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 上機嫌で、教室の扉を潜る。中には、珍しく彼女の姿があった。

「おはよう、フクロウちゃん。珍しいね。君が、僕より早く登校しているなんて」

「ああ? 別に、そんな日もあるって。というか、あんた。何ニヤニヤしてるわけ? 気持ち悪い」

 僕は、自身の表情筋へ意識を向ける。どうやら、頬が緩んでいるようだ。

「いや、何。これから、とても楽しくなりそうだと思ってね」

「はあ?」

 鋭い目つきに蔑まれながら、僕は自身の席へと向かった。

 特定の人間以外には、あまり関わってこなかった僕だけれど、あの子は面白いかもしれない。

 あんなにもいい子は、あの時の彼以来だろう。

 きっと、姿を重ねているのかもしれない。

 だからだろうか……そばにいようとするのは。

「まあ、どちらにせよ、あの子はあの子だ。放っておくと、また何かに巻き込まれてしまいそうだからね」

 僕は、先程別れたばかりの彼女の姿を思い浮かべながら、これからの委員活動について、思いを馳せるのだった。

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