ヨム! ヨム!

☆涼月☆

作者と繋がる楽しみ

『はじめまして! コメントありがとうございます! 

私にとって初めてのコメントをいただけて、嬉しくて嬉しくて天にも昇る気持ちでおります……』


 緊張と興奮が伝わってくるような言葉に、思わず俺も頬が緩んだ。

 さっき書いたコメントの返信だ。

 

 この作者、まだWeb小説サイト『エクリルフランス語で書く読むを合わせた合成語』を始めたばかりみたいで、緊張しながら小説を更新している様子が伝わってきた。文章はまだまだ拙いけれど、俺好みの設定で、これからの展開次第では結構人気も出るんじゃないかな。


 そんな風に思ったのと、作者の人柄溢れる文章に好感を持ったからかな。


 いつもは読むばかりであまりコメントなんかは残さないんだけれど、思い切って書いてみたんだ。

 そうしたら、嬉しさ爆発&粗相の無いように必死って感じの返信が戻ってきた。


 やっぱり想像していたような、真面目で不器用な雰囲気の女性なんじゃないかな、この作者さん。

 

 え? なんで女性って?

 まあ、プロフィールには性別に関して書かれていないけれど、なんとなく文章の雰囲気から女性作者って思ったんだよね。


 俺がWeb小説を読み始めたのは、学生時代からだからそこそこ長い。

 だから、読む時のコツみたいなものは掴めていると思う。

 あくまでマイルールだけどね。

 小説を投稿したことはないから、いわゆる読み専と言う奴だ。


 Web小説を読むのは通勤時間の楽しみとしてだけど、それだけじゃないんだよね。

 最近は自分の好きな作者さんを見つけて、応援するのも密かな楽しみになってきている。

 

 応援の仕方は色々ある。

 もちろん読むだけでも応援だ。PVって言う、読んだぞって言う証を残せるからな。

 もう一歩進んだところに、応援♡や応援コメントって言うのがある。

 これは作者と言葉を交わすことができるから、返信が来るとやっぱり嬉しい。

 更に進むと、他の人へお勧めだよって意味で☆を付けたり、レビューの文章を投稿したりもできる。


 そんな中、今回の作品を見つけたんだ。


 自信無さげにぽつんと投稿されている。

 投稿して大分日がたっているのに、まだPVが全然付いてない。

 何気なく覗いてみた。


 何が……とは上手く言えないけれど、心の琴線に触れた。



 引っ込み思案な主人公が一生懸命前向きに頑張って、恋に向き合っていくベタなラブストーリーだ。

 でも、会話にキラリと光る笑いのセンスが感じられた。


 俺は思い切って、その会話を切り出して面白いとコメントしてみたんだ。


『コメントいただいた会話、実は私のリアルです。実はリアルがボケボケなので、そのまま会話に入れただけなのですが、でも、面白いと言っていただけて、ものすごく嬉しかったです。自信が持てました!』


 そんな返信コメントの後、彼女(彼?)は、それから一生懸命自分の実体験らしきボケを作品の中に入れてくるようになった。

 そして、だんだんと文章が上手になって面白い作品になってきた。


 なんか嬉しくなってきたんだ。

 これがまさに、読者が作者を育てるって言う事なんだなと思って。


 今までフォローが俺だけだったのに、だんだんフォロー数が増えて、コメント欄も賑わってきた。


 他の人のコメントを読んでみるのも、実は面白いんだよな。


 おお! 俺と同じところに突っ込みを入れている奴がいるぞ。

 この読者と俺は笑いのツボが似ていそうだな。


 そんなことを思いながら、思い切ってその読者のプロフィールページを覗いてみた。


 同じ読み専さんだった。

 フォローしている小説が結構被っていることに気づいて、ますます嬉しくなる。

 この人の読んでいる別の作品も読んでみたくなったな。


 秘かに仲間を見つけたような気分になって、一人電車の中でニヤニヤした。


 似たような作品が好きと言うことは、感性が似ている人のような気がする。

 読み専同士で会話するわけでは無いけれど、友達が増えたような親近感を感じることができるのも、Web小説の楽しみの一つかもしれない。

 

 そして、同じ作者を応援する仲間意識も芽生えたりしてね。



 そんなある日、俺は思い切って自分自身も一歩進んでみることにした。


 ボケ子ちゃん(俺が勝手にそう呼んでいる)の作品を、もっとみんなに読んでもらいたいなと思ったからだ。

 相変わらずの不器用な一生懸命さに、好感度が爆上がりしたからかもしれない。


 思い切ってレビューを書いてみることにした。


 思うより難しいな。

 コメントは自分が思ったことを書けばいいけれど、レビューはちょっと違うんだな。

 作品の良さを、他の人に伝えるように書かないといけないんだよな。


 何日も必死に考えて、やっぱり書くの止めようと何度も思いながら、遂に完成させたレビューを、「えいやー」と心の中で叫びながらポチっとした。


 はあ……はあ……


 なんか、作者さんの苦労が分かった気がする。


 死に物狂いで文章をヒネリだして、緊張しながら投稿しているんだな。


 達成感と脱力……


 その時、早速作者から、いいね! マークが届いた。


 おおー! 

 なんか読者一号ができた気分だ。


 そっか! 投稿したばかりの作者の気持ちって、こんな感じなんだろうな。

 読んでくれる人がいるって、嬉しいことだよな。

 と言うことは、俺は今までも、のかなと思った。


 ボケ子ちゃんからは、その後送ったコメントに、これでもか! ってくらい丁寧なお礼の言葉が綴られていた。


 やっぱり、ボケ子ちゃんいい子だな。



 俺のレビューの威力かは分からないが、フォローと☆が増えたと大喜びしている。


 思い切って書いて良かった!



 それからも変わらず、俺はこのボケ子ちゃんのファンだ。

 

 今ではそこそこ人気になって、新作を書くと直ぐフォローや☆がつくほどになっているけど、その控え目な性格は変わらず謙虚だ。

 丁寧なコメント返信の言葉も変わらない。

 そこが俺のお気に入りポイントでもあるんだけれどな。


 そんなある日、新規投稿された短編の文章を見てちょっとドキドキした。


 そこには、始めの頃交わした俺とボケ子ちゃんのコメントに近いやり取りが、主人公の男女の間で交わされていたからだ。


 そして最後に彼女が彼に言った。


『あの優しい言葉が、私に勇気をくれました。そして、私はそんなあなたに……恋をしたんです!』


 これは、リアルなのかな?


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