心と体

 ふわふわと浮いていた神様は横に降り立ち、ふふと笑う。

 小学校低学年に見える身長、黒い髪と黒い瞳の子どもの姿。


「ボクの家だからだよ」


 神様、どうやら家を所有しているそうです。ということは、あれですか? 私はツッコミをいれてしまう。


「ここの家主なの。神様が?」

「そうそう、ボクにお金は入ってこないけどね」


 可愛い顔でケタケタと笑いだした。前に会った時も思ったけど、本当にこの子どもが神様なの? もらった腕輪はたしかに効果はあるけれど。


「ねぇ、神様って、本当に神様なの?」

「そうだよ。この世界の神様。名前はユウ」


 言いきった、この子。名前とかどうでもいいのだけど。


「それにしても、えりなちゃん。ここにだいぶ馴染んでるね。向こうに行ったエリーナちゃんも馴染んでるけど」

「は?」

「あ、言い忘れてたっけ。むこうの君の中にこの世界のエリーナがいて、エリーナの中に君がいるってこと」

「聞いてませんけど?」


 というか、ちょっとまって? 夢だよね。これ。そう、ながいながーい夢。だから、これも、この人も、アルテも……。

 アルテと繋いだ手を見る。そうだ、夢……。


「あれ、おかしいな。あ、そっか。そっか、ならしょうがないか」


 神様が、勝手に納得して手を打っていた。


「えりなちゃん、なほちゃんは?」

「えっと、今ちょっと離れてしまって」

「だよね。姿がないもん」

「ナホが何か?」

「うにゃー、本当にそうなっちゃうのかなー。うーん」


 猫口で言われても……。意味がわかりません。


「あ、そうだ!」


 ポンッともう一度手を打って、ユウがそこから消えた。何だったの、いったい。


「エリナ? もう起きたのか」


 アルテが起き上がり、こちらを見た。起こしてしまったのかな。


「う……ん。さっきね、か……幽霊がでたの」


 神様なんて言ったら、突飛だよね。

 アルテはキョロキョロとまわりを確認してくれているが、それはもうどこかに行ってしまった。


「何か嫌なこととかされたか?」

「ううん、特には」


 何か不穏な事は言っていた気がするけれど。あっちにエリーナがいるって、そのやっぱり……、私みたいに、体はエリナで心はエリーナライバル令嬢。それは、色々と困る!! そうだ、私だって、エリーナの体で、色んな事をしてしまっている。どうしよう。夢じゃなかったら、私……、勝手なことしたらエリーナを傷つける?


「青い顔してる、怖かったか?」


 心配そうに、問いかけてくるアルテの顔を見て私は思う。

 私は、好きだけど、エリーナが……。エリーナに好きな人がいたら……。


「大丈夫、びっくりしただけだよ」

「……、そうか。急に出てくるのは珍しいな。出てこないでくれと言っておこうか」


 それは、困る。だって、神様ユウに会えなくなったら、詳しい話が聞けなくなってしまう。


「ううん、起きる前の夢が少し怖かっただけで幽霊は怖くなかったの。だって、子どもだもん」

「たしかに、そいつだな。まあ、びっくりさせるな位は言ってもいいだろう。行こう」


 立ち上がり、手を引かれ連れていかれる。私達の部屋の反対の角部屋。

 部屋の扉には、大きく立ち入り禁止とおどろおどろしく文字が書いてあった。アルテはその扉を容赦なくドンドンと叩いた。


「おい、ユウ。いるか?! 」

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