーン!!」
あたりに散らばった破損したチェーンはゾディアンに反応し次々と再生されベルに巻き付き動きを止めた。
「あくまで剣を触れなければ脅威じゃないからな。クロノが加勢に来るのを待っていたんだ」
「貴様すでに準備をしていたのか」
「ストーリーバトルは即席とはいえチームプレーでもあるんだ。お前みたいな一人でやってくるやつは格好の的ってわけだぜ。クロノ、やれ!!」
クロノは二本の剣を光らせ攻撃力を上げると素早い連撃でベルを撃破した。
これによりポイントをさらに稼ぎ残すはボスとクリントだけ。万全を期すために最低限の策を伝えようと振り替えた瞬間。
「シックスバレット、フルバースト」
六つの弾丸がゾディアンに直撃した。これによりゾディアンの体力は0となってしまう。ヒーローNPCも倒されており何が起きたかわからなかった。
ゾディアンが倒れるとその向こうにはマンホールから出てきたクリントが銃を向けて立っていた。
「これでお互いにポイントを稼げたわけだ。向こうで待ってるぞ」
クリントがマンホールへと入っていきクロノはすぐに追いかけるが地下へと入るとすでに道は封鎖されており追いかけることは不可能。
ゾディアンの拘束によりクロノが攻撃に集中した瞬間の隙を突かれてしまった。
「さすがクリントだ。常に策では上に行かれたが最後はきっちり勝ってやる」
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