混沌と開闢の剣 1

 12戦目はクロノVSクリント。剣と銃の戦いでありどちらも戦い方は異なるものの実力の高いプレイヤーだ。

 クロノは近接戦闘を主とし高い身体能力から繰り出される剣術はミハルやサクラにも匹敵し剣術だけならわずかに劣るもののゲームの適正能力は二人を凌駕している。想像する強さを人一倍もっておりこれは現実の基礎をベースにしている二人にはすぐに追い抜くのは容易ではない。

 対照的にクリントはその見た目と名前から古い映画のガンマンをイメージし、銃だけでは対応できない相手や銃の扱いが高い代わりに犠牲にした身体能力を補う形で様々な罠や策を利用する。

 正面切って戦えばクロノに分があるが姿を隠してしまえばクリントにも十分勝機がある。さらに、今回のヴィランサイドの設定はマフィア。ボスを守りながらボスの代わりに部下へと指示を出すこともできる。囮にしたり罠を設置させたりと自由度は高い。ヒーローサイドの設定はマフィアを倒すために集まった少数精鋭部隊ということもあり動かせる人数はヴィランに比べると少なく、ヴィランが暴れると防衛するために指示の出せないNPCが登場してしまうために迅速な撃破が問われる。


 今回の戦いでヒーローサイドは制限時間15分ん間に裏組織のアジトを攻め入りボスを倒すことが目的でありそれを防衛しボスを守るのがヴィランサイドの目的。曇天の空が覆うビルの並ぶ市街地でクロノはどう戦うかを考えた。

 

「前半戦も大詰めでポイント差は5300。今後、お助けとしてノアが出てくることを考えれば勝利ボーナスとお助けプレイヤーとNPCのポイントを得るために動いてい来ることは明白。メインプレイヤーが雑魚を倒して200ポイント稼いだとして最悪さらに2000ポイントは広がってしまうか……」

「クロノ、クリントはどんな相手なんだ?」


 クロノはすでにお助けプレイヤーのゾディアンと合流をしていた。ゾディアン拘束系に支配されず相手を拘束する技を使うことで繋がれざる者としての異名を持つ。俊敏な動きのクロノと拘束技が使えるゾディアンの相性は抜群である。


「今回はお互いのスタート位置がわかる仕様になっている。集団で行動して一気に数を減らすよりは三方向から進んで攻撃を分散させよう」

「なら俺はこいつらを借りて左のルートからアジトに進むとするか」


 NPCを引き連れクロノとは別方向から進行するゾディアンたち。姿が見えなくなるまでその様子を眺めクロノは一番多くのヒーローNPCと共にお助けNPCにはゾディアンたちとは逆方向から向かうように指示し三方向からの進行で攻める策に出た。

 数ブロック越しに直線へと進むため戦闘が起これば中心から進行するクロノはすぐに加勢に入ることが可能でありクロノが戦闘になれば持ち前の能力で単独戦闘もできる。ゆえにクロノは仲間を連れずに一人で正面からむかっていった。

 一般NPCたちが行き交い車も普通に走っている中、妙な違和感を覚えた。


「やけに相手がなにもしてこない……。目的地がはっきりしている以上防衛するには

先発を出しておく方が得策なはず」


 今回の戦いではお互いの攻め入る方向はわかっている。しかし、ビル群ゆえにお互いの動きまでは正確にはわからないためNPCを犠牲にしてでもヴィランサイドはヒーローサイドの位置を正確に把握することが勝利への鍵へとなるはずだったが、クリント率いるヴィランサイドは5分経っても一切の動きを見せない。

 疑心が渦巻く中、ゾディアンが向かった方向から激しい音が鳴り響く。間髪いれずにお助けNPCにほうからも音が鳴り同時に会敵したことがわかる。


「プレイヤーのほうがポイントは高いけどNPCだけでは守り切るのは難しいかな」


 クロノのは多少迷いつつもNPCの方へと向かうことにした。少し先のブロックを曲がり助けに向かおうとすると空から突如として爆弾が投下される。間一髪で回避し見上げるとビルの中で待機しているヴィランサイドの姿が見える。


「すでに配置済みということか。だが、この時間稼ぎは正面切って戦えないことの現れだ!」


 街灯や看板を利用しビルへと突入し瞬時に三人を倒すとゾディアンとNPCの戦闘音は少し先の方向へと移動した。


「戦いながら前進している? いや、こんな小手先で足止めしてるってことは単純に考えるのは危ないか」


 クロノは道路へ着地すると先ほどNPCたちが戦っていたと思われる場所へ到着。ヒーローサイドもヴィランサイドのNPCも数人やられていたが戦いの痕跡はクロノの考えていたものは違った。


「こっちも爆破物で奇襲を仕掛けられたのか。ということは前進したのに音がなりやまないのは新たな攻撃地点への誘導。予想はしてたが一筋縄では行かないみたいだね」


 

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