絶対に見つけるよ
ルミナスの言葉に私とアルテが凍りつく。
アルテの腕輪を捨てた? ルミナスが? 何で?
? ばかりがぐるぐるぐるぐると頭の上で回る。
「ごめんね、エリナさん。君を巻き込んでしまったかもしれない。ボクはただ、この世界に、ダイスケを閉じ込めようと思ってただけなんだ。知り合わなければ知らない人が知らない場所で巻き込まれたってだけで済んだのになぁ」
ルミナスの口が弧を描き赤い舌が覗く。彼はとても嬉しそうに笑っている。
「薫……何で……」
「ボクから話せと言われてるのは、あとはそれをどこに捨てたかだけなんだ。――それはね、ダンジョンの中だよ」
「……っ!!」
あははと笑いながら、アルテを見るルミナスは今まで見たことないような残酷な表情だった。
「ダンジョンの中って、それじゃあ、ランダム生成の――」
「材料になってるだろうね」
私の質問に、すぐ彼は答えてくれた。最悪の答えで――。
「そんな――――」
誰かにもう持っていかれたかもしれない。そもそもランダムだから、会えるかどうかすら、わからない……。
「それじゃあボクは帰るね。ダイスケ、むこうに帰ってこないでね」
そう言うと、今度はゆっくりとした光がルミナスのまわりに現れた。
「あぁ、エリナさんも、一緒にきた人に憎まれたり恨まれているとかないですか? このゲームに置いてきぼりにするために――」
くくくっと、笑い声を残しルミナスの光は消えた。
恨まれている――。
私はぎゅっと空いている片腕でもう片方の腕を握り、自分の体を抱き締めた。
そんなはずはない。だって、一緒に遊ぼうって……。楽しいねって……。
茫然としていたアルテが私の様子を見て、ぎゅっと手を握ってきた。少し、痛い。
「大丈夫、絶対に見つける。俺がエリナを現実に連れ戻す」
痛いくらいぎゅっと握られた手は、アルテの温かさを伝えてくる。
そうだ、決まったわけじゃない。ナホに聞いたわけじゃない。
私はぎゅっと握り返して、アルテに向かい頷いた。
「アルテの腕輪、私の幸運で、見つけるよ! 大丈夫。だって、神様がくれたラッキーリングだもん」
たとえ、この世界に連れてきたトラブルメーカーな神様だけど、今だけは信じてお願いしたい。彼の腕輪を、彼に返して下さいと。
「はぁ、いいかな? ボクの体を使っていた人の従兄弟君?」
ルミナスが、話し掛けてきた。従兄弟?
「この世界ではアルテでいい」
「そうか、アルテ。ボクもそのままルミナスでいいよ。迷惑をかけた」
ルミナスが少しだけ頭を下げた。
「ボクの願いがあんなことを招くなんて」
「カオル――ではなくなったのですか? あなたがルミナスですの?」
「そうだよ、メイラ。これが本当のボク」
「思っていたのと、だいぶ違います」
「あはは、どんなのを想像していたんだい」
「もっとこう、精悍な顔つきで――」
二人の会話が進む。そうか、向こうでも月城唯と月城薫として近くで生活していたのかな。仲良くしていたのかも。
同じ名字だけど、従兄弟なら同じ名字もあるのか。なら、アルテの中のダイスケとさっきまでメイラだったユイが兄妹で、ルミナスだったカオルは二人の従兄弟だったんだ。やっと、繋がってきた。
でも、二人の従兄弟のカオルがどうしてダイスケを閉じ込めようと思ったのだろう…………。
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