サイドストーリー ハルミ
「失礼しまーす」
晴海は第二戦終了後、道場へとやってきた。
師範は生徒たちが帰るの見送った後で一休みしていた。
「晴海か。今日はゲームだったのか?」
「そうなんですよ。これといったトラブルもなく終わりましたけどね」
「いつぞやに共闘したというミハルというプレイヤーはどうだったんだ?」
「確かノアっていう強いプレイヤーに絡まれたみたいだけどサクラっていうプレイヤーが率いるチームに助けられて第二戦を突破したみたい」
「見えない糸が二人を繋いだか……」
「何か言いました?」
「いや、なんでもない。ほら、稽古つけてやるか早く着替えな」
晴海はいつもの胴着に着替えた。胴着の下には袖のない黒いインナーを着ている。
今日の稽古は相手の攻撃を食らった際にもっともダメージの通る場所を瞬時に探し寸止めするというもの。立っている状態はもちろん、座っている状態や寝ている丈太、アンバランスな状態など様々な場面を想定することでおのずと体が覚えていくのだ。
1時間にも及ぶ稽古が終わり夕日がゆっくりと沈み始めていた。
胴着の上だけ脱ぎ汗を拭いていると師範が地図と手紙をもって戻ってきた。
「晴海、急なんだがここで稽古をつけてもらえ」
「いきなりなんなんですか。――これって噂で聞いたことあります。忍者の山だって」
「俺が若いころここで修行させてもらったんだ。俺の兄が教え子を稽古させに行くそうだからお前も行ってみるといい。一戦交えたら何かつかめるかもな」
「それって以前から言ってた東京の道場ですよね。でも、向こうって刀でしょ。わざわざ私とやる必要あります?」
「長物相手、しかも即死級の武器が相手なら緊張感を持てるだろう。それとも勝てる気がしないか?」
こうやって挑発するのが師範のやり方。晴海は単純な性格でこういわれると例え敵わなくても挑むタイプ。むしろ、そういう時に発揮する火事場の力を師範は痛く気に入っていた。
以前、晴海が中学生のころ、大人の女性生徒と試合をすることになり、最初は体重さや体格差で明らかにやる気をなくしていたが、師範の挑発によりやる気を出した晴海は時間はかかったものの大人の女性に勝ってしまった。
これは剣道などとはわけが違う。打ち合い組み合う体術において体重差はあまりにも重要。ボクシングの階級が細かく分かれていることがそれを証明している。
「長物のリーチがないと戦えないような相手に送れなんて取るはずないよ。師範のお兄さんには悪いけど私のほうが上って証明してあげる」
「期待してるぞ」
こうして晴海は忍者の山と言われる場所で稽古をすることになった。
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